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幕間 日輪の夢

「んぁ……ここは……」


 俺はまた蒼天に満ちた世界に来ていた。


 確か俺は天陽学園から帰って自室のベッドで寝た筈……。


「前にも来た……確か俺の心の中……だよな?」


 この蒼天の世界……自身の心の中で、白い天女のような格好をした黒髪の少女に出会った。


 そして俺は4つの力に目覚め出したと伝えられたんだ。


 朧気だった記憶の解像度が上がり、詳細を思い出す。


「って事はあの子が居るのか……?」


 力が目覚めきって無いとかで名前は分からなかった彼女。ここに来たという事はまた会えるのではないかと思い辺りを見回す。


 だが、姿は無かった。


「居ない……」


 ゆっくり話そうと約束したのだが、それを果たせそうに無く肩を落とす。


 そうしていると……。


「だ〜れじゃっ!」

「うぇっ!?」


 いきなり視界を塞がれて混乱する。遅れて背後の女性が発した言葉の意を汲み、手で目隠しをされているんだと理解する。


「え、えーと……」

「ほれほれ〜♪早う答えんか♪」


 参った……誰か分からない。


 悪戯好きなら陽那は該当するが、そもそもここは俺の心の中。居るはずも無い。


 ならば天女のあの子と思うが、声も話し方も違う。


 暫く考えるがお手上げだ。


「えと、マジで誰?」

「む?なんじゃ降参かぁ〜?つまらんのぉ〜」


 残念そうに手を離す彼女。暗かった視界はまた蒼天の世界を移す。


 ゆっくり振り返ると……。




 ───白。




 初めに抱いた印象はそれだった。


 白い和装に銀髪、白い肌。その中で爛々と輝く琥珀の瞳が一際目を引く、少し大人な女性。


 歳で言うなら20〜22くらい、やや少女のあどけなさの残る顔が印象深い。


「なんじゃ?見惚れたかのう?」

「あ、いや……えと、どなたですか?」


 心を言い当てられて思わず目を逸らしてしまう。誤魔化すように問いかけた。


「余は天照大御神(あまてらすおおみかみ)!神じゃ!」

「か、神ぃ!?」


 天女の次は神!?インフレしすぎだろ!


 と、思ったが神の力がどうこう言っていたのを思い出す。


「てか、天女のあの子は聞こえなかったのに……名前が分かる……!?」


 天女の子の時は音は聞こえず、口も見た瞬間記憶からすぐ抜け落ちるように読めない。


 しかし今回は違う。ハッキリと伝わった。


「天照……」


 天照大御神……太陽神と巫女の一面を併せ持つこの日ノ本の主神だ。太陽の信仰が盛んな日ノ本で、恐らく最も有名な神様だろう。


「あの、なんでそんな神様が俺の心の中に……?」

「む?我が子なのだから当たり前じゃろ?」

「我が子……!?」


 またも突拍子も無いことを言われ困惑する。


「ど、どういう事だ……ですか?」

「敬語なぞ良い良い♪ほれ、我は日ノ本の主神じゃろ?ならばお主らがどんな人間だろうと、等しく我が子も同然よ♪」


 尊大に胸を逸らす天照。その顔は全てを包み込みそうな自信で満ちている。


 すげぇ……。懐も神スケールらしい。


「まあ、正確に言えば余は天照大御神その物では無い。お主らの中にある神の力……その化身と言えるの」

「なるほど……」


 神様自体が俺の中にいるより余っ程飲み込める。


「お主はかなり余の力を使いこなしている。嬉しいぞ♪」

「神の力……陰陽力とか、陰陽術とか?」

「そうじゃ!元は父母の国産みの力だがの。国の主神として余が力の化身となっているのだろう」


 天照大御神の両親と言えば……イザナギとイザナミだ。


 天沼矛(あめのぬぼこ)によって日本を生み出したとされる神。現実を生み出す神の力と言う天女の言も納得出来る。



「特にお主の式神!余の眷属を選ぶとは……りすぺくと?ふぉろわー?と言うのかの?アレには余も有頂天になったぞ♪」

「あ、はい……まあ……」


 天鶏(てんけい)の事だ。鶏は天照大御神の使いとされ、天岩戸(あまのいわと)に隠れた際にその鳴き声が利用されたという。


 詠唱も実はその逸話から取っている。


 だが面と向かって嬉しいと言われると照れくさくなる。


「ふふ♪愛いやつめぇ♪」


 そう言って彼女は俺の頭を撫でる。まるで陽だまりのようなその手は俺の心を落ち着かせていく。


 その包み込むような優しい表情からも母性を感じる。


 本当に……俺らの神様なんだな。


「おっと、そろそろ日が昇る。お主は起きる時間じゃな?悪いのぉ……少し話がしたくて呼び出してしまった」

「あ、えと……びっくりしたけど、話せて良かった」

「余も同じじゃ♪では、また話そうな?響よ」


 彼女がそう呟くと共にとてつもない眠気が襲い来る。


 瞼は自然に閉じる。その最中、温もりが俺を包み込んだ。


「この先どんな辛い事があろうと、お主には余が着いておるからな。忘れないでおくれ」


 優しく抱きしめられながら俺は意識を手放すのだった。



「ん、んん……」


 目覚めて視界に映るのは自室の天井。


 夢の事はしっかりと覚えている。温かな感触も……。


「……よし、今日も授業がんばるか」


 彼女の言葉を思い出し、心はやる気に満ちる。


 陰陽力、陰陽術をもっと使いこなす為、俺はまた一日を始めるのだった。



ここまで読んで頂きありがとうございます!

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