5-7. 武蔵小金井潤一郎の到着・3
「なんで」
「いや、忙しくて、はは。……冗談でしょうし、ねえ」
孝平は悪びれもせずにハハハと笑った。
段々、ここのところの疲れも手伝って、潤一郎の心が燃えたぎり、貧乏ゆすりを始めた。その揺れで今被っている良心というマスクが剥がれつつある。
潤一郎は深呼吸をして、それを抑え込んだ。
「……すぐに取り寄せるべきだ。映像を確認して、それからでも遅くない。急いでやるべきすぐやるべきそうするべきだ」
だが孝平は渋る。
「い、いやしかし、手続きが色々とたいへ「す・ぐ・に、やるべきだ。そうだよな?」
嫌がる孝平に顔を近づけ、真剣で冷徹な顔でジッと見つめながら言った。
「……は、ハハ……はい」
孝平はスマホを取り出して部下に指示を出し始めた。
「あの……あと何すればいいですかねえ……」
孝平は懇願の目で潤一郎を見つめた。
「元々わたしも全然、どうすればいいかわからなくて……。他の人に押し付けたかったんですがみーんな忙しくてわたしに回ってきてしまって、正直困ってしまっているんですよねえ……」
言い直すでもなく「押し付けたかった」と言い放つ孝平に呆れながら、来なければ良かったと潤一郎は改めて後悔した。しかし、孝平に主導権を握られるとロクな事にはならず、栃木の事件にも被害が及ぶかもしれない。もしかすると、城場の事件にも。
そう考えると、自分が来て良かったのかもしれないと思えるようになった。
「とりあえずその鎧とやらが何処から出てきたかが問題だ。辺りの防犯カメラの映像を片っ端から取り寄せろ」
「はい」
孝平はスマホで部下に追加の指示を出そうとして、指を止めた。
「……え、全部、ですか?全部は見きれないと思うんですけどぉ」
「全部だ、全部集めろ。甲冑の話を陰謀論で切り捨てる前に、人々の証言が正しいのかそうでないのかをハッキリさせるべきだ。そのためには写っていないかを確認しないわけにいくか」
潤一郎は、心の中で止めている様々な暴言を飲み込みながら、半ば宥めるように言った。
「わかりました……。ちょっと電話します」
孝平は渋々受け入れると、部下に対して電話を始め、
「……え、ホント?マジ?……ちょっと待ってねえ」
そして驚愕の顔で固まった。
嫌な予感しかしない言葉が孝平の口から出てきた事で、次は何をすべきかを考えていた潤一郎の思考は一時停止した。
「どうした」
聞きたくは無かったが、彼は尋ねた。
「甲冑の二つ目が出てきて、現在城址公園で戦っているとか、なんとか。……信じた方が、いいですかねえ」
驚かないと言った事を撤回したい。潤一郎は頭を抱えた。




