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7-3. 幽谷鳴斗は再会する・2

「勇者……?お前も転生して……?それで何故此処に、いや、その前に、何故こんな事を……」


「ああよく聞いてくれた……。心の内に潜めているというのは辛かったんだ、是非聞いて欲しい、特に君に」


 フードの人物は蔑むような笑みを浮かべて鳴斗を見下しながら、胸の内を語った。


「そもそもの始まりは、君と相打ちになった時、記憶の混濁が起きたことだ。私の圧倒的な勇者としての力で捻じ伏せたにも関わらず、君は私を道連れにしようとした。そしてそれは成功した」


 苦虫を噛むような顔でその人物は言った。


「そしてあろうことか起きてはならない事が起きた。私が君の体を貫いた瞬間に君が自爆の魔法を使った結果、私達二人は全く同時に、同一の場所で死ぬという事が起きた。

 それが、魂の混濁を招いたようだ。

 魂の混濁、つまり転生時に引き継ぐ”記憶”が混ざり合い、結果として二人の魂の間で不平等に分割されるという事態を招いた。

 君は魔法に関する知識の大部分を得たが、私はそれを失った。

 君は魔王時代の記憶の大部分を失い、私はそれを得た。

 ――こうして君に教授しているのは、私が自分と君の分、二重に当時の記憶を引き継いでしまったからだ。

 今も鮮明に思い出せるよ。私はね。君はどうだい」


 鳴斗の頭に様々な記憶が蘇る。


 玉座の間の夢、あれは本当の記憶だったのか。


 本棚から世界統合の方法を知った時の事、あれは勇者の視点だった。もしや自分は勇者で、魔王の記憶を得てしまっただけなのかとも考えた事はあった。実態は元々の認識の通りだった、という事だろうか。


「どうやら困惑しているようだね」


「……最近、自分が何者なのか迷う事があってね……。その事が原因だとすれば辻褄が合うように思う」


「ふむ、どんな記憶か知った事では無いが、安心してくれ。間違いなく君は魔王だ、魔王だった。この娘が保証してくれるよ」


 そう言うと男のポケットから何かが出てきた。


「この娘から聞いているよ。君はあまり昔の事を覚えていないとね。だがこの娘は魂の形が読み取れる。私の事を見て間違いなく勇者だと確信してくれたし、君の事は魔王だと断言してくれた」


 光の珠だ。


 いや、目を凝せば、そしてその光が落ち着けば、それが何であるかは疲労困憊の鳴斗にもすぐに分かった。


「スローシャ……?」


「……申し訳ありません。魔王様。スローシャめは、勇者様の脅しには屈する他ありませんでした」


「脅しだなんて心外だな。かつてのよしみで”協力”を”要請”しただけだろう?」


「……」


 スローシャは怯えたような顔で黙りこくる。


「……何時からだ」


「……最初からです。最初にこちらに来た時に、鳴斗様より前に、勇者様に会いました。元々、そういうお約束でした。勇者様が万が一にも負けるような事があれば、機が熟し次第呼び出すので、協力せよと。そして実際に呼び出された時、魔王様が近くに居る事は察していたようで、それで、動向を探るように、と……」


 機が熟し次第”呼び出す”。その言葉に鳴斗は不思議なものを感じた。スローシャが此方に来たのは(グー)意図的なもの(グー)だったのだろうか。


 空腹が思考の邪魔をする。


「ペラペラ喋るべきではないな、スローシャ」


 フードの人物の冷ややかな言葉に、スローシャはビクリと反応し、止まる。


「いい子だ。ま、そういう事だよ。君の行動は大凡筒抜けだったというわけさ。誤算があるとすれば、シュマがあんなヘマをするとは思わなかったという点かな。彼には期待していたのだが、どうも斬り殺す方に注力しすぎてしまったようだ」


 そう言うと男はスローシャに目配せをした。


「もう戻り給え。そろそろ怪しまれる」


 スローシャはすごすごと奥へと下がっていった。

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