42話 傲慢少女と王様少年
今回の長編枠となります。
テンプレ的な要素が多くなってしまうかと思いますが、なるべく面白く出来るように頑張ります。
シホの事件から一日が経った。
あの時に何の話をしていのかヴィラにそれとなく聞いては見たが…
『いえ、そんな大層な話では無いですよ。近況報告みたいな物です』
らしい。
あまり話したくは無さそうだったから、無闇に首を突っ込むことは止めとこう。
さて、今日も今日とて依頼…では無く、酒場に向かっていた。
答えは簡単、今後の作戦会議だ。
誰かの家とかでやる手もあったが、どうせなら昼食も一緒に食べるのと、単純に酒場に行ってみたかったのもある。
勿論昼だから酒は飲まないし、そもそも嫌いだから飲めないが、別に酒場は酒だけが全てじゃ無いしな。
運が良ければ良い情報も仕入れられるかもしれないし、そんな打算的な考えを持って俺達は酒場に向かった。
「とりあえず当分の間は平和的に、静かに生活しよう」
「そうですね…魔法使いさんを探すのも一時中断にしますか?」
「んにゃ。それが一番にゃ」
良かった、二人とも肯定的だ。
もし『私は戦います!』とか言ったらどうしようかと思ったわ。
「とにかく変な正義感を持って首を突っ込むのは止めるにゃ」
………
…ん?俺に言ったのか?ヴィラもこっち見てるし…
なんだこの空気…
「いや、お前に言ってんだにゃ」
「え!わ、私ですか!?」
「あんたが変に首突っ込むと大抵録な事にならないにゃ。今回は大人しくしろにゃ」
おいおい、そんな事…
「うぅ…分かりました。なるべく大人しくしてますね…」
本人は心当たりがあるみたいだな。
「全体的に濃いと言うか…重い料理ですね…」
「そりゃ大抵は酒のお供だし、多少は仕方ないだろ」
でも結構脂っこいなぁ。
俺達には分からんけど、酒と飲むと美味しいんだろう。
そんな事を考えてると、隣の席が急に騒がしくなった。
「シオンのくせに、さっきからウザいのよ!」
「人生終わったクズの落ちこぼれが、マサシ君に何様のつもり!?」
「男の癖にナヨナヨして気持ち悪いしー!イライラするしー!ムカつくしー!!」
様々な格好をした女の子達が、一人の男の子に対して罵詈雑言を浴びせていた。
「感じ悪いな…」
「と、止めに…」
「止めるにゃ。あんたが絡むと余計にややこしくなるにゃ」
可哀想だが…俺達も己が大事だ。
本当に申し訳ないが、今回は無視して…
「ほら!あんたには床がお似合いよ!」
「ぐはっ…」
椅子を蹴り飛ばされて、シオンと呼ばれてた少年は床に叩き付けられた。
そのタイミングで遂にヴィラは我慢が出来なくなったらしく、助けるが為に立ち上がった。
「ちょっと!!貴女達何してるんですか!!」
「あいつまたやりやがったにゃ…」
「大丈夫ですか?」
「は、はい…大丈夫です…」
床に倒れ込んでるシオンを気遣う様にヴィラは寄り添っている。
見たところ大した怪我はしてないようだが、当然暴言に暴力をした三人をヴィラが許せるはずが無かった。
「誰か知らないけどさ~そんな奴ほっときなよ」
「だとしても!暴力を振るう事は許されません!」
「てかあんた何様?あたし達の問題に首突っ込まないでくれない?」
どちらも一歩も引かず、まさに一触即発。
話し合いで解決するレベルはとっくに越えている。さて、どう解決するか…
「まあまあ、みんな落ち着きなよ」
誰かが颯爽と酒場の中に入ってきた。
中々整った顔立ちに腰には二本の剣、更には黒いマントを纏っていた。
「マ、マサシ君!シオンがまた!」
「ほら、ここは俺に任せて、みんなは外で待っててよ。平和的に話を付けるからさ」
「…分かった。ちゃんとシオンにガツンと言っといてよ!」
マサシと呼ばれた男の鶴の一声と言わんばかりの勢いで、罵詈雑言を浴びせていた三人は素直に店の外に出ていった。
「それと…シオン君。君はまたみんなに迷惑をかけたんだね」
「迷惑じゃない!僕は姉さんとリリアンに…」
バキッ!!
マサシは笑顔を浮かべたまま拳をふるいシオンを思いっきり殴り飛ばした。
あまりに早すぎる暴力に俺を含め、ヴィラもネネも何が起きたか理解できず、マサシは乱れた服を直しながらシオンへと言った。
「いけない子だね、君は。リリアン達はもう君には興味無くて、俺の彼女達なんだ。何度教えれば理解出来るんだい?」
「だから…!それはお前が…」
「俺が?一体何をしたんだい?リリアン達は自分の意思で君を捨てて、俺の彼女になった。これのどこに俺の介入する余地があるんだ?」
ぜ、全員…?
え?もしかして公認三股?
「ぐっ…でも!僕は諦めない!リリアンも、姉さんも!絶対お前から取り戻してみせる!」
「まあ好きにすれば良いさ。あぁ、それとここの代金と迷惑料は君が払うんだよ」
この二人に何の因縁があるのかは分からない。
ただ様子を見るに、マサシがシオンに対して何かをやったのだろう。
それも恐らく女性関連の何かを…
「あの人最低ですね…」
「あの余裕がシホみたいでムカつくにゃ」
「それにしても…君、中々に可愛いね。どうだい?そんな所抜けて俺のパーティに入らないかい?」
シオンに興味を無くしたと思ったら、今度はヴィラに対して声をかけてきた。
それも勧誘の。
「お断りです!私にはもう仲間が居ますので!そんな所とか言わないで下さい!」
「そんな事言わないでよw絶対にこっちのパーティの方が楽しいって」
「何を根拠に!」
しつこく勧誘してくるも、ヴィラは一向に首を縦に振らない。
仮に誰とも組んでなくても、こんな暴力を振るう所を見たなら入ることはまず無いだろう。
ヴィラはそれほどまでに無意味な暴力は嫌いだからな。
「ほら、僕のパーティに入る気になったでしょ?」
「だから……………」
何だ…?
ヴィラは急に力無さげにぼーっとし始めるし、あの男の絶対的な自信は何なんだ?
「さ、言ってごらん。君はどうしたい?」
「…はい、私はヤマのパーティを抜けてマサシ君のパーティに…」
マサシ君!?パーティを抜ける!?
ヴィラがとんでもない事を口にし出したぞ!?
「おい!!しっかりしろにゃ!!」
見かねたネネはヴィラの頭に思いっきり踵落としを食らわせた。
「お゛ごぇっ!?……あれ?今私は何を…?」
「…っ!マズイ…!」
マサシは何故か慌てた様子で酒場の外に逃げ出した。
「なあ、今何をされたんだ?」
「分かりません…急に頭の中が書き換えられたと言いますか…憎悪を植え付けられそうになったと言いますか…うぅ…頭がジンジンします…」
「助かったんだから文句言うんじゃないにゃ」
本当に危なかった…
もう少し遅かったらヴィラもマサシの彼女にさせられていたかもしれなかったな。
それがたんこぶ一つで済んだなら安いもんだ。
「もしかして周りの女達もマサシが何かしたのかにゃ?」
「可能性は高そうだな」
「彼女の一人って言ってましたし、まさかあの女性達は全員彼の彼女…ですかね…?」
つまり、片っ端から女の子に催眠をかけて自分の彼女にしてるって事か?
字だけみたらかなりクズだな。
「ヤバい奴に目を付けられたかもしれんな…」
「てか、やっぱりあんたが首突っ込むと録な事にならないにゃ」
「じ、実感してます…本当にすみません…」
謝る姿は何時もより小さく見えた。
流石に今回ばかりは責任を感じてるんだろう。
「まあやっちまった物は仕方ない。これからどうするかを考えよう」
「ならこいつに聞けば早いにゃ」
ネネの指差す先には先程蹴り飛ばされていた、シオンと呼ばれてた少年が居た。




