「夢を見ることは、存在をやめることだ」
時に、夢を見ることは、現実と不可能の境界を越えることだ。
まるで『デスノート』で、ただの一文が運命すら書き換えるように――
夢を見るその瞬間、私たちは一度この世界の存在を離れ、
自分だけのもう一つの世界へと入り込むのだ。
部屋の窓から外を見ていると、星がよく見えた。
我慢できなくて、ベッドの上に置いてあったノートを手に取り、絵を描き始めた。
(早く描いておかないと。今夜はかなり忙しくなるし)
こう見えても、俺は十五歳にしてもう働いている。
普通の仕事じゃない。まあ…俺は“夢の王”ってやつだ。
時計を見ると、もう23時55分だった。
0時までに終わらせたくて、さらに急いで描いた。
――間に合うかな…。もっと時間が欲しい。まあ最後に残した俺が悪いんだけど。
時計が鋭く大きな音を鳴らした。
スイッチを押して止め、作業を始める。
――よかった、なんとか間に合った。
その音を聞いた母さんが俺の部屋に来た。
ドアが開く音がして、俺は急いでベッドに飛び込み、布団をかぶって寝たふりをした。
人間の両親は、俺が夢の王だなんて知らない。
ずっと普通の高校生の息子として扱ってくれていた。
ベッドから飛び起きて、さっきまで描いていたノートを手に取った。
――さて、今度こそ上手くいくかな。
ノートの表紙には「夢のノート」と書いてある。
これは帰り道で偶然拾った、俺の“レリック”だ。
自分の描いたページを開いた。
――よし、いくか。
絵の上に手を置き、ゆっくりと持ち上げた。
――うわ、すげえ…ちゃんと動いてる。
俺の手が離れていくと同時に、ノートに描いた星たちが紙から浮かび上がる。
指先からは、星と繋がる糸のようなものが伸びていた。
胸が高鳴った。
――さて、この星たちはちゃんと動いてくれるかな。
(頼むぞ…これで五十四回目なんだから)
まるで操り人形師みたいだった。
ただし操っているのは人形じゃなくて、星そのものだ。
紙に描かれただけだった星は、飛び出した瞬間、実体のある白い光の球になった。
その光は部屋の照明よりも強く輝いていた。
窓へ歩いていき、指に繋がった星を空へ向けて投げた。
――すげえ、めっちゃ速く飛んでいく。これで仕事が始められるな。
ノートの中心に挟んでいた鉛筆を取り、窓に触れながら目を閉じた。
その瞬間、俺の意識は巨大な都市へと飛ばされた。
そこには何千、いや何万という人々が集まっていた。まるで地球中の人がそこに来ているみたいだった。
日本の夢の王である俺は、ここが職場だ。
大都市の真ん中にある、何の変哲もない扉をくぐった。
周りでは多くの人が慌ただしく歩いている。
(うわ…ブラジルの大都市、めちゃくちゃ混乱してる。ファブリシオ、大変そうだな)
この扉は、夢の王が他の場所へ行きたいと願ったときだけ現れる扉だ。
扉を抜けると、スタンがいた。俺の親友のスタンだ。
――カポーネ、来ないかと思ったぞ。ほとんど遅刻じゃん。
――あー…ちょっとトラブっててさ。まあ色々あるだろ?
――またあの絵を試したんだろ、お前バカか?
彼に言われて、俺は苦笑いするしかなかった。
――で、そっちはどうなんだ?
スタンは信じられないって顔で俺を見た。
――忘れたのか? 一日中部屋にこもってるからだぞ。
少し考えてみたが、本当に何も思い出せなかった。
――えっと…何の日だっけ? いや、本当にわかんない。
――今日はハロウィンだ。
しばらく黙った。
――あー…それは終わってるな。
スタンはイライラした様子で腕を振り回した。
――終わってるじゃねえよ! お前、夢の王だろ? 今日がどれだけ大事かわかってるよな?
――もちろんわかってるよ。ハロウィンは子どもたちや若者が一番悪夢を見る日。
だから俺たちが一番頑張らなきゃいけない日だ。
夢が弱くなる特別な日がある。
その最たるものがハロウィンだ。
この日はすべての夢の王国が危険にさらされる。悪夢が暴れ回るからだ。
(まあ、一番ヤバい悪夢はちゃんと封印してあるけど)
――行くぞ、スタン。準備しないと。
俺たちは歩き出した。
日本の夢の王国には、大勢の住人が街を歩いていた。
そこは王国と呼ばれているが、実際は前後に何キロも続く一本の巨大な道で構成されていた。
左右には普通の家もあれば、普通じゃない家もあった。
城みたいなデザインの家まであった。
(みんな趣味バラバラだな…でも俺も城に住んでみたい)
綿菓子でできた家まであった。
(ちょっとくらい食べてもバレないかな…?)
夢の王国では、自分の家を自由に作れるのだ。
――っていうかカポーネ、お前ここに来る前にちゃんと食べたか?
物理の体も準備しておかないとダメなんだぞ。
俺は目を見開き、恥ずかしくて顔をそらした。
――ごめんスタン、忘れてた…。
夢の王でいる間、俺の肉体は完全に眠り込んでいる。
(自分の寝てる姿、一度くらい見てみたいな)
――今日が騒がしい日じゃなきゃいいけど…。
じゃないと本当に終わりだぞ。
――大丈夫だって。今日はうまくいくよ。
その瞬間、道の真ん中で爆発が起きた。
人々が悲鳴を上げて逃げ出す。
俺はスタンを見た。
スタンも俺を見た。
――カポーネ…お前って本当、世界一運悪いよな。
逃げ惑う人々を見て、もう一度スタンを見た。
――悪い。どうやら仕事の時間だな。
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カッポーネとスタンの夢の世界での冒険を、これからも応援してください。
お時間をいただき、ありがとうございます。ぜひ、この第1章の感想を聞かせていただけると嬉しいです。
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