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いけないわ。私は呪いの首飾りを探しに来ているのに。
たくさんお菓子をいただいてしまい、恐縮しながら王女殿下に頭を下げると「いつも余ってばかりだから嬉しい」と眩しい笑顔で喜ばれてしまった。
「さて。お兄様もいつもと違ってケーキを食べてくれて私はご機嫌なのだけれど。
ちょっと不穏な話をしなければいけないの。
シャルロットはお兄様の身を心配して城に来てくれたみたいなのよ」
「俺の身を心配して?」
こくこく頷いて肯定させていただく。
大変ありがたいことに王女殿下から話を切り出してくださった。
「それはつまり! 俺と君は既に両想いだということか!」
「違うわよお兄様」「ち、違います」
思わず私まで否定してしまった。
王女殿下も一緒に首を横に振ってくれて良かった。
「そうか。構わない、愛には段階というものが必要だからな」
「話を聞いてよお兄様。元気で何よりだけれどね。
私も詳細はまだシャルロットから聞いていないの。詳しく聞かせてくれる?」
「はい」
お二人に呪いの首飾りについての話を伝え、私が呪いを浄化できそうなこともお伝えした。
猫さんのことは伝えなかった。猫さんは私にだけは聞こえる声で話すことができるはずなのに、未だに黙って王子殿下を観察している。
ずっと思案している様子なのが気掛かりだ。
「どういうつもりで首飾りを献上品として城に持ち込んで来たのかが問題だ。
シャルロット。誰が献上品として出しているかは分からないのだな?」
「はい」
王子殿下の問い掛けに頷く。猫さんもそこまでは分からないと言っていたから。
「そう……。あのねシャルロット。
私は貴女を信用してお兄様の元へ連れて来たのは、私にお兄様のことを相談してきてくれたからなの」
「どういうことですか?」
「全員じゃないけれど、今城に出入りしている貴族たちが王子派と王女派を勝手に作っているの。
私とお兄様を使って権力争いをしているのよ。
王女派を名乗る連中は自分の息子を私と結婚させて王位を継がせたいと考えていたり、隣国の王子を迎えた方が国の発展に繋がるだとか計画したりしてて。お兄様を亡き者にしようと考える貴族までいるって噂があるの。
表立ってお兄様に会おうとすると、何か王女派が企んでいるんじゃないかって勝手に勘繰られて……お陰でこんなこっそり真夜中にしかお兄様とゆっくり過ごすことができなくなっている現状なの」
「俺は今日はシャルロットのお陰かこうして身を起こしていられるが、普段は殆ど横になっていて発言をする機会が少ない。
妹と不仲ではないと周囲の連中を説き伏せることができていないんだ。
アリシアが父上に相談してくれたこともあるのだが、父は今、母のことにかかりきりでな」
「王妃様に何かあったのですか?」
「俺の身体が一向に良くならないことで、ずっと悩んできてくれた。
その心労が祟って、母上まで病に伏してしまっているのだ。
俺のせいで母上には本当に申し訳ない。
愛している君に情けない話を聞かせてしまい恥ずかしい限りだ」
「そんな、殿下の所為ではありません」
「そこでね、私、これはチャンスだと考えたの。
お兄様暗殺の噂は確かにあったけれど、実行に移そうとしてきた者はいなかった。
でも今回呪いの首飾りが城に持ち込まれたのなら、お兄様の命を狙っての可能性が高い」
「なるほど。アリシアが首飾りを持ち込んだ貴族を特定すれば、そもそも俺達は権力争いなどしていないのだと証明できるいい機会になるかもしれないということだな?」
「そういうこと。とは言えシャルロット。
呪いの首飾りの呪いが解けることにこしたことはないから、寧ろこちらこそ協力させてくれる?」
「もちろんです」
三人で手を取り合い、協力し合えることになった。
思っていた以上になんとかなりそうな状況に安堵したのも束の間。
【シャルロットさん。そろそろ帰りましょう】
猫さんから声が掛けられた。




