7-13. 武蔵小金井潤一郎は潜入する・4
「ひぃっ、ひぃっ、ひぃっ」
昴はだらしなくぼんやりとその死体を眺めている。
「大丈夫か」
潤一郎が手を伸ばすと、それをガッシと掴んで何とか立ち上がる。手には汗がびっしょりと付いていて、若干の気持ち悪さがあるが、この状況を鑑みればそれも致し方ないと言える。
「いや、もう、一生忘れない傷が残りました」
「大丈夫すぐ忘れるし忘れろ。ラシーヌさんは?」
「問題はございません。そちらも息災なようで安心致しました」
「何、あれ、あんなのが居るんですか!?その……そちらの世界には?」
「あれはまだ小さい方です」
「ひぇ……」
昴は腰を抜かして目を見開き、呆然としている。
「立て立て。あんなもんがこれ以上出てこないようにせにゃならんだろ」
「そういうのはもう自衛隊とかそういうのの役目なんじゃあないですかぁ?」
「言ってる暇があるか。もう時間が無い、ちゃっちゃと進むぞ」
と言って足を進めようとした時、潤一郎はふと何かに気付いた様子で、スマホを取り出すとキマイラの死骸を写真に収めた。
「どうされました」
「いや……発砲しちゃったから、始末書書く時用に……」
潤一郎はうんざりした様子で言いながら、スマホをしまう。
だがふと思う。こんなものが闊歩する世の中になったら、始末書を書く暇が無くなるどころか、書く必要性すら無くなるかもしれない。自衛のためには全員が拳銃を持つ世界。
或いは、書く者も居ない世界か。
「……日常って大切だよな」
「なんですか先輩急に」
「なんでもない、行こう、ラシーヌさん」
「承知しております。反応を感じるのはもうすぐ近くです」
そう言ってラシーヌは再び廊下の先を指す。潤一郎はスマホのライトと手持ちのライトをONにし、廊下を照らして再び歩き出す。




