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5-2. 武蔵小金井潤一郎は鷹崎へ向かう・2

 被害者は女性三名。外見的な共通点は、腕の紋様以外は無し。歳についても二十代が二名、三十代が一名と、そこまで規則性があるようには思えない。共通点があるとすれば職場が鷹崎市内という点であるが、住居その他は一致しない。


 現場は鷹崎駅前。まさしく駅の前の歩道で起きた。目撃者は複数居るが、何れも犯人の人相に関する証言は無し。だが――


「……は?」


 犯人の証言に関して、思わず声が出た。あまりに突拍子がなさすぎて、声に出して読み上げそうになったが、辺りには人が居る。静かに、心の中でだけ読み上げる事にした。


 ――犯人は甲冑を着ていて、剣か何かで被害者の首を跳ねた、という目撃証言が多数。加えて、見間違いの可能性も高いと思われるが、床で躓いた際に首が取れた、という。


「…………冗談だよな?」


 何度かパチパチと瞬きをし、目を擦ってからよく見直す。


 確かに、『甲冑』『剣で首を跳ねた』『首が取れた』と言った信じがたい文字列がそこにある。見間違いでは無いらしい。


 余程変な取り調べでもしたのだろうか。だが、幾らアレが無能とはいえ、多数の証言としてこのような情報が出てくる事があるだろうか?


「……どうなってるんだこの世の中」


 思わず声に出た。轢き逃げ、銃撃、爆弾ときて、首を跳ねる首が取れる甲冑?御伽噺のデュラハンか何かか?いやそれにしたってこの日本に、西洋のそんな魔物が出るわけが無い。いや違う、そもそもそんな創作上の魔物がこの現実に存在するわけがないじゃないか。


 ……ないよな?


 潤一郎は混乱し、そして不安になった。


 昨日の爆弾事件の時点で随分現実味が無い浮ついた気分を味わっていたが、ついにここまで来たのかと思ってしまう。実際には、そう見せかけた愉快犯か何かの仕業だろうとは思っていても、ここ最近起きている不可思議な出来事の数々を思うと、もしやという嫌な考えが頭に浮かんで離れない。


「……いやだなあ」


 このまま新幹線に乗って別の所に逃げたい気分になってきた。だが、自分は警察という正義を、人々の平和を、現実を守る立場にある。逃げるわけにはいかない。


 そう自分に言い聞かせながらも、彼は窓の外の変わりゆく景色にしばし逃避する事にした。鷹崎に到着した際に待っている可能性のある、非現実的事象に備えて。

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