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4 ギンメルリング

 その頃グランデは無理難題を吹っかけられていた。吹っかけた相手はセラフィムである。ああもう、と彼女は支配下にある鉱山と工房の地図を眺めながら、地底にある事務所でドワーフ達と会議を行っていた。

「さすがにどこにもないとは……言えないわね、やっぱり」

 彼女がため息をつくとドワーフの長が言った。

「もう技術者もいませんし、ギンメルリングに使えるほどの品質を持つオリハルコンも掘りつくしてしまいました。さすがに千六百五十年も間が開いては……」

「そうよね。私、全然知らないわ。前任者も何も言ってなかったもの」

 グランデは地図を見ながら言った。

「そもそも魔王様の婚礼の儀が千二百年ぶりだもの。あなただって先代から聞いただけでしょう? ギンメルのウェディングリングなんて」

「はい」

 困った顔でドワーフの長は答えた。

「新婦の結婚指輪に婚約指輪を重ねてロックして外れないように固定し、しかもずっとつけ続けられるように設計する、と」

「そうよ。さらに魔王様の指輪もその上に固定できるようにしてね。グラグラしちゃ駄目よ」

 グランデの返事にドワーフの長はため息混じりに言った。

「指輪をただ重ねるだけならできますが、見本もなしにそれだけの機構を持つアイテムを作れと言われても困ります」

「そうよね」

 この話を聞いた時、あまりの無茶ぶりにグランデは何か分かりやすい資料を出すようにセラフィムに言った。彼は魔王城の地下にある図書室からギンメルリングのことを見つけ出したのだが、素材としての高品質なオリハルコンと精巧な細工をグランデほか地の精霊衆に要求してきた。断るわけにもいかないので引き受けたが、実際のところかなり時間がかかるだろうことは最初にセラフィムに伝えてあった。

「魔力で指輪を固定するわけにいかないんですか」

 若手のドワーフが質問してきた。グランデは言った。

「魔王様の相手は人間なのよ。つけっぱなしだと魔力で指が焼けちゃうわ。それもあって細工物が必要なの」

 むむ、という空気がドワーフ達の間に流れた。少したって年かさのドワーフが言った。

「あとはもう人界くらいしか当たるところはありませんな」

「人界?」

 けげんな顔をするグランデに、そのドワーフは言った。

「過去の細工物がいくつか流れているので、それを回収すればなんとかなります。しかし誰が見つけてくるのか……」

 ドワーフ達は一斉にグランデの顔を見た。

「……私?」

 できれば、とドワーフの長が言った。

「我々が行ってもいいですが、細工物はたいてい街中にありますので、人間の多い場所では目立ちすぎます。それにグランデ様は確か人界の出身だったと」

 ああ、そうね、とグランデは言った。気落ちした様子であった。

「まあね、私ぐらいしか行けないわよね。あなた達じゃカメラ小僧に追い掛け回されて大変なことになるわ」

「では」

 期待を込めた目でドワーフの長は言った。グランデは答えた。

「嫌いなのよ、人界は。でもまあ仕方ないわね。行くからだいたいの場所の見当をつけておいて。それに戻ったらすぐ作業にかかれるように準備しておいてね」

「分かりました」

 ドワーフの長はほっとしたように答えた。一方のグランデは何とも嫌そうな表情であった。

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