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8-3. 武蔵小金井潤一郎は署に戻る・3

 その言葉に近くの刑事が反応し、手元にあったおにぎりと水を渡してきた。


「こ、これでよければ」


「た、助かる……」


 そう言って鳴斗はビニールを派手に千切り、一口でそれを頬張り、飲み込んだ。


「ふぅ……生き返る……いや本当に……」


「すまないがもう少し聞きたい。儀式を早めるとしてどうすると?」


「さっきも言ったが、私の朧げな記憶では、『封印の紋章』が腕に浮き上がった十人を生贄とし、最後に『解放の紋章』を持つ者を生贄とする事で世界の統合が成される。

 で、赤坂唯は『解放の紋章』の持ち主。本来彼女が必要なのは最後の儀式でだ。その儀式を早めるという事は、『封印の紋章』の持ち主を早期に生贄――つまり殺すという事。

 つまり、今後立て続けに殺人が起きる可能性がある。」


 場の空気が凍りついた。


 ――昔なら。少し前の潤一郎ならば「はいはい」と妄言扱いするところではあろうが、先程の魔法陣。血の跡。何より、今までの犠牲者達。それらを見て、今更疑う余地は無かった。


 そんな彼の様子を見て、他の刑事達もまた、事の深刻さを理解したようであった。安芸も痛みを堪えながら、深刻そうな顔で顎に手を当てている。彼を介抱している刑事達も全員黙り、ただ鳴斗の言葉を待つばかりであった。


「どうすれば良い……んでしょうか」


「『封印の紋章』を持つ人間を探すのが一番良いのだが、事此処に至って特定方法が見つからないのが実情。先程撮った魔法陣は?」


「ここに」


 潤一郎はスマホを取り出して写真を見せた。


「それはこちらで調べる。君達には今までの犠牲者の情報、さっきも言ったが、6/4当夜――最初の儀式が行われたと思われる時に、彼ら彼女らが何をしていたか、それを調べてほしい。そうすれば魔法陣と彼ら彼女らの行動に何らかの共通点が見られるかもしれない」


「なるほど。昴、頼む」


「は、はい」


 そう言って彼は捜査に取り掛かる。他の刑事たちも安芸の介抱をしつつ捜査も開始し始めた。


「もう少し何か食いたいところだが、何か無いか」


「少し我慢してほしい。病院で点滴など受けてもらうのがいいとは思うが、まずはコンビニで何か――」


 そう言って部屋を出ようとしたところ、その流れに遡るように、ドタドタと廊下を走る音が聞こえた。


 こんな時になんだろうか。

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