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第73話 結界解除、そして撤退

「結界が解けた!?」


 響は中央エリアを目指して走る中、フィールドを覆う『影』の結界が消えるのを見る。


 それは拳次郎が結界を張った『影』を倒した為だ。結界消失は瞬く間に中の陰陽師は理解する。


 そして、結界を解こうとしていた校長……土御門晴義はいの一番に気がついた。


「誰かが術者を倒したか……!ありがたい!これで連絡もできる!」


 陰陽師の結界は通信を遮断しない。つまり、これでネックだった長距離通信が可能となった。


 結界内の陰陽師の専用端末へ一斉に校長のメッセージが届く。内容は『敵の結界は解けた。結界最北端へ集結せよ』。


 皆は一斉に北へと走り出した。




 だがそれは逃げていたか、息を潜めていた生徒たち。


『影人』と戦闘中の者はそれを確認する事すら命取りになる状況にあった。


 南西の鉱山エリア。その一角では2人の女生徒が『影人』と交戦していた。


「何か鳴ったな。確認しなくていいのかい?」


 赤髪の巨躯を持つ『影人』は2人の女生徒に問う。


「はあっ……!はあっ……!文香さん……」

「無理よ……隙を見せたら直ぐにやられる……」


 息が荒い空と文香。その身には、深くはないが多くの傷がついている。


 2人は共に行動していた。しかし『影人』と出会い、交戦を強いられたのだ。


『影人』は強く、2人は追い込まれていた。


(どうしよう。通知は多分結界が解けた事に関係する……なら、空ちゃんを逃がす?いや、それを許す奴じゃないでしょうね)


 文香は頬から垂れる血を拭いながら思考する。


「文香さん……私が前に出ます。放出型でも陽力量的に私の方が防御は硬いですし」

「空ちゃん……まさか!」


 空が囮になる気だと考え文香は声を荒らげる。


「いえ、何とか隙を作って2人で離脱しましょう」


 しかし文香の考えは外れる。空はまだ諦めていなかった。


「分かった……合わせるわ」

「ありがとうございます」


 文香は空の強い意志を読み取る。ならばそれに応えるのみ。2人は陽力を滾らせ、『影人』を睨む。


 だがその時、『影人』の首が飛んだ。


「な、何!?」


 突然の事に驚愕する空と文香。


『影人』の体が倒れる。その巨体の後ろから、負けず劣らずガタイの良い男子生徒……天陽学園3年白山獅郎が現れた。


「これで3体目……油断していたとはいえ呆気なかったな」


 獅郎の手にした大剣が光となって消える。


(奇襲だけど、まさか一撃で倒すなんて……)


 文香はその事実に驚嘆している。空の術でも大したダメージが無かった相手だった。


 だからこそ、それを容易く倒した獅郎の力の底知れなさを感じる。


「通知を確認しておけ。俺は残党を探す」


 獅郎は2人にそう言い残し、踵を返す。


「あっ!待って!」

「……なんだ?」


 空が獅郎を呼び止める。足を止め、獅郎は振り返った。


「あの、助けてくれてありがとう……ございます」

「白波響の学友であろう?御前試合で戦う筈の奴のパフォーマンスが下がってはつまらんからな」


 御前試合……明日行われる予定の、バトルロワイヤルの成績上位者で戦うトーナメント。獅郎はその事を懸念していた。


 悪魔で獅郎は自分が戦う相手だから……という理由である。


「奴と俺は必ず戦う。これは宿命だ……ではな」


 獅郎は今度こそ踵を返し、まだ見ぬ敵を求め飛び出して行くのだった。


「行っちゃった……」

「ほっときなさい。簡単に死ぬ人じゃないでしょうし……」


 空の心配そうな姿に文香は言う。獅郎と面識がある文香の言葉は説得力があった。


「それより空ちゃん、これを見て?」

「こっちの校長から……『最北端へ集結せよ』……?」

「ええ、『影』の結界が解けたからでしょうね。急ぎましょう」

「はい!」


 危機を乗り切った2人は指示通り北へ進むのだった。



 場所は代わり土砂エリア……結界が解ける少し前から

 臣也もまた『影人』と交戦していた。


「そらそら!どうしたの!?それで終わり!?」


 青髪の女性の『影人』は蛇腹剣を振るい、臣也を追い立てる。


「もっと、もっと無様な所を見せて!豚のような悲鳴を聞かせて頂戴!」

「あーもう!俺にそんな趣味はねぇ!」


 文句を言いつつ、四本の『岩王腕』を伸ばすが、それは蛇腹剣によって瞬く間に切り裂かれる。


(クソ!今ぼっちなのに『影人』の相手かよ!)


「でも、やるしかねぇか!」


 臣也は逃げるのを止めて『影人』に向き直る。


(覚悟決めろ!)


 自身を鼓舞しながら刀印を結び、陽力を生み出す。そのまま『呪操岩王像』を召喚しようしたその時……。


「あら?」


『影人』の足元から影が炎のように立ち昇った。


「な、なんだ!?」

「あ、結界解けてる。つまり作戦失敗ね……」


 驚く臣也を他所に『影人』は冷静。蛇腹剣を鞘に収める。


 影は段々と女の姿を覆っていく。


「じゃあね?次があったら飛びっきりの悲鳴を聞かせて頂戴ね?」


 全身が影に包まれた後、端から影は塵のように消えていく。


 臣也は新手の技と見て警戒するが、影はやがて跡形もなくその場から消え去るのだった。


「はぁ……んなもんごめんだね」


 臣也は肩を落とし、溜息と共に吐き捨てるのだった。



 響は中央エリアに来ていた。そして木に寄りかかる秋を見つける。


「秋!生きてたか!」

「響……良かった。そっちも無事でなによりだよ」


 駆け寄った響に秋は嬉しそうに微笑む。響も安堵に胸を撫で下ろす。


「霧払いナイス」

「うん、そっちは助けられた?」

「おう、北へ向かわせた。でも『影』は逃がしちまった」


 響は先程あった事を話す。


「そっか……でも君は生きてる。それに、結果的に二体の『影人』を引かせたんだ。大金星だよ」

「……ありがとな」


 秋の気遣いに響は礼を言う。その時、響は異質な音を聞いた。


「どうした?」

「なんか『影人』達が出てきた時と似た感じが……っ!消えた!?」


 薄っすらと聞こえていた『影人』の嫌な音。それが各地で消えるのを響は感じ取る。


「……これ、撤退したって事か?」

「その可能性はある。『影』の結界が解けたんだ……いつ外から増援が来るか分からないからね」

「なるほどな……」


 秋の理屈に納得する響。この事を校長に伝えた所、念の為警戒しつつ、引き続き集結するように皆に伝えられた。


「おし、俺らも行くか。動けるか?」

「うん、結構休んだから大丈夫。行こう」


 こうして響達もまだ北へ向かうのだった。






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