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5-13. 幽谷鳴斗は調べたい・1

[2019/6/6 9:30 栃木県安留賀町 JTR安留賀駅前]


「わたしとしてもあまりここは見たくないのですけれども」


 安留賀駅前のロータリーの端、そこで駅の状況を伺う鳴斗に、唯が不満気な顔で言った。警察がウロウロと今も現場の捜査を行っている。


「なんでここなんです」


「伊都宮線に乗りたかったのと、現場の確認だよ。警察が邪魔だが、まあなんとかする。君のその魔法陣について調べるにはここからがいいと思ってな」


「お言葉ですが、そのような時間は御座いません!!一刻も早くあの愚者に同じデュラハン族として介錯せねばなりません!!」


「調べたら近くの駅に転移する。少しだけ待ってくれ」


 ラシーヌは不満気な顔を見せたが、少しならと妥協の意を示した。


 転移という言葉に、唯には疑問が浮かんだらしく、口を挟んだ。


「空は飛べないんですか?」


 唯の質問を聞いて、鳴斗の顔が暗くなる。


「……昔使って嫌なことがあってな」


 彼はかつて、魔法の事を思い出した直後、真っ先に飛行魔法を試した。


 実験は成功し、彼の体は宙に浮き上がった。しかし直後、カラスが近寄ってきてカーカーとその嘴で鳴斗を突っついてきた。更に上空を通るヘリコプターで吹き飛ばされ、おまけに飛行機のエンジンに巻き込まれそうになった。もう少しでヒューマンストライクである。


 その時の恐怖から、彼は飛行魔法を使うのを止めた。このまま使い続ければその内自衛隊やら米軍やらに撃ち落とされそうだと思ったからだ。


「ああ、昔っから魔法にはロクな思い出が無い。中学の頃も魔法が使えると言ったせいで赤っ恥をかかされたし、あの時も――」


「すみませんわたしが聞いたのが悪かったのでそう落ち込まないで下さい」


 だんだんと腰が曲がり、膝を地面に立て、頭を抱えて「はああああああ」と大きく溜息を吐きながら呪詛の念に取り込まれていく鳴斗の肩を揉むようにしながら、唯が出来る限り優しげな声で言った。


「いいんだ。私はロクでもない人間だ。元の世界でもそうだった。だからこそ今度は、平穏に、誰にも迷惑をかけたりせずに……」


 考えれば考える程、鳴斗の思考は闇へと落ちていく。


「正気に戻れぇ!!」


 唯は鳴斗の肩を掴みガクンガクンと振るった。


「あばばばばばばばば」


「貴方はわたしを助けてくれたじゃないですか!!ロクでもない人間なわけがないでしょ!!」


「その通りです!!スローシャめも保証致します!!」


「某も助けられております!!自信を持ってください!!」


 唯、スローシャ、ラシーヌが順々に彼の肩を揺さぶる。


「やめ、やめろ、ラシーヌは特に腕力が」


「すみません、何をしてらっしゃいますか?」


 聞き覚えのない声がしたのでそちらを見た鳴斗は、目を丸くした。


 その声と共に見せられていたのは警察手帳であった。

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