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5-11. 赤坂唯達は逃げる

「g……hga……t。ssyn……yriga……」(※2倍速のため翻訳:が……はがあ……っ。拙者の……鎧があ……)


 シュマの鎧に大きな傷が付いていた。


 他方、ラシーヌには傷は無い。


「まあそうなると思った」


 鳴斗はそう言うと指を弾いた。速度が戻った。彼はラシーヌの勝利を疑っていなかったようである。


「某が、修行を怠ったお主に負けるわけがあるまい。さあ秘宝を返せ。そして元の世界に戻せ」


 ラシーヌが剣を向けながらシュマに吠える。


「……はは。戻る?そんな必要は無い。何れ戻る必要は無くなる」


「どういう――」


 問いを投げかける途中で、シュマの籠手が開いた。


「目を閉じて!!」


 ラシーヌが叫んだ。唯は声に従い目を閉じた。


 その直前、凄まじい光が辺りを包んだ。


「フラッシュの魔法、目眩ましか!!」


 鳴斗が叫ぶ。


「某には効かん!!」


 剣を振るうブンッという音が唯の耳に届いた。が、金属を切り裂くような音はしなかった。


「シヒヒヒヒ!!何れ分かる!!さらばだ!!拙者にはすべき事があるのだ!!」


 遠くからシュマの声が聞こえる。


「……くっ……空か……」


 唯が目を明けると、彼方遥かの空を見つめるラシーヌが居た。


「魔王様!!」ラシーヌが、


「鳴斗」唯が、


「鳴斗様!!飛行の魔法を!!」スローシャがそれぞれ鳴斗へと叫ぶ。


「疲れるからヤダ。どこまで追えばいいか分からないし」


「んなこと言ってる場合ですか!?」


 唯が再び鳴斗に詰め寄った。


「見てくださいよアレ!!」


 唯が指差した先にはサイレンを鳴らすパトカーがあった。今にもこちらに辿り着こうとしている。


「見えてる。……いや言いたい事は分かる。この場から離れないとダメなのは分かっているんだ」


「でしょう?まずこの人は銃刀法違反!!あと不法侵入!!」


 唯の指がラシーヌを差した。当のラシーヌはキョトンとして理解出来ていない。


「確かに」


「それに、道中の犠牲者に関する矛先もわたし達に向く可能性が高いです!!」


「魔法の存在なんて話しても何処まで信じて貰えるか。……せめて、飛んでいったアレを捕まえればまだ話は……」


 鳴斗は覚悟を決めたらしく、大きく溜息を吐いた。


「仕方ない、捕まれ」


 唯とラシーヌはその言葉に答え、彼の光り輝く服を掴んだ。


「……魔力の方向は……くそっ、行ったこと無い場所だ」


「マズイんですか?」


「ああ、転移魔法じゃ行けん」


「某聞いた事がございます。転移魔法は既に立ち寄った事のある場所の記憶へと転移する魔法、故に行った事の無い場所へは転移出来ないと」


 ラシーヌが補足した。


「うむ。だから別の所に行く。丁度いいからあそこにしよう」


「なんでもいいから早く!!」


 もうパトカーから誰かが降りてこちらに来ている。唯はそれを見て、見覚えのあるコートだなと思った。前に見た時より赤い気がしたが、記憶があやふやであまり覚えていない。取り調べか何かで面識――と言っても本当に目を合わせたであるとかその程度のものであるが――があるのかもしれないが、何れにせよ信用出来ないのは変わらない。唯は思わず叫んだ。


「わかったわかった!!」


 鳴斗は目を瞑り、そして指を弾く。


 瞬間、唯の視界は光に包まれ――




 ――そして気付くと見覚えのある場所に居た。


「……なんで安留賀なんですか」


 そこは田舎の駅、安留賀駅の近くであった。

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