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7-11. 武蔵小金井潤一郎は潜入する・2

 暗く静寂が支配するビルの中をゆっくりと歩く。スマホと手持ちのライトの二刀流で辺りを照らす。


 埃は無い。それが完全に使われなくなってそれほど時間が経っていないせいか、それとも今もなお使われているからなのかについては、後者であると断言出来る。


 壁に『新たなる運命(ニュー・フェイト)』と書かれたポスターが貼ってあった。その文字の上に、二つの星が重なり合うような図が描かれている。こんなものは、この署が使われている間、潤一郎は見た事が無かった。


「どうも誰かが勝手に使ったのは間違いないな」


 階段を昇りながら潤一郎が言う。


「ですね……」


 五階程になると何やら違和感を感じ始めた。ポスター云々の問題ではなく、何か雰囲気がおかしい。


 何か匂いがする。血生臭い匂い。数日立った腐乱臭のような、そんな匂いが。


「臭いな」


「なんかありますよねコレ」


 昴が鼻を摘みながら言う。


「恐らく。それに……この階全体に魔力が広がっています。その奥から微かに、鳴斗さんの魔力を感じます。……それ以外のものも」


 疑問に答えるように、ラシーヌが言う。


「それ以外っていうことは、誰かいるのか」


「はい。ただこの魔力の波動は、魔物のそれです」


「……ま、もの」


「魔物って……その、魔物ですか!?」


 昴が目を見開いて慌てた様子で叫ぶ。シー、と指を立てて黙らせつつも、気持ちは分かる。


「はい。武器をご用意下さい。お持ちで御座いましょう」


 ラシーヌは油断なくジッと壁に寄り添い、コートを脱ぎながら言った。彼女の剣と盾は没収しているので徒手空拳であったが、それでも「この女には勝てそうにない」という強者のオーラが溢れていた。


「も、持ってはいるが発砲許可は――」


 そんな会話をしていると、暗闇の中で何が光った。


「まずい。明かりを消して下さい」


「え、え、え」


 昴が慌てて消す。潤一郎も続く。


 だが暗闇の中に輝いた何かは、こちらに向けて近づいてくる。


「遅かったようです!!アレに向けて撃って下さいますよう!!」


「あ、アレは鳴斗じゃない、ということでいいのか!?」


「はい!!あれは――」


「グゥルルルルルアアアアアアアアッッッ!!!!」


 何かを言いかけたが、それは暗闇の中から響く獣の轟きにより遮られた。


「キマイラです!!避けて!!」


 ラシーヌが二人の前に立つ。二人はその言葉に応じるように避ける。


 そして彼女に対して、暗闇の中から、大人三人通れる程の廊下を塞ぐ大きさのライオンのような怪物が飛び掛かってきた。


 

 残り、二十分。

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