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第135話 久遠からの依頼

 1週間後の日曜日。響は家でダラダラすると決めた。また(さえぎ)からオススメされた映画を見ようとお菓子などの準備をしている所だ。


 すると、陰陽師専用の方のスマホに通知が鳴る。画面には常磐(ときわ) 久遠(くおん)の名が映る。


「久遠から? ……っ! 長久(ながひさ)さんが連れ去られた!?」


 久遠の陰陽師の活動を手伝っているという銀髪の男性。彼が攫われたと伝えられた。響は予定をキャンセルして急いで準備をするのだった。


 とある神社の一室。そこには暗門があり、その両脇に見張りの陰陽師が2人いる。その奥には、赤のブレザーやチェックのスカートが所々破れたり汚れた姿の久遠が居た。


 怪我は治したが、着替える事もせず椅子にも座らず響達を待っていた。すると暗門が輝き、門が開いた。


 暗門で影世界へと来た響。それに続いて陽那、空、秋も門をくぐってやって来た。それに久遠は沈痛な面持ちからパッと明るくなる。


「響くん! 来てくれたんだね……その人達は?」

「俺の同級生だ。実力は確かだぜ」


 響の言葉に続き陽那達はそれぞれ挨拶をする。


尾皆(おみな) 陽那(ひな)です! 初めまして!」

天鈴(あますず) (そら)です」

武見(たけみ) (しゅう)だ」

常磐(ときわ) 久遠(くおん)です。来てくれてありがとう」


 挨拶を終えて状況を説明しだす久遠。


「依頼内容はボクを手伝ってる在野の陰陽師……不磨(ふま) 長久(ながひさ)の救出。銀髪で長身の男だよ。こんな感じ」


 久遠はスマホを取り出し、顔写真を見せる。もう会ってる響を除いたメンバーはそれをしっかりと確認した。


「次に、彼が攫った存在。そいつは2mはある大柄の男だった。長髪の白髪にボロボロの袴で上半身は裸。見たらすぐに分かると思う」

「なるほど……そいつはなんで長久さんを?」

「強くなる為って言ってたよ。実際長久の力はそういうものだし、捕まえて無理やり使わせる気なんだと思う」

「方法は幾らでもある。拷問とかね」


 秋の言葉に無言で頷く久遠。バディとも言える存在が攫われたのだ。久遠も気が気でないだろう事は十分伺えた。久遠はそのまま話を続ける。


「場所はここから1km地点。哨戒任務をしてた所を襲われたんだ。それで……ボクを庇って長久は気を失った。そして南東の方へ連れてかれたんだ」

「これで全部か?」

「うん、お願いみんな。総監部で言う、第(よん)位相当の報酬を1人ずつに払う。だから長久を助けてほしい……!」


 頭を下げる久遠。響達の答えは、ここに来た時点で決まっている。


「ああ、勿論だ。言ったろ?力になるって」


 響の言葉に陽那達が力強く頷く。久遠は頭を上げて感謝を述べる。


「ありがとう。ボクが案内するよ」

「分かった。行こう!」


 響は久遠の依頼を受諾し、陰陽師として夜の世界を駆けていくのだった。



 数分後。

 久遠と長久が襲われた地点に到着する。そこは数mに渡って家屋が崩れ、道路が抉れた生々しい破壊の後が残っている。


「こりゃひでぇな……」

「ここから南東に飛んで行ったんだ。凄い跳躍力だった。いや、跳躍力だけじゃない。凡ゆる身体能力が高かった。ボク達2人を、術を使わなくても圧倒するくらいに」

「マジか……! でも、誰が相手だろうがやる事は変わんねぇ」

「全員ならきっと大丈夫だよ!」

「うん。私も、響くん、陽那ちゃんや秋くんも強くなったもん」

「それに、無理に戦う必要は無い。僕らの目的は長久さんを救い出す事。それさえ達成出来ればいいんだから」

「みんな……うん、そうだね。がんばろう!」


 響達4人の言葉を受けて久遠は気合いを入れ直す。


「んじゃ、ここから南東へ行く訳だが……真っ直ぐ言ってる訳無いわな。どうやって追いかける?」

「それなら大丈夫。ボクと長久は互いの位置が分かるようにしてるんだ。これでね」


 久遠が懐から何かを取り出した。それは黒い勾玉だ。


「これは咒装(じゅそう)(つがい)の勾玉。これと対になる白い勾玉を長久が持っていて、持ち主は片割れのある方向が分かるんだ」

「なるほど。なら真っ直ぐそっちに行きゃいいんだ」

「うん。どこまで離れてるかは分からないけど追いかけよう!」


 引き続き目標の位置が分かる久遠を先頭に響達は走るのだった。やがて、街中を出て山奥へと入っていく。道なりに進んでいくと、山道の途中に穴が空いた場所を見つけた。


「っ! あれは!」

「洞窟の入口か?」


 巨大な穴を覗き込むと中は緩やかに下り坂になっており、地下へ続いている事か分かった。


「大柄の男が十分入れる大きさ……間違いないだろうな。おし、行こう」


 肉体強化術で身体機能を強化できる陰陽師に暗さはあまり意味をなさない。故に特別な探検道具などが無くても問題なく洞窟へ入れるのだった。


 5人は慎重に周囲を警戒しながら洞窟を進む。すると、勾玉が輝き出した。


「これは……近いよみんな……!」


 久遠の言葉にゆっくり頷く響達。より一層注意深く索敵し、勾玉が示す洞窟の中を歩いていくのだった。


 勾玉が輝いてから数分後、大空洞へと続く道の手前……その左壁沿いに遂に目標を見つける。それは洞窟をくり抜き格子で塞いだ牢屋に居た。


 久遠がいの一番に駆け寄る。


「長久!」

「……く、久遠……か?」

「うん、ボクだよ! 大丈夫!?」

「ああ、勾玉が輝いて……お前が近いと分かったよ」


 白い勾玉を取り出す長久。久遠は黒い勾玉を格子越しに見せると、更に輝きは周囲を照らす程大きくなる。すると格子を一瞬にして破壊してしまった。


 それに響達は驚愕する。


「な、なんだ!?」

「番の勾玉は持ち主同士を引き合わせ、一定距離まで来ると2人を阻む障害を破壊する術式が刻まれてるんだ」


 咒装『番の勾玉』。ある夫婦が身につけ、お互いの依代とし遠見の術式の媒介に使ったものが咒装化したと言われている。


 久遠の言う通り片割れ同士は繋がっており、常に位置を把握出来る。そして最も近づいた瞬間陽力を蜂起させ、2人が障害とみなした物を消し去るのだ。


 2つの勾玉は1つとなり陰陽図を形作った。術式を使った後は1日程使えなくなる休眠状態だ。


「良かった……そうだ、怪我治さないと……!」

「いや、大丈夫。それより奴は察しがいい。直ぐにここから出よう」

「う、うん……!」


 長久の提案を承諾する久遠。響達も同じ事を考えていたので異論は無かった。


 長久に肩を貸す久遠を中心に響ら4人で護衛する。これにより前後左右をカバーした布陣だ。空が薄い陽力の波を地面から放つ。それにぶつかったものを判別し索敵するのが索敵術。


 所謂レーダーと同じ要領である。


「空、周りはどうだ?」

「大丈夫、何も反応無いよ!」

「よし、行くぞ!」


 異常は無いと見て一同は来た道を戻る。だがそこに、居ないはずの存在が居た。


「どこへ行く?」

「「「っ!?」」」


 その場の全員が硬直する。目の前には2mはある巨躯とトゲトゲしい白い長髪、半裸の袴の男が待ち構えていたのだった。

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