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6-12. 幽谷鳴斗は暗い穴の中・3

「狡い真似を……!!」


「シヒヒヒヒ!!」


 下卑た笑い声を上げるシュマ。それは、ラシーヌに生まれた隙に対するものであった。


 ズバッ。


 ラシーヌの肉体に赤い線が走る。


「がっ……貴様……」


 ラシーヌの体から力が抜ける。纏っている人の姿に、大きな傷が生まれ、血が吹き出す。


「シヒヒヒヒ!!デュラハン族の騎士道は何処へとでも言いたそうだな!?騎士道など知るか!!生きていた者の方が勝ちなのだ!!」


 そう言って甲冑側のシュマが二刀目を振り下ろさんとする。


「そうかもな」


 パチン。


 どこかから聞こえた指パッチン。


 それでラシーヌの傷は一瞬で癒えた。


「唯!!」


「分かってますのが呼び捨てにしないでください!!オラァッ居ねっ!!」


 鳴斗の叫びに答えて唯はラシーヌの足に噛みついていたシュマの兜をサッカーボールに見立てて思い切り蹴り飛ばした。


「ふげぇ」


 兜は胃壁にぶつかって反射すると、


「シヒィ?!」


 甲冑側にちょうどぶつかって、元のシュマの姿へと戻った。


「ラシーヌ!!」


「心得ております!!」


 その間に体勢を立て直したラシーヌが、「おおおおお」という咆哮と共にシュマへと踏み込む。


「あ、ちょ、ちょっとタン」


 ズバッ。


 問答は無用であった。


 ラシーヌが振り下ろした剣は、シュマの甲冑を、兜を、全くの真っ二つへと切り裂いた。


 パチン。


 そして鳴斗は指を弾く。


 死霊族に有効な魔法、浄化(プリフィケーション)の光が、腐ったデュラハンの頭上から全身へと降り注ぐ。


「シ、ビ……。い、生きたいだけ、なの、に」


 それで、シュマは灰になった。


 もはや彼の意識も魂も消え去った、サラサラとした細かなただの粒子が、ハルワダッドの胃へと降り注ぎ、そして吸収されていく。


 そうして、シュマは消えた。


「他者の命を踏みにじる貴様に生きる価値などあろうはずもない」


 ラシーヌはそう言い捨てて、カチャリ、と剣を仕舞った。

お読みいただきありがとうございます!!

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