5-5. 武蔵小金井潤一郎の到着・1
[2019/6/6 10:20 群馬県鷹崎市 鷹崎警察署]
「いやあ、へへ、お久しぶりですねえ、武蔵小金井さん。わざわざこんなところまで本当ご苦労様で。来ると聞いた時は驚きましたわ」
警察署の玄関で、胡麻を摺るように手を擦り合わせながら武蔵小金井潤一郎を出迎えたのは、彼の見知った顔であった。
「仙台さん。久しぶり。早速だが本題に移りたい」
「いきなりですねえ。久しぶりなんですからもう少し世間話でも……ダメ?ああ、そうでんね、今はちょっと色々起きてますからねえ」
「君が起こした事もあるがね」
潤一郎はニュースの画像を差し出して言った。腕とそこに描かれた紋様だけが映ったその写真を。
「なんだこれは」
「いやあははは……ちょっとした手違いです、いやほんま」
そういうと、仙台孝平は肩を落とした。
「堪忍して下さい。みーーーんなに責められて、わたしも辛いんですよねえ」
四十という齢より老けて見えるその顔は、明らかに疲労困憊といった様子で、眉間に皺が酷く寄っていた。
「責めるのは当然だ。特にこの紋様、外に出せばマスコミは絶対調べる。そこから栃木や他の……色々な事件に繋がって、といった事になりかねない」
少しの躊躇い。それは、孝平に安芸の事や城場の事件については語るべきか迷ったからである。結果として、語らない事を彼は選択した。孝平にペラペラと事情を話しても恐らく良い方向には行かないだろうと思ったからである。安芸は本庁の人間でもある。自分が名前を出したせいで、安芸に繋がりを得られると、孝平は悪用しかねないように思えた。
そんな評価を知ってか知らずか、孝平はバツの悪そうな顔で「すんませんすんません」と繰り返す。だが顔色はともかく、声色には悪気が感じられない。暖簾に腕押し、これ以上言っても仕方がないと潤一郎は悟ると、振り上げた拳を下ろすように、口を噤んだ。
「まあ、今更あれこれ言っても仕方がない、か」
「そうですそうです、わたし達は未来志向で行きましょ、ねえ」
バカにしているのだろうか。いや、彼は昔からこうだった。失敗に失敗を重ね、その度に言い訳で何とか誤魔化してきた。そんな姿をよく見てきた。今も変わっていない事には呆れるが、三つ子の魂百までとも聞く、多分変われないのだろう。潤一郎はそう自分の中で納得すると、本題に入る事にした。
「此処に来たのは先程連絡した通り、こちらで起きている事件が栃木の事件に関連しているかどうかを確認するためだ、協力して欲しい」
「勿論です。ですので、あの、他の方には、何卒ご内密に……へへ」
「それはダメだ」
潤一郎はピシャリと否定した。




