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8-4. 武蔵小金井潤一郎は犯人か?・1

「あー皆、ご苦労様」


 入ってきたのは署長である国立藤助であった。


「署長、どうされました」


「ああ潤一郎君。ちょっと署長室に来てくれ」


 そう言うと彼は早々に立ち去っていった。


 ――嫌な予感がした。


 彼は署内の人間に尋ねれば全員が全員断言する程度には無能であり、かつ拙速を尊ぶ人間であった。警察の仕事に稚拙は許されないはずなのだが、とにかく事を早く終わらせたい、そう考えがちなため、現場からは疎まれている存在であった。


 そんな彼が、呼び出しをする。


 大宮とチラと目を合わせる。


「こちらは任せて下さい。それと、これを」


 彼はある物を渡してきた。


 どうやら彼も、この後何が起きるかの中でも最悪のケースを想定しているようであった。


 潤一郎は頷くと、それをバッグに仕舞い、署長室へと向かった。





「まずいことをしてくれたね」


 署長室に入って藤助は開口一番そう言った。


「……重要参考人を連れ出した事にしては大変申し訳ありませんでした。しかしこれは――」


「ああ違う違う。そんな事じゃない、もっと大きな事件についてだ」


「……?」


 疑問の表情を浮かべる潤一郎に対し、藤助はやれやれと頭を抱えて、なんという事をしてくれたのだ、といった雰囲気の顔を作って言った。


「署内で発砲事件なんて。しかも二回だ。わしとしてもこれ以上は庇いきれんよ」


「……意味が、わかりません」


 潤一郎は率直に言った。いや、心の底ではわかり始めている。しかし、そうであって欲しくないという気持ちから訪ねた。


 藤助は溜息を吐いた。これくらいわかって然るべきだろう?という、失望にも似た表情が浮かんでいた。


「――流石にこの署で二回も発砲事件があったという事にするのは流石に問題があってね。マスコミにこの件がバレるのも時間の問題、しかし解決の目処は立たない、この状況は大変よろしくない。そう、大変にね。ここまでは分かるね?」


「分かりますが、致し方ない事です。……それと私とどんな関係が?」


「君が犯人だ。潤一郎君」


「……は?」


 大きく口を開けて、思わず呆れた声が出た。今、こいつは、何と言った?


「先の件も今回の件も、君が大きく関わった事件だ。そうだろ?」


「……それは、そうですが、私ではありません」


「知ったことじゃない。君が犯人なのは間違いないとわしの勘が言っている。だから君が犯人で、それで事件は解決する、いや、させる」


 意味が分からなかった。ぽかんと口を開けて藤助の目を見る。段々と彼の顔には怒りが込み上げてきていた。


「ホント察しが悪いな無能。いいか、署内の発砲事件なんて起きたら大変なのに、これでニ回目だぞ。マスコミへの説明とかもう対応が複雑怪奇でわしの地位も物凄く悪くなる。分かるかね。君達のせいで、わしはこれ以上の出世が望めない瀬戸際に居るんだよ」


 段々、潤一郎の顔にも怒りが込み上げてきた。


「君達のせい?アンタがうだつの上がらない、捜査の指揮すら出来ず全部部下任せの無能だからじゃないですか。そんなどうでもいい事をツラツラと並べて何が言いたいんですか」


「口が過ぎるぞ。直接言いたくないから少し濁していたというのに。仕方ないな。いいか?君がこの事件を起こした首謀者だった事にする、と言っているんだ」


 意味が、わからなかった。

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