6-1. 幽谷鳴斗は目を覚ます・1
[2019/6/6 10:00 ?????? ??????????]
「……う、ううん……?」
幽谷鳴斗は目を覚ました。
何か嫌な夢を見たような気がする。
遠い昔に起きた出来事を追体験していたような、不可思議な感覚。だが記憶には無い。というか、夢の内容をほぼ覚えていない。ただ本を読んだ事だけは覚えているが、その本文は今は全く思い出せないし、夢の輪郭も時間が経つにつれて更にぼやけている。
視界もぼやけている。認識と場所が一致しない。自分が覚えている限り、自分は安留賀駅に居たはずだが、ここは何処だ?
「あっ、気が付いた」
赤坂唯の声が聞こえた。鳴斗はそちらを見る。すると視界にチカチカと輝く光球が映る。
「スローシャめは随分と心配したのですよ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……。なんだ、ここは」
視界がブレる。スローシャが蠢いているからではない、電車の振動よりも激しく自分自身がぐらんぐらんと揺れているのが段々と実感出来てくる。
それを実感すると今度は別の事が気になりだす。ガシャンガシャンという何か金属が擦れる音だ。どうやらその音と自分の揺れが連動しているように感じる。
「目を覚まされましたか。良かった」
その声を聞いて自分の置かれている状況が漸く理解出来始めた。
「ラシーヌ……?」
ラシーヌ、動く甲冑デュラハン族の女性に抱え込まれていた。右腕に鳴斗、左腕に唯、そしてスローシャが彼女の周りをチカチカと彷徨いていた。
だがまだ彼は良く理解出来ない事が多い。
「何処に向かっている……?というか、なんで甲冑の姿に……?」
「鳴斗さんが突然苦しみだして、魔力を暴走させちゃったんですよ」
唯の方を見ると、確かに唯に掛けたはずの変装魔法が解けて、元の彼女の顔があった。
「ちょうど警官とやらが駆けつけていたところだったので、唯殿の素性がバレました。そのため、某らは逃げる事にし、今は線路?とやらを沿って大凡南へ向かっているところで御座います」
暴走。
全く覚えが無いが、二人が言うなら確かにそうなのだろうと鳴斗は考える。
だがしかし、何故?
「私は何でそんな、暴走なんてしてしまったんだ」
「……」
無言。
「スローシャめが言ってもいいですが、また暴走しませんか?」
「流石に二度目は無いと思いたい。かるーく、多少ボカシながら頼む」
「鳴斗様は何やら使える魔法や残っている記憶に関して悩まれていたようで、それを切欠に何やら混乱して暴走に至ったように見えましたですよ」
「某にも同様に見えました」
ラシーヌがスローシャに同意する。そして唯が続ける。
「ここまで言っていいのか分からないですが、どうも自分が自分かどうか、そういう事を悩んでいるようでした」
「……」
言われて考えるが、思い当たる節は無い。飛び出した記憶を無理矢理しまい込んでしまった、そんな感覚。
欠片程度に思い出す事はある。
――世界の融合。
この一連の事件の犯人の目的がそれだ、という事が推測出来た事は覚えている。
そして、それに関する本を読んだという記憶があったことも。
だがそれ以上となると。
「……うーん、記憶が無い……」
「無理に思い出さない方がいいです」
唯の言葉に鳴斗は頷いた。
「そうする。……それで、暴走した結果は魔法が解けただけか?」
「ええ。……なんですその、”だけ”って」
「人と場合によるんだが、下手すれば街が瓦礫になる事もあった気がしてな」
「えっ」
唯の顔が青褪めた。鳴斗の目には、さっきまでもしかすると自分の命が危機に置かれていたのではと気付いた様に映った。
「まぁ稀な話です。それこそ自死を選択する瀬戸際まで追い込まれるような事が無いと、そうしたケースは聞き及んだ事がございません」
「あるの?!」
「某らの生きていた世界ジュラ・オスタは、いわば生き馬の目を抜く殺伐とした戦乱の世で御座いますれば。ですが魔王様の尽力で一時の平和が訪れまして、そうした暴走するケースも少なくなったと記憶しております」
「その辺もなあ……全く覚えが無い」
が、悪い気はしない、心の中で鳴斗はそう続けた。
「何れ思い出しましょう。今は考えないようにした方がよろしいかと存じます」
「そうする。で、今は何処らへんだ?」
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