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第82話 活気溢れる学校生活

 響が月城由良と過ごした休日から1週間後。


 天陽院の1年教室。

 今し方授業が終わった所だ。


「えーと、次は術の訓練だっけ?」

「そうだね。まだ訓練は学園組とはバラバラだけど、近々合流するって言ってたね」

「なるほどね。しっかし……賑やかになったな」


 響は教室を見回す。数日前までは響、秋、空、陽那の4人しか居なかった。だから今30人程の生徒が教室に入っている光景は活気がある。


 今、天陽院では天陽学園からの転校生が居る。先日の交流会襲撃を受けた事で、生徒の安全を鑑みて暫く天陽院に移る事に決まったのだ。


 座学の授業は院組、学園組で一緒に受けているが、訓練は一旦バラバラで励んでいる。


「お兄様〜!早くお兄様と訓練したいです!」


 休み時間になれば秋の元に妹の澄歌がやってくる。いつもの……になりそうな光景だ。


「澄歌とは放課後にも訓練してるよね?」

「でもぉ!もっと一緒がいいです!」

「澄歌ちゃんは相変らずだねぇ」

「兄妹仲良しでいいね!」


 そこに空と陽那が集まってくる。


「はい!陽那さんのお陰で、お兄様としっかりお話出来ましたから!」

「良かった良かった!でもあんまりベタベタしてるとお兄ちゃんも困っちゃうかもよ〜?」

「大丈夫です!お兄様は私の事大好きなので!」

「あはは……自信が凄いね……」


 陽那が揶揄うも、曇りのない眼で返す澄歌に空が呆れつつ笑う。交流会直前に話したり、陽那に至っては直接対決しただけあってもう仲良しだ。


「空さん?この前の授業の事なのですけれども……」

「エルザさん。ちょっと待って、今行く〜」


 城金(しろがね)エルザに呼ばれて空はそちらへ行く。学園組とも随分と打ち解けているようだ。


 しかし、響と秋はそうはいかなかった。秋は言わずもがな、澄歌の存在。


 秋の整った顔立ちに惹かれる女子は多いが、直ぐに澄歌が秋に寄ってくるので二の足を踏んでいた。


 響は秋雨(あきさめ)霊次(れいじ)とは一応知り合いではある。


 しかし……。


「私は君を傷つけた時の謹慎があるからな。特命があった場合以外は寮にいる。けど君とは接触禁止だ」

「俺からかけあおうか?別にもう許してるし」

「いいんだ。私なりのケジメだ」

「そっか。なら天刃流の話とかはまた今度に」


 という訳で、仲が良い天陽学園出身の男子は居ない。そもそも霊次は2年であるし。


(白山獅郎は……いいや別に)


 なんとなく仲が良い人から除外する響。


「ムッ!?何故か響に邪険にあしらわれている気がする……!何故だぁ!」


 3年の教室で虫の知らせを受けて叫ぶ獅郎。その場に居た生徒達は奇行に呆れ返っているのだった。


「響さん、糸の具合はどうですか?」

「由良。大分扱えるようになったぜ。また空いた時間にでも見て……」

「勿論です!私も糸の操作には自信がありますから!」

「お、おう……」


 顔を寄せて食い気味に了承する由良。それに響は身を引いて対応する。


(ハッ!殺気!)


 響は肩越しに背後を見ると、男女問わず何人かの生徒が恨めしげに響を見ていた。


「あの子、月城さんと一体何があったの?」

「許せなかった……!転校して日が浅いのに金色姫と親しく話しているなんて……!」

「強さは交流会で認めたが……スケコマシめ!見損なったぞ白波響ぃ……!」


(なんか妬まれとる!?)


 尋常でないそれに響は恐怖する。


「ん?金色姫……?」


 ふと、生徒が言った単語が気になった。


「あ……その、私の事をそう呼んで慕ってくれる人がいたりするんです。嬉しくはありますが、私なんかが姫なんて……ちょっと烏滸がましいんですけどね」

「な、なるほど……」


 お淑やかな雰囲気と所作、それに合わせて微かに揺れる金髪は美しく、お姫様に相応しいと思い納得する響。


 そんな響の元に、悠が来て声をかける。


「おーい響。頼まれてた出た資料の事で放課後来てくれ」

「了解ッス。悪い由良……今日は見てもらうの無理そうだ」

「いえいえ!いつでもお声がけ下さい。それでは、私も次の授業の準備がありますので失礼します」


 丁寧にお辞儀をし、可愛らしく手を振って教室を後にする由良。響はそれに軽く手を振って見送るのだった。その間も妬む視線が痛かったりするのだった。



 数日後。

 遂に訓練も天陽院と天陽学園で合同となる。


 今日は各々の術を伸ばす訓練。教師が見て周ってアドバイスをしていく流れだ。響達も各々距離を取って鍛錬していくのだった。


 響は複数の木人に向かい立つ。


「『火糸(ほのいと)』!」


 そして腕を振るい、指先から赤い糸を3本出した。それは瞬く間に木人に絡みつき、拘束してしまう。


「わあっ!流石です響さん!」


 その様子を傍で見ていた由良が拍手する。


「由良が操作のコツ教えてくれたお陰だ。ありがとな」

「いえいえ!響さんのひたむきな努力あっての事ですよ」

「そこまで言われると照れるな……」


 響は照れくさくなり後頭部をかく。そんな時、複数の生徒が集まって来た。そして代表の1人が話しかけてきた。


「響くん、教えて欲しい事があるんだ」

「なんだ?」

「御前試合で見せてた刀印から術を出したアレだよ。刀印のメリットを受けつつ片手で使えて凄いと思ったんだ。だから真似して見たけど、逆に精度が悪くなったりするんだ。コツとかないのかい?」


 それは、響が刀印を銃に見立てて『焔弾』を放った事だ。


「ああ、アレは銃をイメージしてるんだ」

「銃?確かに形は似てるけど……銃よく知らないんだよね」

「そうなのか?」


 悩ましげに首を傾げる男子。周りの者も同じようだ。


 響が不思議がって居ると、由良が声をかける。


「ほら、銃って作りが複雑じゃないですか?だから、弾に陽力を込めるのに詳細に内部に流れる様子をイメージしなくちゃいけないんです」

「そうなのか?」

「はい。弾に陽力込められても、銃が壊れちゃダメなので本体も強化しなくちゃいけないですし。だから消費陽力の観点や、イメージの難度で殆どの陰陽師は銃を使わないんですよ」


 銃をわざわざ使うより、放出型の術を扱う方が手っ取り早く、また陽力効率がいいのだ。


(なるほど……だからあんま馴染みが無いのな。十酉(とおとり)ゆづるさんのは確か一から生み出してたな。なら陽力を流す手間は無い。けど天陽十二将って凄い人だから例外っぽいな)


 由良の説明に過去の記憶と照らし合わせしながら納得した響。


「でも別に俺はそんな難しく考えてねぇよ。刀印の指先が銃口だとして、そこから術が出るイメージでやってるだけだ」

「なるほど。掌で撃ってたのを今度は指先から……って感じか。でも命中精度はどうしてるんだ?中々狙った所に飛ばないんだ」

「ほうほう?確かに、掌で撃つ時は中指で標準付けてたもんな。それだと見てるの指先だろ?刀印を的に向けた時とじゃ、中指の長さ分発射口と視点の高さが違うから誤差が出る。そこを修正して慣らしていけばいいと思う」

「「「おお〜」」」


 響は丁寧に解説し、教えていく。男子生徒らはそれに真剣に耳を傾け、練習していくのだった。


「しゃあっ!響流刀印銃術!」

「うおおおっ!響流刀印銃術!」

「何そのネーミング!?」


 練習の最中、勝手に名付けられたそれに思わずツッコむ響。


「何って……響くんが考えたんだから、開発者が分かりやすいように名付けるのは普通でしょ?」

「これ片手で使えてマジでいい!響くんありがとう!名前はこれが分かりやすいよ!」

「お前ら……そうかも知れねぇけど、ちょっと恥ずかしいわ……」


 自分の名の付いた技術を皆が叫んでいるのは流石にむず痒い響。


「いいじゃないですか。響流刀印銃術。私はカッコイイと思いますよ?」

「由良まで……まあ、いいか」

「はい!いいんです!」


 自分で考えた事が誰かの役に立ち感謝される。


(ま、悪くないな)


 響は胸に満ちる充足感を噛み締めるのだった。


「また金色姫と仲睦まじく!」

「なにっ!?」

「許せねぇよなぁ!?」

「よし、じゃあ的を変更して響で新技を試そう」

「それ教えた本人だが!?なんだその掌返し!?」

「それとこれとは別なんじゃあっ!」


 熱い掌返しで響はレイドボスのように狙われる。


「フフ……仲良しになって良かったです」

「そんなほのぼのしたもんかなぁ!?」


 穏やかに微笑む由良と元気にツッコむ響であった。



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