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5-3. 幽谷鳴斗は魔法陣を調べる・1

[2019/6/6 9:05 群馬県鷹崎市 鷹崎駅近くのビジネスホテル]


「なんで被害者の腕にあの紋様が?」


 幽谷鳴斗には今目の前に映っている光景がいまいち理解出来なかった。


 確かに赤坂唯の腕には魔法陣が刻まれている。だが、何故他の人間にも?


 この魔法陣は一体何なのだ?


 疑問が浮かんで離れない。


「ふむ」


 その様子を見ていたラシーヌが、突然ベッドに寝ていた唯の袖を捲った。


「ぎゃっ」


 思わず唯は声を荒げた。


「ななななな、なんですかいきなり!!それにさっきも聞きましたが、誰ですか貴方!?」


「ああ、君は気絶していたから、話はそこからになるのか……」


 鳴斗は頭を抱えた。改めて彼女には状況を説明せねばならない。だがそのためには、袖を捲っている彼女を止めた方が良いように思われた。


「これはラシーヌ、あー、……隠しても仕方ないから言うが、先程居たデュラハンだ。首無し騎士って知ってるだろう。それが何故かこっちの世界に飛んできてしまったらしい。姿は今は変えてあるが。ほらラシーヌ、変な事してないでまずは挨拶だ」


 鳴斗が言うと、ラシーヌは唯の袖を元に戻した。


「でゅ、ら、はん?」


 唯は現状が理解出来ず放心状態であったが、ラシーヌは気に留めているのかそれとも、片膝をついて頭を下げた。


「失礼致しました。某、ラシーヌ・ル・ノードと申します。赤坂唯様ですね。早速で失礼ですが、転生の経験がお有りなのでしょうか?」


 落ちそうになった首を手で止めながら、ラシーヌはそう言った。


「はへ?」


「ん?どういう意味だ?」


 呆けている唯の代わりに、鳴斗が尋ねた。


「某、デュラハン族の特性としまして、魔力の探知に少々通じておりまして。鳴斗様程大量ではございませんが、唯様からも微量の魔力を感じまして。それで腕を拝見させて頂きました次第です」


 鳴斗はそれを聞いて精神統一し唯をじっと見つめた。確かに、微かな魔力の反応を感じる。特に腕から。


「魔法陣か」


「転生の記憶が無いのでしたら、おそらくは」


「……りかいがおよばないのですけれど」


 唯がポカンとした表情で淡々と、静かに、ゆっくりと言った。


「てんせい?というきおくはないです」


「左様でございますか。であればやはり、その魔法陣によるものと思われます」


「魔法陣には、魔法発動用に魔力が流れるんだ。……ジュラ・オスタでは自然だったけれども、確かにこちらの世界では特殊だな。魔法陣が何かのターゲットとして使われているなら、その特定に使えるかもしれない。紋様の意味ばかりに気を取られて、そこには気付かなかったな。覚えておこう。……ところでラシーヌ、この魔法陣の意味は分かるか?」


「申し訳ございません。某にもそこまでは特定が困難でございます。魔法陣に描かれている文字も一部しか解読出来ませんで。某、武術の方が得手としております故」


 申し訳なさそうにラシーヌが首を横に振りながら言った。デュラハン族は兜と鎧の接続が甘いので、その否定の行為だけで首が取れそうになる。金髪女性の首が体とズレるのを見て、唯の目がギョッとなった。


「首の接続についてはその、配慮をお願いする。しかし、そうか、一部だけか……」


 自分で言った言葉の重要性に、一間置いて鳴斗は気づいた。


「その一部!!教えてくれ!!」


 そしてラシーヌに詰め寄る。今は何でも情報が欲しい所であった。


「勿論でございます。……ええと……、『封印』……『血』……『時』……?でしょうか、これは。あとは……『解放』……、『世』……ここは二文字ですが、片方は申し訳ございません、某では読むことが出来ませんでした」


 ラシーヌは唯の腕をまじまじと見ながら、そう言った。

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