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第125話 響VS如羅戯 本気

 響の一撃により青い鮮血を吹き出す如羅戯。だがこれで終わりでは無い。


 如羅戯の傷口が蠢き、塞がっていく。


「っ!」


(再生か!)


 響の追撃を躱す如羅戯。距離を置き、全ての傷が完全に傷を再生してしまう。


「まさか君如きに使うとはね……でも、僕を倒せる、自分にはチャンスがある……なんて思わないでね響」

「どういう事だよ?」


 眉をひそめる響に如羅戯はニヤけながら述べる。


「僕はまだ5割も力を出してないんだから!」


 そう言って陰力を滾らせる如羅戯。空クラスの量と出力を見せる。


「ちゃんと僕を見ててね。そうじゃないと……すぐ終わっちゃうよ?」

「っ!……がっ!」


 瞬間、如羅戯の姿が消えた。響は横から衝撃を受けて吹き飛ぶ。


(速い……!蹴られたのか!?)


 響は縮地で勢いを殺す。そこに黒い残像が迫る。響は反射的に刀を構える。するとそこに衝撃が走る。


 如羅戯が高速で斬りかかったのだ。


「『火糸(ほのいと)』!」


 響は鍔迫り合いをしながら指から糸を出す。だがそれは拘束するより前に陰力に阻まれてしまった。


「小細工は効かないよ?」


 響の脇腹に蹴りが入る。骨が砕ける音を鳴らしながら響は吹き飛ばされた。そのまま大岩にぶつかる。


「クソ……!」


(これが如羅戯の本気……!)


「まだ8割だよ」


 如羅戯が心の内を見透かしたように言う。そして杭を放つ。その速度も先程より大幅に速くなってる。


「『焔大太刀(ほむらおおだち)』!」


 巨大な炎の刃でそれらを迎撃する響。だがそこに回り込んだ如羅戯が接近する。


「隙あり」

「っ!ぐぅっ!」


 黒刀による斬撃が入る。左肩口から血が吹き出す。痛みに顔を(しか)めながら刀印を結び、『螺旋焔弾(らせんえんだん)』を放つ。


「おっと」


 如羅戯はそれを容易く弾く。そして刀を振り下ろし、受け止めた響をまた吹き飛ばす。


「ガハッ!はあっ……!はあっ……!」

「息、上がってるね?もう限界?」


 如羅戯は血を吐く響に煽るように言う。


「誰が!」


 劣勢だが、響の闘志は消えていない。崩れた前髪をかきあげ気合いを入れ直し、刀に炎を込めて構える。それに如羅戯はまたヘラヘラと見下すような顔をする。


「次は防げるかな〜?『蛇紋刀岩(じゃもんとうがん)』一番、二番」


 如羅戯は刀印を結び陰力を練る。そしてその左右に、巨大な蛇の紋様が刻まれた刃が2つ現れる。


「『天鶏(てんけい)』!」


 対する響は同じように刀印を結び、巨大な鶏の式神を召喚した。


「へぇ?知らない術だね?」

「まだだぜ」


『天鶏』の体が輝く。するとそれは響の刀に宿り、赤い刃と貸した。


咒装変化(じゅそうへんげ)鳴焔天刃(めいえんてんじん)』」

「式神昇華か……」


 式神昇華……式神に更に術式を与え強化する術式。響は1週間で式神術を向上させていた。


「お手並み拝見だね」


 手を上げ、狙いを済ませて振り下ろす如羅戯。それを合図に2つの巨大な刃は響目掛けて襲いかかる。


「『焔大太刀(ほむらおおだち)』!」


 対する響は巨大な刃を形成する。その勢いは天鶏を纏う前より数段階違う。


 互いの刃が激しくぶつかり合う。


「きゃあっ!」


 その衝撃は結界に居る空にも伝わる程だ。


(響くん……!)


 空は手を握り、結界の中で響の勝利を祈るのだった。



「うおおおおっ!」

「くっ……!やるね……でも」


 予想以上の力に眉を動かす如羅戯。だがすぐに口角を上げる。既に準備は整っているから。


 更に陰力を練る如羅戯。


「連なり、重なり、首を断つ。『蛇紋刀岩・首切り(ばさみ)』!急急如律令!」


 刀印と詠唱によって2つの刃は1つとなり、巨大な鋏に変化した。


 連鎖術式。性質の同じ術式を連続使用するという段階を踏む事で、連鎖の最後に1つの強力な術を発動する高等技術だ。


(どういう訳か、今の響に前みたいな力は無い!ならば!)


「真っ二つになっちゃいなぁ!?」

「ぐ、うぅ……!」


 徐々に狭まる鋏。このままでは如羅戯の望む通りに真っ二つだ。響は炎を更に供給し、渾身の力を込めて刃を振るう。


「うおおおおおおっ!」


 その結果……。


「はあっ!はあっ!はあっ!」


 首切り鋏は砕かれ、炎の刃と相殺したのだった。


「まさか破るなんて……」


 如羅戯は驚嘆の表情を浮かべる。だがしかし。


「でも僕の勝ちだね」


 如羅戯は確信を持って宣言する。根拠はその瞳に映る響の姿。


 全身から汗を吹き出し、大きく息を吐く響。肩口からは血が流れ、脇腹は骨が折れて内蔵に突き刺さっている。その身は疲労と傷による苦痛に満ちていた。そして……。


(ほむら)……」


 刀を構え、攻勢に出ようとする。しかしその手に握る『鳴焔天刃』は光となって消え、ただの刀に戻る。


 ダメージにより、高度な術式である咒装変化が維持できなくなったのだ。そして陽力そのものも限界に近づいていた。


(四神との戦闘……雑魚だが複数の『影』との戦闘……そして今だ。節約はしてきたがもう……!)


 今の響は度重なる連戦で正に満身創痍だった。


「もう限界?僕はまだこーんなに!陰力があるのになぁ〜?」


 陰力を見せびらかすように全身に纏う如羅戯。


「これも響の母親のお陰だよ。こんなにも僕に力をくれたんだから……君と、その母親はもう僕の為に生まれてきたようなもんだよね♪」

「テメェっ!」


 如羅戯の言葉に神経を逆撫でされ激昂する響。陽力を振り絞り、『焔天(えんてん)』で刀を強化して斬りかかる。如羅戯は棒立ちでそれを受ける。


 その刃は如羅戯に届かず、膨大な陰力に阻まれる。疲労が蓄積すれば術の出力も落ちるのだ。


「ね?こんなにも力をくれたんだよ?」


 如羅戯はそのまま響を殴り飛ばした。響は硬い地面に倒れ込む。


(クソ……!)


 膨大な陰陽力はそれだけで下手な術以上の力を持つ。その絶望的な差をありありと見せつけられるのだった。


「アハハ!まあよくやった方じゃない?ゴミにしてはさぁ!アッハハハ♪」


 如羅戯はそれはもう楽しげに高笑いを上げる。


(それ、でも……!)


 だが、まだ響は諦めていない。


「んあ?」


 立ち上がった響に如羅戯の高笑いが止まる。


「俺は理不尽に誰かを傷つける奴が許せねぇ……例えそれが……どんなに強い相手でも!」


 己の信念を胸に、響は仇敵へ向かって刀を構えるのだった。戦いはまだ終わらない。


「そんな姿で言っても説得力無いよ。ほら、もう炎が解けてる。刀を強化する術も使えないでしょ?」


 如羅戯の言う通り、響の刀は陽力を纏っているだけだ。それでも。


「それでも、俺はお前を倒す!」


 力強く言ってのける響。強がりだ……そう如羅戯は考えた。実際そう言われても仕方がない現状。


 だが、それは変わる。響の想いによって。


「っ!これは……!」

「それは……!?」


 響と如羅戯が同時に目を見開く。なぜなら、響の握る刀。それは突然炎を灯したからだ。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

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