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第114話 異変

 影世界の大門。そこから半径十数kmに位置する四方の神社は敵の手に落ちている。右回りに北の玄武、東の青龍、南の朱雀、西の白虎が位置する。


 それらを撃破する為、陰陽師達は各五行に別れて再編され、それぞれ四神に有利な五行の部隊が向かわされている。


『影』の軍勢もまだ現れると予想し、大門の守りの為にも四神撃破には半数しか参加出来ない。それを4分割するので更に一箇所に割ける戦力は限られてしまう。


 大門のある龍鬼神社の司令室では、土御門(つちみかど)晴義(はるよし)は苦心していた。


(動き出した暗翳(あんえい)十二将とその配下も一筋縄では行くまい。天陽十二将と各家の精鋭、そして……最強を向かわせたが五分と言った所であろう)


 現状打てる手は打った。後は戦況に合わせ臨機応変に指示を出すしかない。それでも、司令とは言え戦うのを見守る状況は歯痒いのだった。


 だが同時に、現場で戦う陰陽師を信じている。その研鑽してきた日々を、培った力を信じている。


来朱(くるす)緋苑(ひえん)……陰陽師の総力を舐めるなよ?」


 晴義は同じ盤面を動かす相手へ不敵な念を送るのだった。




 響、文香、秋、空は木・火陰陽師合同小隊と合流し、西の神社に陣取る白虎を狙う。最も歳を重ねている30代くらいの男が小隊長として指揮を執る。


「知っての通り白虎は五行の金!木の者は前線に出ず、火の者を強化する事や援護攻撃に専念しろ!」


 金の五行を持つ白虎に木の五行を持つ者相剋(そうこく)により不利。故に、あくまで支援に徹するのが得策だ。


「火の者は前線での攻撃はもちろん、木の者への被害を防ぐ事も頭に入れて立ち回れ!以上!号令を待て!」


 響達は警戒しつつ、他の対四神部隊が配置に着くまで待機する。


 やがて準備が整った旨が伝わり、間を置かずに同時攻撃の号令が送られた。


「行くぞ!」

「「「おう!」」」


 陰陽師達が慌ただしく動き、白虎の入った繭を取り囲む。


「火の者は火力準備!木の者は担当の火の者の術を強化しろ!」


 陰陽師は指示の元、木や木の葉、風で他の陰陽師の術を強化する。空は響を、秋は文香を強化する。


 火の術を構えた陰陽師達は、より一層強まった術を準備する。響もまた、巨大な炎を準備する。


「放てぇ!」

「『焔大太刀(ほむらおおだち)』!」

「『燎原(りょうげん)』!」


 号令と共に各々術名を叫び、一斉に放たれる。それは360度から白虎の繭を襲う。


 衝撃で繭に穴が開き、残った部分が激しく燃える。そして中から……『玄武(げんぶ)』が出てきた。


 想定していた白虎では無い。


「なっ!何故玄武が!?」

「っ!下がって!」


 狼狽える小隊長と陰陽師達。響が玄武の動きに気が付き叫ぶ。


 すると、玄武の甲羅から水が生まれ、小隊へ攻撃が放たれる。それは瞬く間に皆を飲み込んでしまった。


 響と空は高い建物の上に着地した。


「くっ!大丈夫か空!」

「だ、大丈夫……!響くんが抱えてくれたから怪我しなかったよ」


 響は空を抱え、縮地を発動して上空に退避した。


「秋くんありがとう。助かったわ」

「いえ、構いません」


 秋も『瞬雷憑依』を発動し、文香を抱えて退避していた。


「他の皆は……」


 響は下を眺める。


 水が流れきった時、そこには半分程になった陰陽師達がいた。残り半分は流されてしまっただろう。


 残っていたのは五行が木の陰陽師。各々木の術を盾にして凌いだ。


 前線の残っている火の陰陽師は天陽学園の者が大半。火の術ではなく、結界を盾のようにして防いでいた。


「響流結界盾術……!」

「覚えといて良かったぜ……!」


 響が教えた術が彼らの命を救ったのだ。


「良かった……何とか立て直さねぇと!」


 響は安心すると同時に次を考える。他の神社でも同様に、不足の事態が起きた事で対応が迫られるのだった。



 影世界の空を赤い鳥の式神に乗って進む緋苑。緋苑は遠目に戦場を見ていた。


「危ねぇ危ねぇ……霊脈の力を使って四神の配置を入れ変えて助かったぜ」


 緋苑は陰陽師達が五行的に有利な相手をぶつけに来ると踏んでいた。故に、霊脈のリソースを使った転移で式神の配置を入れ替える術を準備していたのだ。


 図にすると以下の通り。



 これの四神を……


        土→北玄武

 木、火→西白虎     金→東青龍

        水→南朱雀


        ↓


        土→北青龍

 木、火→西玄武     金→東朱雀

        水→南白虎


 このように左回りにズラし、五行の相性が悪くなるように相手を変えたのだ。


「ま、代わりに土地を弄って大門を破壊するのは結構遅れる事になるが……倒されるよりマシだ。四神は重要な楔だからな」


 本来の狙いは遠ざかったものの、有利な状況には変わりがない。


「さあ、どう来る?」


 緋苑は不敵に笑うのだった。



「ガァァァッ!」


 玄武が叫び、また水で攻撃する。それらを各々防ぐが、流石に押されている。


 更に攻撃を加えようとする玄武の顔に、どこからか術が直撃した。


「あれは……天陽院の!」


 小隊長が建物の上から援護した4人に視線を向ける。


「小隊長!引きつけるので、その間に体勢を整えて下さい!」

「わ、分かった!」


 響の言葉に小隊長は頷き、陰陽師達と後退していく。


「『螺旋焔弾(らせんえんだん)』!」

「『風弾』!」

「『火波(ほなみ)』!」

「『雷華(らいか)』!」


 響、空、文香、秋は射程のある攻撃で玄武の注意を引く。傷は浅いものの、確実に玄武は苛立つ。


 そこに尻尾の蛇を伸ばす玄武。建物は崩れるが、響達は一歩早く飛び退いて無事だった。


 だがそれに更に苛立った玄武は4人を追いかける為巨体を動かす。


「そうだ!着いてこい!」


 響と空は散開し、玄武へ時たま攻撃を当てつつ逃げる。4人はバラバラにビル群の上を飛ぶように移動し、玄武は建物を薙ぎ倒し、踏み潰しながら追いかけていく。


 玄武の地鳴りのような足音、コンクリートの塊が砕ける音、それに貼られたガラスが割れるけたたましい音。そして玄武の咆哮が辺りに響く。


「怖ぇ怖ぇ!」


 響はそう言いつつも飛び回り、ビルの窓を割って中を駆け抜ける。


「グオオオオオッ!」


 玄武はそんな響を追い、ビルに激突。そのまま力任せに歩を進めてビル群の一角をドミノ倒しのように倒壊させる。


 瓦礫と土煙が舞う中、ビルの窓を突き破り……響は空中に躍り出る。そこに玄武の尻尾の蛇が迫る。


 鈍重な本体と違い機敏に動くそれは非常に厄介だ。


 響は空中で頭を地に向けながらも居合のような型を構え、刀印で刃を撫でて刀を振り抜く。


「『焔旋刃(えんせんじん)』!急急如律令!」


 炎の刃が高速で伸び、蛇に直撃、その軌道を逸らす。


 響は縮地で姿勢制御を行い、大通りに飛び出した。


 それを追いかけてビルをなぎ倒しながら現れる玄武本体。巨大な図体は大通りの三車線をゆうに塞ぐ大きさだ。


「全身石頭みてぇに硬ぇ亀だな!」


 響は挑発するように愚痴る。


(小隊の援護を待つのもいいけど……白虎の代わりに玄武が現れたって事は、他も別の式神を相手にしてるよな?ならさっさと倒して戦力を集めるのがベストだ。まだまだ後があるだろうからな……)


 冷静な響の頭は他の戦場も見据える。そしてまだ姿を表さない宿敵の事も脳裏に過ぎる。


 響ら陰陽師と緋苑や『影』との戦いは激化する一方であった。



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