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6-10. 幽谷鳴斗は暗い穴の中・1

[2019/6/6 12:40 ????????????]


 幽谷鳴斗は強烈な潮と血の香り、そして酸めいた匂いを嗅いで目が覚めた。


「んんん……ここは?」


 辺りを見回すが、何も見えない。暗い。まるで深海のようだ。


 深海。海。


「え、ん、ああ……!?」


 直前の事を思い出して自分の体を擦る。直前、チラとしか見えなかったが、海が割れて、そこから何かが飛び出し、そして自分達を食らったように思う。鋭い牙も少しだけ見えた。噛まれて、肉が引きちぎられて、そんな事があったらどうしようと不安になる。


 幸い、傷は無かった。


「ふぅ」


 一息ついて、それから指を弾き、松明の魔法で辺りを明るくする。


「無事か?」


 唯達の姿を探す。


「なんとか……」

 唯、


「ご心配をおかけしました。無事で御座います」

 ラシーヌ、


「大丈夫ですよ、ポケットにおりましたので」

 スローシャ。


 全員傷も無い。


 彼はふぅ、と息を吐く。


「どうなるかと思った」


「一体何が起きたんです?ここ何処?」


 唯は状況を理解出来ず、鳴斗に尋ねた。


「多分だが、さっきのアレ……海から出てきた巨大な何か、シュマは海竜(リヴァイアサン)なんて言っていたが、アレに食われたんだと思う」


「くわ……え、食われた!?じゃあわたし達はその、死……!?」


「ご安心を。生きております」


 ラシーヌが口を挟んだ。


「死んだ者もおりますが」


 そう言って持ち上げたのはシュマの兜であった。もう反応は何も無い。鳴斗も魔力を測ったが、兜からは全く感じられないし、先程まで遠くで感じていた彼の魔力は完全に消えていた。


「残念、と言うべきか」


「いえ、某で無くとも正しき罰を与えたのであればそれで良いのです。我が手を汚す事だけを考えては、ただの復讐鬼。某らデュラハン族が望むはただ罪に罰を下す、それのみで御座います」


 ラシーヌは静かに、目を閉じて言った。


「惜しむらくは、彼奴が企んでいた計画、彼奴を操った張本人を知る事が出来なかった事ですが」


「情報が欲しいのは確か。だが仕方ない。死人に口なし、だからといってこいつを蘇らせる事が出来るとしてもそこまでして情報は欲しくない。こんな奴を蘇らせるくらいなら、壊れた割り箸を元に戻した方がマシだ」


 さて、とそこで鳴斗は話を切った。


「ここはジメジメしているし、そのうち溶かされそうで困る。外に出よう」


 そう言って指を弾こうとした時、


『それは困る』


 床が、壁が、突然震えだし、そこから声が聞こえた。

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