7-2. 幽谷鳴斗は再会する・1
牢の前にフードを深く被った人物が立っていた。声は変声機か何かを使っているのか、男とも女とも分からない。先程まで聞こえていた足音はこの人物のものであろう。口元だけは見えるが、それでも性別その他の判断はつかない。しかし、若々しい肌から見て、そう歳はいっていないだろう。鳴斗と同年代という事は想像がついた。
フードの人物は指を弾いた。
すると、辺りの風景は一気に変わり果てた。
石造りの牢獄。不気味な静寂に包まれ、蝋燭の灯火が辺りを心細げに照らす。まるでジュラ・オスタの、魔王城のそれであった。
「君の前世に合わせて作らせた。どうだ、魔王城の再現、出来ているだろう。私の記憶から組み立てたわけだが、気に入ってもらえたかな?」
気に入るわけがない。鳴斗は心の中で毒づいた。
「不快か。それは残念だ。せっかく模様替えしたというのに」
だがそれより気になるのは、眼前の人物が言った『前世』という単語である。
「……私を、私の前世を知っているのか」
「勿論だとも」
そう言い放つフードの人物の顔には、――口元しか見えないが――どこか怒りが滲み出ていた。
「君のせいで私は酷い目にあった。君は当然忘れているだろうが、私は君の事を一度たりとも忘れた事は無い」
誰だ。全く記憶が無い。
「そう、あの時、玉座の間で、君を殺し、君に殺された時からずっと、ね」
玉座の間。そんなところに居た覚えは無い。少なくとも、最近は。
「いや、覚えているはずだろう?朧げでも。君がそこに、座っていた事をさ」
玉座の間に、座って、殺し……殺された……?
「ま、さか」
「漸く辿り着いたか?空腹になると判断力のみならず思考自体が鈍るというのは真実だな。まあ私も散々体感していたので疑う余地は無いが」
「まさか……勇者……?」
鳴斗の言葉に、フードの人物は口角を上げた。
「その通り。私の前世はアルマ・ユグドラシル。君と相打ちになった、かつての勇者だ」




