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7-1. 幽谷鳴斗は牢の中

[2019/6/6 20:30 栃木県伊都宮市 伊都宮警察署?]


 お腹が空いた。


 幽谷鳴斗は、伊都宮警察署の留置所の中で、灰色のコンクリートの天井を見つめてそう思った。


 昼間に大嵐で保護――伊都宮に来たら手錠まで掛けられたのでもはや逮捕みたいなものだが――されて以来、水以外何も口にしていない。


 カツ丼くらい提供されて然るべきなのでは無いだろうかと嘆く。子供の頃は刑事ドラマのアレに憧れたもので、一度くらいは食べてみたいとは思いつつも、こんな形で食べる機会を得たいとは思わなかったし、そもそも出て来ないのだから余計に腹が立つ。


 シュマを殺さないでおけばここまでの仕打ちを受けずに済んだだろうか?


 そんなわけがないか。


 最初にあの刑事、武蔵小金井とか言う奴に洗いざらい話したが、半信半疑といった様子だったし、他の刑事達は全く信じていないようであった。


 世界の統合。


 それが相手の目的だという事は伝えた。


 しかし分からない事はまだある。


 一番分からないのは、誰が計画したのか(フーダニット)という点である。


 こんな事、記憶にうっすらと残るあの本を読まないと実現出来ない。


 自分以外にも転生者が居るのか、それとも全てがジュラ・オスタ側から計画されているのか。


 思考が追いつかない。

 空腹で頭が回らない。


 どうなっているんだ?この状況に疑問が湧き出す。唯は、ラシーヌは、スローシャはどうなった?スローシャはポケットから回収されて、例の武蔵小金井とか言う刑事が目玉をひん剥いていたが、その後の足取りは知れないし、他の二人も取調室に案内されていたが、その後この留置場に来る気配は無い。


 三人は解放されたという可能性も考えられて腹が立ち、そして腹が減る。


 灰色の密室に二時間程居るだけで精神が参ってきているのを感じる。


 なんで自分だけこんな牢屋に放り込まれて放置状態なんだ?取り調べくらい受けたっていいというか受けたい、ここから出たい!!そんな気持ちがふつふつと湧き上がる。


「誰かー」


 よろよろと立ち上がって檻を握ってガンガンと揺らす。


 反応は無い。


 檻の隙間から先を見る。誰も居ない。


 おかしくないだろうか。違和感が増しに増してくる。


 ここまで放置されている事も、牢屋、いや留置場?もうどうだっていい、ここに誰も居ない事もおかしい。


 そもそも放り込まれた時も突然移送していた人が変わっていた気がする。武蔵小金井では無かった。


 伊都宮に着いてから一、二時間この状況が続いている。


 違和感がある。間違いなく、何か異常な事態が進行している。


 となれば沸き立つのはこの檻をぶち壊して外に出たい欲求である。だが魔法は使えない。この理由は単純で、腹が減っているからである。腹が減っている、自らの身体活動を支える栄養が不足していると、魔力の巡りも悪くなるのだ。


 残る魔力を振り絞れば、転送魔法以外の軽い魔法なら一回くらいは使えそうだが、それだけでは捕まっておしまいである。


 せめて誰か来てくれれば、話し相手も出来るし、いざとなれば最悪の手――催眠系の魔法――も使えるというのに。



 カツン、カツン。



 そんな事を考えていると、誰かがやってくる足音が聞こえた。


 漸く自分の取り調べの番かと鳴斗は内心喜んだが、その足音を聞いてすぐに疑問が湧き出した。今の音、普通の床の音だっただろうか?


 もっと硬い、石か何かを踏む音だったように聞こえる。



 カツン、カツン。



 改めて聞くと間違いない。石畳の回廊か何かの音だ。


 どうなっている?伊都宮の警察署というのは石造りなのか?


 そんなはずはない、この床はちゃんと――



 カツン、カツン。



 床を靴で叩くと、コンクリートからは聞こえないような音が聞こえた。


「…………????????」


 これは、まさか?幻影?


「ようやく気付いたようだね」

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