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第19話 祝賀会

 響と陽那の任務完了から3時間後──響の部屋。


「お、お邪魔します……!」

「お邪魔します」


 響の部屋に緊張した面持ちの空と落ち着いた秋が訪れる。


「おう。適当にくつろいで……って空、髪染めたのか?」


 響はリビングまで足を運んだ2人に挨拶を返すと共に、空の漆黒の髪の内側がネイビーブルーに変わっている事に気がつく。


 髪の一部を様々な色に染めるのはここ数年の首都での流行りだ。


「あ、うん。前から可愛いなぁって憧れてたっていうか……どう、かな?」

「おう、似合ってるぞ。光が当たると更に綺麗に見える」

「き、きれっ!?え、えへへ♪……ありがとう♪」


 響の真っ直ぐすぎる褒め言葉に不意をつかれる空。恥ずかしそうに頬を赤らめるが、嬉しさが勝り笑顔を返している。


 部屋に入った時の緊張はどこへやら。似合っているという言葉を小さく呟いて反芻する度に口角を上げている。


 その様子がなんだか女児のようで響の目に微笑ましく映った。


「どれどれ〜?おお!めっちゃ可愛い〜!」


 台所で何やら仕込みをしていた陽那がひょこりと現れ目を輝かせる。そして様々な角度から空の髪を眺めだす。


「陽那ちゃんもありがとう♪」

「あ、そうだ!あたしら並んだらめっちゃシナジーあるくない!?金髪に毛先桃色のあたしに〜?黒髪に青の空ちゃん!映える事間違いなしだよ!」

「そ、そうかも!一緒に写真撮ろう?」

「もち!」


 手際良く陽那は私用のスマホを取り出しツーショットを撮り出すのだった。


「結構普通の部屋だね?もっとこう……何も無いかと思った」

「俺にどんなイメージ持ってんだよ!?ってかもう座ってる!?」


 空達を尻目に響の黒と白、そして赤の家具で彩られた部屋を見回したくつろぐ秋。偏見が混ざってそうな言葉や遠慮の無い態度に響はツッコミを入れる。


 賑やかさは4倍以上であった。





「え〜それでは響くんの初任務成功を祝して!カンパ〜イ!」


 陽那の音頭と共に響、空、秋は続いて乾杯と述べてグラス同士をカツンッと鳴らす。


 4人が響の部屋に集まった目的は響の祝賀会である。テーブルにはたこ焼き器とたこ焼きの種、タコやウインナー、ツナにチョコレートやバナナなどの具材。そしてソースやマヨネーズが雑多に置かれている。


 大阪で生まれたたこ焼きだ。タコ以外にも様々な具材を入れるのが首都の若者の間で流行った。そしてたこ焼き器を囲い、皆で作り食すのもまた流行り。


 俗に言うたこ焼きパーティ……『タコパ』であった。


 事の発端は響の任務帰りの車内に遡る。


「あ、響くん。今日ご飯どうするの?」

「ん?あ〜、まあ家にあるのでテキトーに自炊かな?」

「折角だし、祝賀会しない?響くんの初任務成功祝い!新人歓迎会もまだだったから丁度良くな〜い?」

「おお、いいなそれ。そりゃ嬉しいし断る理由がねぇわ」


 響は陽那の提案に乗り、連絡を受けた空と秋もそれを了承する。響達はそのまま神木にスーパーまで送って貰って食材を調達。必要な道具は響の部屋にあるもの以外は陽那が準備したのだった。


 こうして今に至る。


「おお!初めてなのに空ちゃん回すの上手だね〜!」

「そうかな?ありがと」

「うん!強いて言うなら、90度ずつ回していくといい感じに出来上がるんだよ〜」


 陽那は空の様子を眺めながら慣れた手つきでたこ焼きを回していく。3人はその華麗な手捌きに惚れ惚れしていた。


「すげぇな陽那……」

「そうだね。僕は何回か見てるけど、いつ見てもこれは職人と言って差し支えないレベルだよ」

「えへへ♪もう褒めすぎだよみんな〜!親睦会にタコパは鉄板だからね!熟練者のあたしに任せなさいっての!あ、お皿頂戴?」

「はい、陽那ちゃん」

「空ちゃんサンキュ〜」


 響達の賞賛の言葉を受けながら嬉しそうに口角を上げる陽那。そのままこれまた軽快にたこ焼きを皿に盛り付けてソースとマヨネーズ、青海苔や鰹節をかけていく。


「よし、いい感じ♪折角だし響くんからね!はい、あーん?」

「はぁっ!?」

「えっ!?」


 その流れでいきなりたこ焼きを差し出されて戸惑う響。それを見て何故か空も口を開けて驚く。


「いやいやいや、恥ずかしいわ!」

「いやいやいや、これぐらい恥ずかしがるなよ〜ん♪」


 響をからかうように楽し気な陽那が口元にたこ焼きを近づかせる。響は身を引いて遠慮するが、結局根負けしてたこ焼きを口に運んだのだった。


「どうどう?」

「……美味い」

「でっしょ〜?あたし天才だからね!」


 照れながら響はモチモチの食感とソースの香ばしい味に唸る。陽那はそれを見て満足気な顔をしてまた別の更にたこ焼きを盛り付けていく。


「はい、次は空ちゃん!あーん?」

「わ、私も?じゃあ……あーん……あふっ!ハフっ!……っ!美味しい!」

「うんうん!良きかな良きかな〜♪」


 空もまたたこ焼きを味わい口角を上げて喜ぶ。そして最後に陽那は左側の秋の方に目を向ける。


「僕は遠慮しておくよ。もう取ったし」

「いつの間に!?」


 秋は陽那達が騒いでいる内に自分の分のたこ焼きを確保していたのだった。


「えぇ〜!なんで自分で取っちゃうの〜?折角あたしが食べさせてあげるのに!ノリ悪〜い!」

「はいはい、そっちは悪ノリだよ」

「上手いこと返すな〜!」


 陽那の抗議に秋は至って冷静に返す。そんな漫才のようなやり取りを肴に響と空はたこ焼きを口に運んで行くのだった。


「あ、そうだ。なんか見るか?」

「そうだね。響くん映画好きで色々持ってるよね」

「ほんとだ!テレビの下にめちゃくちゃある!」


 テレビ台の収納には響の友人──黒凪遮から諸々の礼にと半ば押し付けるように譲られた映画が多数あった。


「貸すって言って渡すのに、いざ返そうとしたら布教用だから気に入ったならあげるって……それで今じゃこうだ」

「その子、中々の映画オタでいいね!響くんのオススメ何〜?」

「うーん、まあ最近見たこれかな?」


 響は1番左にあったSFアクション映画を手に取る。内容は世界が国ではなく企業に支配された世界で、主人公が傭兵となり依頼を受ける内に超能力に目覚め、能力者同士の戦いや企業の謀略に巻き込まれていく話だ。




「おお!アクション凄いね」

「あぁ、俺もビビった。この殺陣をワンテイクで取ったってオーディオコメンタリーで言ってたわ」

「これを……!?」


 主人公と因縁の相手がタイマンするシーンで珍しく興奮した声で秋は画面を眺める。一挙手一投足のキレが凄まじくまさに真に迫る演技。かく言う響もまたそのアクションの良さを噛み締めていた。


「CGすっご!エフェクトド派手だ〜!」

「うん、すっごく綺麗だね……!」


 空と陽那も超能力が発動する煌びやかな画面に釘付けである。勿論ドラマパートも俳優の熱演、それを活かすかめらわに見惚れる。


 4人はすっかり一時間半の映画を楽しんでいたのだった。


「たはー!おっもしろかった〜!お腹もいっぱ〜い!」

「そうだね〜。あ、陽那ちゃんは仕込みして貰ったから私が洗い物するね?」

「え?いいの〜?空ちゃん気が利く〜!」

「俺も手伝うわ」

「じゃあ、洗ったのを拭いて貰おうかな?どこに収納するかも響くんの方が詳しいし」

「それじゃ僕はゴミを片付けるよ」


 それぞれ役割分担をして後片付けをする響達。こうして祝賀会は無事に終わり、4人はすっかり仲の良い友達らしくなっていた。



ここまで読んで頂きありがとうございます!

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