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一章 -蓮の花と翡翠と夢の香り-

 お、来たね?

じゃ、最後まで付き合ってくれるよね。


 今から語る物語は私や皆が体験“してしまった”お話し。これからあなたに読んでいって貰うわけだけど、先ずは私の自己紹介からさせて。


 私の名前は水野みずの 蓮美はすみ

まぁ、想像はつくだろうけど、水の中に美しく咲く蓮の花のような女性になれるようにと名付けられた。年齢は二十代。大学生やってる。


 趣味は心霊現象や怪異伝承についての仮説を立てたり、実際に現場に足を運んでぶらついてみたり。


 後は音楽聴いたり本を読んだり、どちらかと言えばあんまりパッとしない趣味だから、大学生になってもずっと一人で地道に楽しんでくつもりだったんだよね。

 うちの大学、よく“変わり者が多い”と言われててさ、私と似たような趣味の人達が沢山居たんだ。勿論同学年だけじゃなくて先輩にもね。


 野中のなか 翡翠ひすい

私の親友とも言える女の子で、他のメンバーの誰よりも先に彼女と入学式の前日に知り合った。 


 私の大学では入学式の前日に先輩達が新入生同士の交流の場を設けてくれたんだけど、翡翠とはそこで知り合った。

 私達新入生は受付後に番号札を渡されて、食堂の同じ番号が貼られてるテーブルに座らされた。


 しばらく一人座って待ってたら、黒髪を三つ編みのお下げにした眼鏡の女の子が私のテーブルに来た。


「あの、こんにちは…。隣、良い?」

「うん、どうぞ」

「ありがとう。私、野中 翡翠って言います。よろしくね…」

「うん、よろしく。私は水野 蓮美」


 私はあんまり人と喋るのは得意じゃない。

正直言うとこの交流会を乗り越える事すら私からしたら一つの試練みたいなとこがあったんだけど、翡翠の物静かだけど話しかけてくる独特な距離感のおかげもあって、私も自分のペースを変に乱されることも無くリラックスして彼女との会話を楽しむ事が出来た。


 人数が揃うまでの間、私と翡翠は色んな話をした。

好きな食べ物から苦手な科目、入りたいサークル、そして趣味。

 翡翠が一番食い付いてきたのは当然趣味の話だった。


「凄い、廃墟探索とかやるんだね」

「うん」

「心霊スポットでしょ?怖くないの?」

「最初はちょっと怖かったけど、今では慣れては来たかな。まぁでもやっぱりたまに怖い時もあるけど」

「たまにって?例えば?」

「えっとね…」


 彼女の問い掛けに答えようとしたその時だった。


 「キャー!」


 一人の先輩が悲鳴を上げた直後、食堂の片隅で何か重たい物が落ちる音がした。


「どうした!?」

「大丈夫!?」


 側にいた他の先輩達や付近のテーブルに座っていた新入生達が駆け寄る。


 どうやら、壁に掛かっていた時計が落下したらしい。悲鳴を上げた先輩は間一髪で免れたものの、直撃していたら大変な事になっていただろう。


「ねぇ、水野さん…」

「うん…」


 私と翡翠はこの短い会話の中で、少なくともこの交流会が済むまでは心霊に関する話はよそうという結論に至った。


 それと同時に、一人の少女が私達のテーブルに座った。


「えー、マジ怖。時計落ちるとか心霊ドッキリみたいじゃん」


 ギャルだった。明るい茶髪の中に金髪のメッシュが目立ち、サロンで焼いたのか見事な褐色肌。まつ毛は凄いボリュームで私達の比じゃない。


「あたし、ゆめ。如月きさらぎ 夢香ゆめか。よろしくー」

「うん、よろしく…」

「ゆめでいいよー」


 夢香の素の眩しさに翡翠が気圧されている。それがちょっと可哀想で、でも何か面白くて、しばらく二人の問答をさっきの時計落下事故の事も忘れて私も楽しんでいた。


 しばらくしたのち、スタッフ側の先輩の一人が言った。


「はい、みんな揃ったっぽいので、これより交流会を始めまーす。皆さん、一日早いけどご入学おめでとうございまーす。本日は皆さん新入生同士や我々先輩スタッフとの交流を深めてもらったらなと思います。分からんこととかあったら気軽に先輩達に聞いてくださいねー。あ、それから…」


 色々とスタッフから説明があって、その日は皆でテーマに沿った自己紹介をしたり、ビンゴゲームをしたり、それなり楽しく過ごした。


 もちろん、二人とは連絡先も交換したよ。




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