41話 ただの一般人
「またこのパターンか…コーデリア、拘束具を」
「はいですわ~っっ!!」
手慣れた様子でシホに拘束具が次々とまとわり付いていく。
「こんな物だな…良し。こいつは俺が担ぐから、コーデリアは荷物を頼む」
「お任せですわ~っっ!!」
するとコーデリアさんは元々持っていた荷物に加え、先程使っていた杖も回収していく。
こちらもかなり手慣れているな。
「あの、その杖は一体…?」
「これは容姿を偽る相手に使うと本来の姿に戻してくれる魔道具だ。だから君達に使っても…」
杖が再び輝き、ヴィラとネネを包み込む…
「きゃっ…」
「眩しいにゃ…」
「このように何も起こらない」
便利な魔道具だな…
「あの…私達未だに状況が読み取れないのですが、今、アユルで何が起きてるのでしょう…?」
「『チート』とか『テンセー』とかも気になるにゃ」
そう言えばシホも似たような事言ってたよな…
「君達を探してたのはその件についてだ。とりあえず帰りながら説明しよう」
「まず君達は『転生者』と言う者を知っているか?」
「テンセーシャ?それ何にゃ?」
俺も聞いたこと無いな…
前に聞いた『テンセー』と関係があるのか?
「俺も全てを把握してる訳では無いが…いくつか共通してる特徴がある」
「共通、ですか?どんなのがあります?」
「まず見た目、捕らえた奴の9割は世間一般で言う整った顔や体つきをしていた。これは偶然とは言えんだろう」
つまりイケメンか美少女がほとんどって事か。
でもアユルにだってイケメンや美少女は普通に居るし、これだけで判断するのは難しいな。
「確かにシホさんも可愛らしい姿をしていましたが…」
「正体はこんなデブ女だにゃ」
「あの変わり様は俺も衝撃だった…」
人ってあんなに変われるんだと素直に感心した。
だがあの変化の大きさを見ると…
「もしかして転生者は見た目を変えれるんですか?」
「あぁ、少なくとも俺はそう見ている」
「変身系の魔法でしょうか…」
「それはまだ分からん。だが産まれ変わったかの如く変化をする事から『転生』、ここから共通認識として俺達は転生者と呼ぶことにした」
転生ってそう言う意味だったのか…
「さて次の特徴を説明する前に…ヴィラ!」
「は、はい!」
「ヴィラが全く情報の無い相手と戦うとき、まずは何をする?」
…この質問はどういう意図だ?
そんな戦いに必要な知識を今更聞いて…
「へ?え、えっと、私なら相手の攻撃方法がどのような物かを見極めます。意味のない突撃は自殺行為ですので」
「情報収集か、まあその答えで良いだろう」
そう言えばウィルオウィスプと戦った時も、最初は相手を観察してた気がする。
他にもヴォドニーク、ニコラ、ノア…全員先制で動くことは無かったな。
「でも勝ち筋が分かった瞬間浮かれてヤマが死にかけた事もあったにゃ」
「何をしてるんだお前は…」
「あぅ…」
そんな事もあったな…
「まあ良い、説教は後だ。では剣はどうやって持つ?」
「え?えーっと、両手の時はこうで…片手ではこうやって持ちますね」
「良いだろう。合格だ」
コロン団長はさっきから何がしたいんだ…?
「あの、そんな当たり前の事を聞いてどうしたのですか…?」
「そう、今聞いたのは全部当たり前の事だ」
「結局何が言いたいんだにゃ」
「何度か剣使いの転生者と戦ったが、あまりにも酷い。今言った基本が全く出来ていない」
てことは剣の経験が無いって事なのか?
まあ初心者なら剣の威力もたかが知れてるし、基本が出来なくても不思議では無いか…
「じゃあ初心者って事なのかにゃ?」
「そのはずなのだが…岩をも粉砕するパワーを持っていたり、妙な必殺技の様な物を使ってきたり…まるで『動かして貰ってる』そんな印象だ」
動きが出来てないのに威力は抜群?
普通は動きを覚えてから技とかの威力を上げるよな。
順番可笑しくね?
「『チート』と聞くのもこの辺りだな。恐らく強力な剣術や魔術、必殺技辺りを指してると思うんだが…」
「まだ詳しい事は調査中ですわ」
うーん…チートはまだ分からず仕舞いか。
「モンスターとかに操られてると言う可能性は…」
「いや、その可能性は無いな。何度調べてもモンスターの気配は感じ取れなかった」
てことは怨霊みたいな奴の可能性はこれで潰れたって訳か。
「つまり転生者はかなり歪な存在だ。剣や魔法の才能は優れてるのに動きや判断力は素人その物。更に言えば基礎が全く出来てない」
一息入れて話を続けた。
「言うなら力だけを与えられた一般人だ」
力だけ、か。
「中々に的確な表現じゃにゃいか。考えた人はセンスあるにゃ!」
「ちなみに発案者はマオだ」
「急にダサく感じてきたにゃ」
「さっきと言ってる事が180度違うぞ…」
「さて、前置きが長くなったが本題に入ろう」
「え、今の本題じゃ無かったのかにゃ?」
「まあこれは君達に限らず条件に合うチーム全体に忠告して廻ってるんだが…」
俺達みたいな?
「チームから若い女性が引き抜きにあう被害が何件か報告されている」
「それって…」
「あぁ。十中八九転生者の仕業だ」
若い女性だけを?
これもシホが言ってたハーレムとかか…?
「だからヴィラ、そしてネネ君。君達は特に注意しろ。恐らく催眠系の何かを持っている」
「はい!/んにゃ!」
「では話は以上だ。コーデリア!その女を牢に入れといてくれ。後で俺も向かう」
「了・解ですわ~っっ!!」
コーデリアさんはシホを担ぎ上げるとギルドの中に入って行った。
結構怪力なんだな…
「それと…すまないがヴィラに少し話がある。少しだけ待ってて貰っても良いか?」
「あ、分かりました」
「すみませんが、少し行ってきますね」
「分かったにゃ~」
そう言い残し、ヴィラは建物の中に入って行った。
「なーんか疲れたな…」
「最近、色々な事がありすぎて混乱してくるにゃ…」
それにしても転生者にチート、ねぇ…
「なあ、ネネはチートとか最強とかに興味あるのか?」
「サイキョーになってもあんなゴミみたいな性格になるんだったら、ネネは弱いままで良いにゃ。ヤマ達と遊んでる方が楽しいにゃ」
…ゴミみたいな性格か。
まあ私欲駄々漏れで周りを見下す人はゴミみたいな性格とか言われても仕方な…
…あれ?
『それに俺だって剣や魔法で強いモンスターを倒したりしたい!優秀な人になって周りからチヤホヤされたい!』
俺がアユルに来た理由の三分の一は「チヤホヤされたい」だったよな?
『この世界なら何をしてもチヤホヤしてくれる!何をしても肯定してくれる!リア充陽キャの雑魚相手に無双サイコー!!』
シホも厳密には違うが、チヤホヤされたくて力に溺れていた。
もしかして今の俺って転生者達とやってる事が同じなんじゃないか…?
「んにゃ…う?ヤ、ヤマ?怖い顔してどうしたんだにゃ…?」
「あ、いや、ちょっと考え事をな…」
sideネネ
「なあネネ」
「んにゃ?」
「もしも…もし、俺がチヤホヤされたくて強くなりたいって言ったら…どう思う?」
「急に何だにゃ。ヤマにしては変な質問だ「頼む、答えてくれ」」
ヤマはネネの目を真っ直ぐ見て、それを外そうとしないにゃ。
…さっきから様子が変だにゃ。
ここでふざける程ネネはバカじゃ無いにゃ。今回はちゃんと真剣に向き合うにゃ。
「別に何とも思わないにゃ。誰だって周りからの歓声があるのは嬉しいにゃ」
「だがシホは…」
「あれは性格がゴミクズだからノーカンにゃ」
もしかしてヤマも承認欲求みたいなのがあって、それがシホと被るから悩んだのかにゃ?
でもあんな社会のゴミとヤマは全然違うにゃ。
「ヤマは命を掛けてでもネネ達を守ろうとしてくれるにゃ。そんな人は寧ろチヤホヤされるべきにゃ」
ヤマはネネ達の為なら平気で命を差し出すにゃ。
その勇気は凄いし助かった事も何度もあるけど、今ここではっきり言わないと、ヤマは一生ネネ達の盾になろうとするにゃ。
「あ、別に犠牲になれって訳じゃ無いにゃ。出来るなら怪我して欲しくないし、それでやられちゃったらネネも悲しいにゃ」
「ネネ…」
「何でこんな事聞いたのかは聞かないにゃ。でもヤマにはヤマだけの強さがあるにゃ!もっと誇れにゃ!」
ヤマにはこれくらいハッキリ言わないと分からないにゃ。
ネネ達の頼れるリーダー!それだけで充分立派だにゃ!
「…ありがとな。少し肩の荷が落ちた気がするよ」
「にゃはは!ネネにかかればこんなもんにゃ!」
リーダーの悩みはメンバーの悩みだにゃ。
例えみんながヤマを嫌っても、ネネは絶対裏切りないし、見捨てないにゃ!
それだけネネはヤマの事を信頼してるんだにゃ!
「もしどうしてもチヤホヤして欲しいならネネが代わりにやってやるにゃ」
「…どうやって?」
「ヤマ格好いいにゃ~!素敵だにゃ~!デートして欲しいにゃ~!」
ネネのキャラじゃない猫なで声で、ヤマの事をひたすらに褒めてみたにゃ。
こんな事で元気になるならネネはいくらでもやってやるにゃ!
「何か違うなぁ…」
「何でにゃ!!」
やって損したにゃ!!
明日(2月27日(月))の更新はお休みです。




