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第130話 夏季休暇は海辺で-弐-

 時刻は12時を回る頃。引き続き天陽院一同は海を堪能していた。


「ふぅ……やっぱ暑いな……」


 響は大人組と交代してパラソルの陰で涼んでいた。視線の先では、また臣也が何か失礼な事を言ったのか文香に締められている。それを秋の呆れた様子が見える。


「ははっ、元気だなぁ……っと、飲み物。あ、もうねぇや」


 クーラーボックスを開けるが、その中には保冷剤があるだけで何も入ってなかった。昼前からかなりの暑さだったのでこうなるのも納得する響。


「海から出るとあっつ〜い!」

「そうだね……喉も乾いちゃうよぉ」


 ちょうど陽那と空が戻ってきたようだ。しかし生憎と飲み物は切れてしまっている。その事を響は2人に伝える。


「ええ〜!そうなの!?」

「あらら……」

「ちょうど買いに行こうと考えてたとこだ。陽那達は荷物番を……」

「ううん、寧ろあたしが行くよ!来た時に準備して貰ったしね!」


 早めに着替えてスペースを取っていた男子達。だから今度は陽那達が……という事だ。


「私も付き添うよ。響くんは何飲みたい?」

「じゃあコーラで」

「いつものね♪じゃあ待ってて?」


 陽那と空はクーラーボックスを携え飲料を買いに行くのだった。


(大丈夫……だよな。ちっさい子のお使いじゃあるまいし……)


 響は2人の遠ざかる背を見てやや心配になる。すると、すぐに案の定ガラの悪そうな男達に声を掛けられていた。


「君達水着似合ってるね。どっから来たの?」

「ちょうどバーベキューしてるから来ない?2人とも可愛いからサービスしちゃうよ?」

「いやぁ〜あたしら連れと来ててぇ?そういうのはちょっと困るっていうか……」

「えと、すみません。飲み物買いに行かないとなので……」

「飲み物めっちゃ買ってるからあげるよ?なんならオイルマッサージもサービスしたりして!ガハハ!」

「ギャハハッ!攻めすぎだろそれは!」


 やんわりと断る2人に男達は食い下がる。流石に陽力で一般人をぶっ飛ばす訳にも行かず陽那達は困った様子だ。


(はあ……俺が行けば良かった……)


 響は立ち上がり、日陰から出る。そこにちょうど秋が戻ってきた。


「どこか行くのか?」

「ああ、ちょうど良かった。荷物見ててくれ」

「分かった」


 秋に荷物番を任せて響は陽那達の元へ向かう。すると、そんな響に陽那が気が付いたようだ。大きく手を振り、響を手招きする。


 響は威嚇するように眉間に皺を寄せながらそこに行く響。すると突如、陽那が響の右腕に抱きついた。


「っ!?」

「この人、あたしらの彼氏なんで〜す♪」


(はあっ!?)


 突然の事に響は困惑する。そして柔らかい陽那の胸の感触に心臓が飛び出そうになる。


「え?マジ?」

「え、えと……そうなんです!ね?響くん?」


 響と同じよう困惑する男達。それを横目に、空は陽那のように響の空いた左腕に手を絡め体を寄せる。


(空もかよ!)


 空の豊満な胸の感触が伝わり更に心臓はビートを刻む。


「ほーら、合わせて合わせて?」

「お、おう……!」


 耳元で陽那に囁かれる響。そのくすぐったさに耐えつつ響は2人に話を合わせる。


「そうなんスよ。皆さんは俺の……彼女らになんか御用で?」

「あ、いや……」


 眉間に皺を寄せて睨む響に、リーダーっぽい金髪の獣人の男は狼狽える。その後ろでは他の者達が何やら話し合っている。


「やっべ、彼氏持ちかよ……」

「てか彼女2人?こんな美人がマジで?」

「あれだよあれ、貴族関係の!一夫多妻制ってやつ!」

「尚更やべぇよバカ!」


 その会話は金髪のリーダーにも聞こえているようで、だんだん顔が青ざめていくのが分かる。そして堪らず踵を返す。


「失礼しましたー!」

「あ、おい!置いてくなよ!すみませんっした!」


 リーダーに続いて他の男達も蜘蛛の子を散らすようにどこかへ去っていった。


「行ったか……大事にならなくて良かった」

「そうだね〜……あっ!響くんありがと♪」

「私からもありがとう」

「お、おう……」


 響の腕から離れる2人。男としては夢のような状態だったが、同時に心臓が口から出そうな程緊張した響。そこから解放されてホッと胸を撫で下ろす。


「また絡まれたら面倒だし、秋に荷物番して貰ったから付いてくよ」

「ほんと?ありがとう!いや〜手が出そうなのめっちゃ我慢したから助かる〜」

「うんうん、陽力出しそうになっちゃった……」

「それそれ!去勢キック出るとこだった!」

「それはまずいよ陽那ちゃん!気持ちは分かるけど」

「そ、そうか……まあ、穏便に済んで良かったよ」


 2人の豪胆さと1歩間違った未来を想像すると男達に少し同情する響であった。


 そんなこんなで平和に1日を過ごすのだった。




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