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第76話 事態終息

 襲撃から半日。


 天陽学園には救援が駆けつけ、新たに結界を張り直された。


 生き残った者達の内、動ける者は学園の空き教室に集められていた。皆暗い顔をしている。


 教壇には校長が立ち、今回の事件の顛末を述べる。


「今回の事件は『影』を操る術式を確立し、『影人』と取引をした桐谷行人により起こされた事件だ。バトルロワイヤルのフィールドへ奴らを招き寄せ、自分は校舎の生徒を襲撃するというものだった」


 一泊置いて、報告書を読み進める。


「首謀者である桐谷行人は死亡。皆の尽力のお陰で事態は終息したが……警護に当たっていた陰陽師に教師、そして生徒を合わせ、死者15名、重症者18名、軽傷者24名の被害となった」


 校長は鎮痛な面持ちで目を伏せる。決して少なくない被害であるので当然だろう。暫くして、力強く目を開いた。


「生き残った者達も未だ傷は癒ていないだろう。心も体もな。しかし我々は『影』と戦わねばならない。散っていった者たちの為にも、これから『影』に脅かされる人の為にもな」


 陰陽師である以上これからも『影』との戦いは続く。だから、いつまでも暗い顔をしている訳にはいかない。


 厳しいが、乗り越えねばならないのだ。


「だから、傷が癒えたなら立ち上がってほしい。そしてまた鍛錬に励み、その力で『影』から人を守ってくれ……陰陽師として」

「「「はい!」」」


 校長の激励を受け、その場にいる20数名は力強く返事をするのだった。校長もそれを見て満足げに微笑む。


「さて、これからの事を話そう。交流会だが、予定通りには出来なくなった」


 その事は皆何となく察していた。校舎は半壊しているし、生徒も怪我がまだ癒えていない者も多い。


「故に、明日予定していた御前試合のトーナメントは決勝のみ行う」

「え?」


 校長の思ってもみない言葉に響が声を漏らす。響だけでは無い。誰しも中止にするとばかり思っていた。だから校長の言葉を皮切りに他の生徒もザワつく。


「校長、それはどういう事でしょうか」


 挙手した秋雨霊次が校長に真意を問う。


「説明しよう。天陽院・天陽学園交流会は言わば儀式のようなものだ。特にバトルロワイヤルの準備は通常年単位の準備がかかる」


 五行のエリアを作ったり、そこにバラバラに送り届ける転送など……どれも大掛かりで準備にとても時間がかかる。


「しかし、それを一つの儀式とする事で特定条件を成立させて大量のリソースを確保したのじゃ。その条件こそが儀式を最後まで全うする事なのだ」


(そうだったのか……)


 響は驚愕と共に理由に納得する。


「つまり、どんな形であれ交流会は全てのプログラムを行って終わらせなければならないのだ。分かったかな?」

「はい、ご説明ありがとうございます」


 視線を送る校長に霊次は頭を下げた。


「御前試合の参加者だが……途中までの成績と共に、今回の襲撃での功績を加味して選抜する事にした。それでは発表する」


 校長が別の資料を手に取り眺める。


「先ずは1人目。1日目の訓練、そして2日目のバトルロワイヤルで好成績を残し、『影人』を単独で1体撃破、共同で1体撃破、そして単独で2体撤退させた者……白波響」

「え?俺!?」


 響は名前を呼ばれ驚嘆の声を上げる。そんな響に隣に座った陽那が声をかける


「響くんの実力なら妥当だと思うなぁ〜?」

「陽那……ありがとな」

「さて、次を発表する。響くんと戦う相手となる者だ」


 資料をめくり、校長は言う。


「この者も響くん同様、1日目の訓練、2日目のバトルロワイヤルで好成績を出している。そして襲撃では『影人』を単独で3体撃破、奇襲により結果的に共同で1体撃破している。白山獅郎くん」


 その名が呼ばれ、離れた場所に腰掛けた獅郎へ一斉に注目が集まる。


「あいつか……」


 響もまた視線を向ける。獅郎は交流会前から因縁のある相手だ。


「フッ……やはり戦う宿命にあったな」


 獅郎は響に視線をぶつけてそう言う。


「改めて、白波響、白山獅郎の両名の御前試合を明朝執り行う。見届けるのは私、土御門晴義だ。2人の健闘を祈る」


 こうして集まりは解散となった。


「響く〜ん!あたし応援してるよ!」

「頑張ってね!響くん」


 陽那と空がいの一番に声をかける。


「ああ、頑張るよ」

「なんか、天陽院と天陽学園の代理みたいになったね」

「お、確かに〜。響!天陽院の代表としてあの生意気な奴をぶっ飛ばせ!俺の仇だと思って!」


 秋の言葉に反応し、臣也が響へ激励を送る。そこには交流会前に殴られた私怨が混じっている。


「が、頑張ります……」

「バカの話は聞き流していいのよ?私も応援しているわ」

「文香さん……ありがとうございます!」


 文香もまた響の背中を押す。その後臣也がバカと言われた事を抗議するのもお約束だ。


(天陽院の生徒として、恥じない戦いをしねぇと!)


 響は激しい闘志を胸に宿すのだった。



ここまで読んで頂きありがとうございます!

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