6-2. 幽谷鳴斗は目を覚ます・2
鳴斗は辺りを改めて見渡す。上下する視界に酔いを覚えながら、その何も無い田園風景と、その中に聳える大きな病院らしき建物を見て、場所の察しをつける。栃木県内。私立の医大の近くであった。
「ちょうどいい、このまま南に向かってくれ」
「もう安留賀はよろしいのですか?」
「あそこで得られる情報は多分あれで全部だろうし、戻ったところで警察が待ち構えているだろう。戻らない方が良い。それより、君の宿敵であるシュマを追った方が良い。アレを放置すれば犠牲が出る」
鳴斗は続けて言う。
「それに、恐らく奴は魔法陣の浮かんだ相手を狙っている」
唯が息を呑む。彼女も何となくは察していたようであった。
シュマが現れたのは鷹崎駅近く、その付近で起きた殺人事件で、恐らく彼により犠牲となった人々の中にも魔法陣が浮かんでいる人が居た。偶然かどうかで言えば、そうではないと考えておいた方が良かろうと彼は判断した。
「魔力の波長を読み取っているのか、それとも他の特定方法があるのかは分からない。前者のような気はするが、何れにせよ放置するわけにはいかない」
「某としても、同意致します。それに彼奴めは殺戮を好む趣向があります。すぐにでも止める必要があると考えます。某の使命を果たすためにも」
「うむ。それで、奴の反応を追うと、大体東の方だ。そこに向かうには、大山駅の電車に乗ったほうがいい」
「もう少し南の駅ですか」
「反応は何処です?」
「茨城県の……多分……」
鳴斗は目を閉じて反応を見る。先程鷹崎で感じた魔力を東から感じる。それは海の近く。
「大嵐の港の近くだ」
「うげぇ」
唯がそれを聞いて眉をひそめた。
「すっごい遠いじゃないですか」
「ああ。転移したいところだが、さっきも言ったけど私は行ったことがない。アニメで見たくらいだ。なので電車か何かで行かないとならん」
「めんどくさい……。あそこ一度行った事ありますけど、確かに料理は美味しいですが、交通の便は正直……」
不平を言いかけたところで、ラシーヌは走るのを止め、
「鳴斗殿、唯殿」
二人の会話に口を挟んだ。
「どうした?」
「電車と申されましたね?」
「ああ」
「でしたらどうやら、顔をもう一度変えた方が宜しいかと」
「なんで」
ラシーヌはある点に指を差した。気づくと駅が近くなっていて、その指の先には駅近くの安全を守るためであろう交番が建っていた。彼女はその横の掲示板を差していた。
鳴斗は嫌な予感を覚えつつも、その指先の差す方に目を凝らす。
「……うっわあ」
そこには二人――鳴斗と唯――の顔写真が「重要参考人」として貼り付けられていた。
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