51話 ネネの生きる意味
次で本当に4章最後です。
無計画に終わる宣言はしない方が良いと学びました。
一方その頃
ヴィラ達はヤマを探す為に更に奥、最奥と思われる部屋に向かっていた。
「ここが最深部みたいですね…」
屋敷の形状的に、恐らくここが一番奥になってるみたいです。
つまりここにヤマさんが居る可能性はかなり高いはすです!
「ここにも居なかったら外か各部屋を探すしかないにゃ」
「ですね…では、行きましょう!」
いざ!突入です!
そこは、僅かな家具が置いてあるだけの無機質な部屋。
ヤマさんは愚か、人も居ません。
「誰も居ませんね…」
「こりゃ全部屋探索コースかもしれんにゃ…んにゃ?あそこのベッドに何かあるにゃ」
確かに何か見えますね…
あれは…人、ですかね?
もしかしてまた魅了されてる人が…
「…てかあれヤマじゃないかにゃ?」
「え!?」
確かにあれは…間違いなくヤマさんです!
やっと…やっと見つけました!
本当にお待たせしました!私達が迎えに来ましたよ!
私はその手を握りました!
でも握ったその手は
恐ろしい程に冷たかった。
「…え?な、何でこんなに冷たいんですか…?」
「…さっきまで冷房が点いてたのかもしれないにゃ。ヤマは気持ちよくて寝てるだけだにゃ」
頭では何となく分かってます。いえ、それでも分かりたくありません。
だから私達は寝てるだけなんだと必死に思い込みました。
「ヤマ、起きるにゃ。一緒に帰るんだにゃ」
ネネさんも寝てる前提と考えてるのか、ヤマさんの事を揺すっています。
そうですよ…ヤマさんは寝てるだけです…ちょっと疲れてるだけ。
…そうですよね?
「…起きる…にゃ…ねぼすけ…は…ネネ…嫌い…だ…にゃ…」
ネネさんの声が少しずつ涙を含み始めました…
まるで現実を見せられてるような…そんな感じです。
「何でなんだにゃあ!!何でヤマばっかりこんな目にあうんだにゃ!!ヤマが何をしたって言うんだにゃ!!」
うそ…うそ、です…?
ヤマさんが…死んだ…?
こんな…こんなのって…
今までずっと私達の事を引っ張ってくれたのに…
まだ私…ヤマさんに何も返せてないのに…
「…天国でヤマを一人ぼっちにはさせないにゃ。ネネも今からそっちに行くにゃ」
っ!まさか…!
これ以上…これ以上失ってたまるもんですか!!
「駄目です!!」
「にゃっ…離せにゃあああ!!ネネはヤマの所に行くんだにゃあああ!!」
凄い力…!流石は獣人と言った所ですか…!
私は羽交い締めで暴れるネネさんを必死に押さえ込みますが、完全には抑えることはできず、暴れた衝撃で本棚が倒れたり、鏡が割れたりしました。
「落ち着いて下さい!!ネネさんが後を追った所でヤマさんは喜びません!!」
「そんなのお前の勝手な妄想だにゃあああ!!ヤマだってネネと一緒の方が嬉しいに決まってるにゃあああ!!」
…確かに私がヤマさんの気持ちを勝手に代弁するのは失礼かもしれません。
でも!ヤマさんはこれでネネさんと会っても絶対喜ばないです!!
「ネネさんのやろうとしてる事は、全く意味がありません!!そんなことをしたって、ネネさんもヤマさんも…誰も…救われないです……」
「……」
ネネさんだって伊達にヤマさんと長く居るわけではありません。
頭では分かってるはずです。
でも…それと感情は別問題でした。
「違う…違うにゃ!!ネネはあんたなんかの指図は受けないにゃ!!ネネはネネの意思で、ヤマの所に行くんだにゃあ!!!」
「きゃあっ!」
「ヤマ…待ってろにゃ…ヤマにはネネが居ないとダメなんだにゃ…その逆も然りにゃ…ネネにもヤマが必要なんだにゃ…!」
割れた鏡を!?
マズイです…!そんなもの使っては…!
「ヤマの為にやらなきゃ、やらなきゃだめなんだにゃあああああああ!!!」
「そこまでだわん」
騒ぎを聞き付けただろうマオさんが、振り上げた手を掴んでいました。
「駄犬…!またネネの邪魔するつもりかにゃ!?」
「いくらでも邪魔するわん。わんはネネちゃんに死んで欲しくないからだわん」
「離せにゃ…!!ネネはヤマの所に!!ヤマの所に行かなきゃ駄目なんだにゃ!!」
ネネさんは引き剥がそうと抵抗してますが、びくともしません。
そんなネネさんを見てマオさんは…
バキッ!!
頬を少し強めに殴った。
「少し頭を冷やせわん。本当にヤマおにーさんは後を追ってきてくれる事を望んでるのかわん?」
「…んな事分かってるにゃ!!ヤマの後を追っても喜ばない事も本当は分かってるにゃ!!じゃあネネはどうすれば良いんだにゃ!!
…元々ネネはヤマに付いてけば面白そうだから一緒に居たにゃ。そんなヤマが居なくなったら…ネネは何を持って生きてけば良いんだにゃ……」
「…ネネちゃん」
ぺたんと座ったネネさんは、絶望したかの様に眼に光を灯さず、静かに泣いています。
そんな彼女を見かねたのか、今度はシオンさんがネネさんに近付いて来ました。
「シオン…」
「ネネさんがすべき事は…ヤマさんの所に行く事では無いです。
ヤマさんに胸張って会える。その日まで、生きる事です」
「にゃ…」
「形は違いますが、僕も姉さんを失って、一度は後を追う事も考えました。
でもそんな事をしても喜ばない、寧ろ悲しむ事は容易に想像がつきました。
だからこそ…この助けてくれた命を使って幸せになる。それが今の僕に出来ること、そう思います」
シオンさんからの説得で何とか落ち着きは取り戻したみたいですね。
でもまだ感情までは制御出来てない様で、眼にはかなりの涙が貯まっています。
「…ネネは…ネネは…」
「こんなぺったんこの胸で良ければ貸すわん。今は思いっきり泣いて良いんだわん」
マオさんは両手を広げて、ネネさんを迎え入れる構えを取りました。
普段ならネネさんは警戒したり、逆にマオさんが少し顔を赤らめたりしてましたが、今回はそんな素振りは一切ありません。
だからこそなのか、ネネさんは思い切り飛び付きました。
「にゃああああん!!!ヤマぁ…ヤマぁ…会いてえにゃぁ…何で死んじゃったんだにゃあ…」
「よしよし、今回はよく頑張ったわん。わんは絶対にネネちゃんの味方だから何かあれば何時でも…わう…?」
ネネさんはマオさんの胸でわんわんと泣いてしまいました。
あれ…?でも随分とマオさんの顔がネネさんの頭に密着してる様に見えるのですが…
「にゃ…?あんた何してるんだにゃ…?」
「わふうう…ネネちゃんの耳も耳裏も良い匂いだわん…こんな事する気は無かったのに、本能に逆らえないわん…」
「にゃあああああ!?!?気色悪い事してんじゃねぇにゃあああああ!!!!」
そんなマオさんは、ネネさんから思いっきりシバかれてましたが、それすら頬を赤くしていました。
…被虐思考でもあるのですかね?
それから私達はヤマさんをおんぶしてアユルに戻って来ました。
冷たくなったヤマさんをおんぶしてると、嫌でも現実を知らされてしまうので、ネネさんと交互に持つことで何とか気力を保てました。
マオさんは諸々の処理や報告があるので途中で別れ。
シオンさんとも途中で別れ、お姉さんのお墓を作るとの事。
勿論、私達もヤマさんの為にお墓は作る予定です。
本当は本職に任せるのが普通ですが、ヤマさんのお墓はどんなにお粗末様でも絶対に二人で作る。
そう決めました。
二人で出来る、最後の恩返しです。
色々と紆余曲折ありましたが、何とかお墓が完成しました。
棺桶にヤマさんを静かに寝かせ、遂に、本当に、最後のお別れです。
「今思えば、色々ありましたね…」
色々な所に行ったり
美味しい物を食べたり
多くの人と仲良くなったり
時にはちょっと危険な事もあり
一つ一つが私に取って、経験であり宝物です。
私、ヤマさんの事は一生、忘れません。
だから今は…ゆっくり休んで下さい。
「ネネさんは…良いのですか?最後のお別れをしなくても…」
「…ネネはいいにゃ」
………
「ネネさん」
「何だにゃ…」
「泣く事は恥ずかしい事では無いんですよ…?」
「にゃ…」
強がってる事がバレバレです。
その言葉を聞いた瞬間、ネネさんは貯まってた涙が溢れんばかりに泣き始めてしまいました。
「嫌にゃ…やっぱり嫌だにゃあああ!!ヤマと別れるなんて嫌だにゃあああ!!」
「ひっぐ…ひぐ…私だっで…私だっで嫌でずよ!!」
どうじで死んじゃっだんでずがぁ…!
まだまだ私達ばごれがらだっだのに…
私達は別れを惜しむ様に長く長く泣き続けました…
「ネネさん…そろそろ…ヤマさんをゆっくりさせてあげましょう…」
「にゃぅ…」
では本当に……お別れです……
「さようなら…」
天国でもどうか、お元気で…
私はゆっくりと蓋を閉め…
「ちょっと待つにゃ!!!」
「ネネさん…?」
「今動いたにゃ!!」
「えっと…何がですか?」
「ヤマだにゃ!!」
ヤマさんが…?
いやいや…そんな訳無いじゃないですか…
「ネネさん…お気持ちは分かりますが、死者が動くなど…」
「本当だにゃ!!確かにピクッてしてたにゃ!!」
こんなに冷たい体が動く筈が…
「え…?」
この暖かさは…?
さっきまでは氷の様に冷たかったはずですが…
今はまるで人肌の様な暖かさが…?
ピクッ
「ひゃっ!…え?今、動いて…?」
「うーん…」
…はへ?
「…ん?これどういう状況…?ヴィラにネネ…?てかこれ何だ?」
ヤマ…さん…?
うそ…
動いてる…?息をしてる…!?
生きてる!?
「「うわああああああん!!!」」
「のお!?」
ネネさんと二人で飛び掛かったから手作りの棺桶は壊れてしまいましたが、そんな事は知りません!!
私達は抱き付きながら大泣きしてしまいました。
「ヤマぁ…生きてるにゃ!動いてるにゃ!」
「良かったです…良かったです!私はまた仲間を失うかと…!」
「おい何だ何だ!急に二人共どうした!?」
「そうか…俺、死んでたのか…てか今何時だ?」
「今ですか?もう夜明けなので…恐らく朝5、6時だと思います」
今思うと夜の森を私達は抜けたんですよね。
普段なら正気の沙汰とは思えませんが、今回はマオさんのお陰で何とも無かったです。本当、感謝しかありません。
「大体8時間か…やっぱりそれくらいかかるか…」
「どうかしたのかにゃ?」
「あ、いや、こっちの話だ」
そういえば何気に徹夜ですね…
何だかどっと疲れが出てきました…
「安心したら何か眠くなってきた…にゃう…」
「すみません…私も少し疲れ…ぐぅ…」
「お、おい!二人共こんな所で寝るな!」
駄目です…体が動きません…
すみませんが、少し寝させて頂き…ます…ね…
「…ありがとな」
その言葉が聞こえる事は無く、私は意識を落としました。
最初はタイトルを『何度でも蘇るさ!』にしようとしましたが、ネタバレ&パクりが過ぎるのでボツです




