2.対公国
「お困りですか?お嬢さん?」
「はい、非常に困ってます」
私はついつい愚痴のような話を立て板に水を流すようにザアーっと話し込んでしまった。城の内部情報なのに……。王女たる私の食事事情まで話してしまった。―――多分平民よりも悪いと…。
こんなにもう太陽も真上になろうか?と言うまで話し込んでしまって気付いた「私、名乗ってない」。
「とても、申し遅れました。私はこの国の王女でレイチェル=アップルビーと申します」
「知ってるよ。昨夜夜会の場にいたから」
そういえば、ボブが大々的に私の名前を叫んでいたっけ?
通常、男女が同じ部屋で一夜を明かせば噂になるんでしょうが、城には私の侍女すらいない。私は自分の事は自分でしている。当然(?)料理人もいないので、厨房も利用していますし、掃除もします。
シャンデリアの蜘蛛の巣は一人じゃ無理でしょう?クモ…嫌いだし。
「で、俺はセドリック=エルフィンストーンという者だ。まぁ、隣国で、皇太子をしている」
皇太子は職業なの?
「そこで、提案なのだがアップルビー王国とエルフィンストーン帝国は合併できないかぁ?と」
正直、いい話だ。
私は政略結婚みたいになるわけだけど、王族ならばそれも当たり前だし、なによりも王国民の命が大事!
アップルビー王国の城も元のようにしてくれるみたいだし、いいかなぁ?
「この合併、こちらにばかり利があるように思うのですが、そちらには?」
国土だって、アップルビー王国なんてエルフィンストーン帝国に比べたら猫の額みたいなもんだし、そうすると税収だって望めないし?
「そうだなぁ。俺が君に一目惚れをしたっていうのはダメかなぁ?」
はい?
「えーっと、もう一度言って頂けます?耳がおかしいのかなぁ?」
「ひ・と・め・ぼ・れ」
「えぇぇ―――!!」
驚くべきことってあるんだなぁ。今までは淑女であるようにと感情を表に出さないようにしてきたけど、流石にコレは……。
「そんなに驚くかなぁ?レイチェルは美形だよ?肌もキレイだし、瞳もパッチリキレイだし、髪だってキレイ」
「肌も髪も本来なら侍女さんがケアをするんじゃないでしょうか?もっときれいな女性は山のようにいるのでは?」
確か私は銀髪で碧眼じゃなかったかしら?あ、鏡などの調度品は退職金って勤めていた侍女達が持ち去ったのよねー。最近は自分の顔なんて見たことない。
セドリック様とのことを考えるといいかなぁ?と思ってしまう。セドリック様は金髪の緑眼。上背もあって、適度に筋肉質。
真面目に考えるとドキドキしてきた。
「俺と二人であのお花畑な二人をじわじわと苦しめてみない?」
爽やかだけど、言ってることはエグイわね。じわじわってあたりが。
「面白そうね。あの公国、名前だけで笑えるんだけど?」
「だよなぁ。俺が使い走りの使者だったら国名を言うの恥ずかしい」
「あ、私も~」
それから二人で笑い合った。
2人なら何でもできるさ~♪