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第118話 VS青龍

 響が目にしたのは、半壊する神社。


 その前の荒れた参道の至る所に負傷者が転がっており、その中にはもう動いていない者もいる。そして、奥でまだ戦っている者達が半分居る。


 響はそこに見知った顔を見て駆け寄っていく。それに続いて悠達小隊の人間も走っていくのだった。


「臣也先輩!」

「響! ……と、悠先生に白山 獅郎!?」

「助け来たぞ! 土の小隊は下がれ! 後は火・金合同小隊に任せろ!」

「助かり、ます……」


 火と金の陰陽師達はそれぞれ前に出て青龍の攻撃を防ぐ。臣也を含め、まだ戦えている土の陰陽師達もボロボロであった。


 最も救援が遅れた上に……金の小隊は悠と獅郎という突出した実力者が居たから不利な朱雀相手に何とかなっていたが、こちらはそうでは無かった。


 位階でも第(ろく)位が7人居るだけ。一応それより上の陰陽師は居るが、大門の守りに着いているのでそこは動かせなかった。


 響は臣也を抱えて小門付近まで下がる。


「悪いな……あんま役に立ってなくて……」

「そんな事ないです! 兎に角臣也先輩は治療を! 必ず俺達で青龍を倒します……!」

「ああ、任せた」


 響は決意を示し、抜刀して駆けていった。臣也はそれを見送る。


「ほら、治療するから診せなさい」

「文香……」


 そこに文香が訪れ、臣也の傷を癒していく。


「……あのさ、やっぱダメダメだわ俺……」


 普段おちゃらけている臣也だが、今日ばかりはしおらしくなり、口からはつい弱音が出てくる。


「ええ、そうね。ダメダメよ」

「えぇっ!?」


 それに文香はあっさりと肯定する。思わず臣也は声を発する。


「もっとなんか……寄り添うとかさ!?」

「いやよ。めんどくさい」

「酷い! って、いてて!」


 興奮する臣也に傷の痛みが襲う。それに文香は呆れた溜息を着いた。


「全く……大人しくしなさいな。それに……ダメでもすぐ切り替えるのがアンタの長所でしょ?」

「え?」


 急に言動が変わった文香に臣也は目を丸くする。


「ナンパでも陰陽術でもなんでも、ダメ元で挑んで案の定な結果でもアンタはめげずにやって来た。なら、今もそうしなさい。それは間違いなくアンタの強さだもの」


 文香はずっと見てきた。同級生として臣也を。その中でやや短慮で配慮の欠ける悪い所も、諦めが悪く挑戦を止めない良い所も知ってきた。だから、今の臣也に激励の言葉をかけられるのは文香だけだ。


「文香……ああ、そうだな。それが……それこそが俺だもんな!」


 文香の言葉に励まされ、臣也は気力を取り戻す。文香もその様子に微笑む。


「全快までは無理だけど、戦えるぐらいには治すわ。それから響くん達を助けるわよ」

「おう!」


(俺が行くまで頼んだぜ……!)


 臣也は自分の代わりに戦う者達の背中を見つめるのだった。



 前線では青龍が空を駆け、地上の陰陽師へ息吹を吐き出す。それによりタダでさえ崩壊した建物は更に壊れ、何人もの人が衝撃で吹き飛んでいく。


 多くの陰陽師は地上から術を放つか防御体勢を取るしか無かった。


 しかし、土煙からは何人かの人影が飛び出していく。


「『焔旋刃(えんせんじん)』!」


 響は空中で刃を振るい、伸ばした炎の刃で青龍の鱗に覆われた体を斬り裂く。


「『獅子心剣(しししんけん)白夜(びゃくや)』!」


 怯んだ所に獅郎が突撃、その頭の角を白き大剣にて斬り落とす。


「『金剛護剣(こんごうごけん)』!」


 そして背後から悠が急襲。巨大化させた刃で鱗ごとその身にX字の傷を付ける。


「ギャオオオオオッ!」


 たまらず悲鳴を上げる青龍。そこに炎や金属弾が放たれる。それを幾つか受けながらも大きく体を捩り、尻尾から風を飛ばして相殺した。


 響、獅郎、悠もその風で飛ばされ、一度地上に降り立つ。


「やっぱずっと飛べるのずりぃ!」

「だが確実に削れているぞ。空中での攻撃も見事だ……流石、俺のライバルだな」

「なんで後方ライバル面してんだよ」

「いいや、全面的にライバルだ」


(ツッコんでも無駄だこりゃ)


 響は事ある毎に距離が近い獅郎の言動はもう諦める事にした。


「それはまあいいや。でも確かにダメージ入ってるな」

「やっぱり相性が大事だね。特に四神はその身が五行で出来てるから余計にだ」


 響の言葉に悠が呟く。


 本来、式神は無元素術式。 だが四神のような五行の力が強い存在はそれそのものが五行の相性を受ける事になる。


 だから、式神が術を吐き出さなくとも、その体1つで相手に有利を取れる事もあれば、逆に不利になる事もある。


「このまま俺らが接近戦して、地上からの援護を効果的に当てる。いいな?」

「はい!」

「無論だ!」


 悠の指示に奮い立つ響と獅郎。また攻撃に出る。響と悠はビルを駆け上がり、獅郎は陽力を放出して飛ぶ。


 それぞれで青龍を囲う。


「ギャオオオオッ!」


 青龍は咆哮と共に息吹を放出する。狙いは響と悠。響は縮地で、悠は足元から迫り上がる盾を利用して飛び越えるように躱す。


「そろそろ終わりにしてやる!」


 響が連続で縮地を発動し、擬似的な空中跳躍で青龍に接近する。 その刀には炎が瞬く間に供給され、巨大な刃と化していた。


「『焔大太刀(ほむらおおだち)』! 急急如律令!」


 その刃は青龍の喉元を焼き切る。青龍は呻き、その身を硬直させる。


「ナイスだ響! 『金剛護剣』!」


 悠は青龍の頭上を取り、手にした8本の刃を投擲する。それは巨大な刃に変化し、青龍を挟み込むように左右から迫る。


 青龍は今しがたの響の攻撃で動けない。故にその頭に刃は全て突き刺さる。すかさず刀印を結ぶ悠。


「連鎖術式……『金剛攻牙(こんごうこうが)』急急如律令」


 悠の言霊を受けた刃は輝き、4本1組ずつ刃が融合し、巨大な2本の牙の刃になった。


 それは当然、突き刺さった傷口を広げて頭部を貫く。


「ガギャァッ!」


 だがまだだ。それだけでは終わらない。青龍はその鋭い爪に風を纏わせ術を準備する。


「させるとでも?」


 しかし、それは突撃してきた獅郎の大剣により腕を斬り落とされて発動を遮られる。


 殆ど満身創痍の青龍。普通の式神ならとうに撃破されてる傷で生きているのは最高位の式神……四神であるから。その意地を見せるのはここからだ。


「ギュゥゥガァァァッ!」


 その長い尾に力が集中する。少し前に3人を吹き飛ばした術。しかし、今回はそれ以上の風を纏っている。


(まずい! 範囲がタダでさえ広いのに威力も上がってる!)


 響の危惧を悠と獅郎も感じている。故に全速で距離を離すが……恐らく間に合わないだろう。


 だが青龍は忘れている。青龍を討ち果たさんとするのはその3人だけじゃないと言う事を。


「『呪操岩王像(じゅそうがんおうぞう)』! 急急如律令!」


 青龍達が戦う真下。そこに、臣也の操る巨大な像が現れる。


「更に! 『岩王剣』!」


 追加で術を発動する臣也。地面が盛り上がり、像の身の丈程ある大剣が形作られる。それを手に取り、両手でしっかりと構えた。


「炎よ!」


 そこに文香の炎が絡みつく。やがて一体化し、巨大な灼熱の岩剣と化した。


「ありがとよ文香!」

「行きなさい臣也!」


 土色の刃に赤い紋様が入ったそれを大きく振り上げ、像は臣也の動きに習い跳躍する。それは空中の青龍へと迫る。


「とおぉりゃあぁぁぁぁ!」


 そして空中で振るわれる剣。それは響が焼き切った喉元の傷と寸分違わず接触し、見事青龍の首を断ってしまった。


 青龍が木の力を持っていようとも、それを上回る力なら土の術でも相性を覆す相侮(そうぶ)を引き起こす。


 これも全て響達や他の陰陽師が削り、最後に臣也と文香が力を合わせた結果だ。


 首を跳ねられた青龍は地面へと墜つ。そして形を光の粒子へと綻ばせ、消えていった。こうして青龍は討伐され、同時に全ての四神の討伐が達成されるのだった。



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