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違和感

作者: にわか雨

初投稿です。処女作なので、優しい目でご覧下さい。

「これもクローンか…」


よく晴れた日曜日、とあるスーパーでサラリーマンの小田木は呟いた。


日本は急激な温暖化により植物や動物が減少し、食糧難に苦しんでいた。


そんな中、日本政府は【クローン推進法】を制定した。倫理観を気にする余裕など、今の日本にはなかったのだ。

スーパーで売られている肉や野菜のほとんどがクローン、つまりは人工的に作られたものになっていた。


「最近はどれも作り物ばかりだな」


そう呟きながら、均一に並べられたクローン野菜を買い物かごに入れる。


その後、買い物を済ませ、家に帰った。


家に帰ると、靴を脱ぎ、靴下をその辺に投げ、ソファに座りテレビをつける。


『今日は7月13日日曜日、気温は37℃と猛暑日になるでしょう。』


ニュースの気分では無かったのでチャンネルを変える。


「明日から仕事か、こんなゆったりした休日なんて、もう当分来ないだろうな」


小田木の会社はいわゆるブラック企業だった。連日働き詰めで残業も多く、休みなんて1ヶ月に1回あるかないか。


明日から始まる仕事に絶望を感じていた時、ふとテレビの内容が目に止まった。


『世界初!人間のクローン化に成功!』


「まじかよ…ついに俺たち人間までクローンになるのか?」


動物や植物だけでなく、自分たち人間もクローン化する…正直いい気はしない。


『博士、クローンと人間を見分けることができるんですか?』


『ええ、可能です。クローンの人間は明るい場所だと、瞳孔が猫のように縦長になるのです。それによって視認性の向上が期待できます。そしてクローン体は、昨今の温暖化や食糧不足を見越し、体のエネルギー節約率向上、体温調節能力の向上にも成功しました!』

『さらに、死後の人間の記憶を引き継ぎ、クローンとして生まれ変わらせる実験も行っています。』


『そ、それはすごいですね!日本の未来も明るいです!』


「SFチックな世界になったもんだな、クローン体になったら仕事が楽になったりすんのかな」


なんてつまらないことを考える。


「いや、こんな世界でクローンになってまで仕事するとか、死んだ方がマシだろ」


そう思いながらテレビを消し、気晴らしにコーヒーでも飲もうと席を立つ。


「あれ、コーヒー切れてる」


さっき買い物に行ったばかりなのにと気を落とす。


「コーヒーを飲まなきゃ一日の充実度が下がる。仕方ない、めんどくさいがもう一度買いに行こう」


最近は仕事続きで忘れ物をしたりボーッとすることが多い。

目を覚ますため、1度洗面所で顔を洗って家を出た。


それにしても今日は暑い。まるで俺の外出を阻止しているようだった。


「俺も死んだらクローンになるのかな、なりたくないなぁ」


なんて不吉なことを考えてしまう。こんなことを考えると、大抵悪いことが起こる。


スーパー前の交差点に差し掛かった。


この時俺は連日の残業続きもあり、注意力が散漫になっていた。

信号は赤色、ボーッとしていた俺はそのまま横断歩道を渡った。


『ププーーー!!』


案の定だった。俺は弧を描くように空をはねた。痛みを感じる間もなく自分の鮮血が目の前をよぎった。


「...!......!」


あぁ、誰かの声が遠くに聞こえる。俺はこのまま死ぬのだろうか。だんだん目の前が暗くなる。


そして何も見えなくなった。



















目を覚ますと、そこは知らない天井だった。


ここはどこなのだろうか。車に轢かれたのになぜ生きているのか。


体を起こしてみると、そこは病室だった。

無機質な部屋に机と観葉植物、そしてベットが置かれていた。


周りを見渡していたら、真横にテレビがあることに気づいた。


なぜ気づかなかったのか疑問に思いつつ、リモコンを取ろうとすると病室の扉が開いた。どうやら看護師が来たようだ。


「お水を変えに来まし…え」


看護師は目を丸くしてこちらを見た。


「め、目を覚まされたんですね!!すぐに先生をお呼びします!」


そう言って看護師は走って病室を出た。


「そんなに長い間眠っていたのか…」


そう呟き目の前のリモコンを取りテレビをつける。日付を知るために、ニュースを見ようとチャンネルを変える。


『今日は7月20日日曜日、気温は39℃と猛暑日になるでしょう』


「7月20日だと?1週間もたっているじゃないか!会社になんて言えば…」


驚いた。もちろん1週間たったことにも驚いたが、それと同じくらい、この状況で仕事の心配をしている自分に驚いた。


しばらく経って、再び病室の扉が開いた。今度は医者が来たようだ。


「目を覚まされましたか」


胡散臭そうな医者だった。長い間眠っていたからだろうか、低い声が耳に響く。


「あなたは車に跳ねられて生と死の狭間をさまよっていたんです。かなり大きな事故でしたから。」


と言う。あまりにもありえない状態だったので、現実味がない。ドッキリを疑ってしまうほどだった。


「後で詳しく検査するので、ここで少々お待ちください。」


そう言って医者は部屋を出た。


「後でってどれくらいだろうか」


窓からの日差しがベットを照らす。


「それにしても今日はいつもより涼しいな…」


窓を見ながらそう思っていた時、突然尿意に襲われた。


部屋で待っていろと言われたが尿意には勝てず、トイレに行こうとベットを降りた。


不思議なことに、1週間眠っていたとは思えないほど体は軽かった。


「そんなものなのか」


そう言って病室を出た。

病室での違和感を気にするほど、自分に余裕がなかったらしい。


以外に、トイレは病室を出てすぐの場所にあった。


個室のドアを開け、便器に座る。


「自分はこれからどうなるんだろうか」


今後の不安に悩まされながらトイレを済ませ、手を洗いに向かう。






蛇口に手をかざすと、水が流れる。

目の前には鏡、横には...観葉植物。






手を洗い終え、顔を上げた。





















にわか雨です。

こんな感じで不定期に短編を書くつもりでいます。


現実の世界でも、いつかクローン人間ができたりするのでしょうか。ワクワクします…なんて


ではまた。



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