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4-6. 武蔵小金井潤一郎は未だ何も分からない・4

 車中、タクシーの運転手も黙っていた。署の近くで止めたのもあって、自分がどういう立場か理解してくれているのだろうと潤一郎は考える。雷鳴が未だ轟いてはいるものの、会話が無いというのは、考え事には丁度良い。彼はぼんやりと、事件のこと、そして今も何処かで逃げているであろう赤坂唯について考えを巡らせる。彼女は果たして純粋な被害者なのか。それとも。


 そして、未だ全容の掴めないモザイクの男についてもまた、少しだけ考えてみたが、やはり何も分からない。彼について分かっているのはせいぜい、服がダサいということくらいだ。


 自分がどんどんと深みに嵌っていくのを感じて、潤一郎は頭を抱えた。なんだこの事件は。一体どうなっているんだ。


 ピピピピピ。


 突然彼のスマホが鳴った。メールでは無い、昴からの電話であった。


「すまん」


 運転手にそう言うと、彼は電話を受けた。


「もしもし」


『武蔵小金井警部、先日の魔法陣について本庁から連絡がありました』


「それは千夏の範囲じゃなかったのか?」


『彼女は今忙しくて。――群馬の方で起きた殺人事件で、同じ模様が腕に刻まれた女性が被害を受けたそうです。彼女はその件で情報交換中です』


「群馬ぁ?」


 と、更にスマホにメールが入った。


「分かった、ちょっと待っててくれ、今車内だ、後で電話する」


『あっ、それは、失礼しました。分かりました、後程』


 そう言ったのを聞いて電話を切ると、今度はメールチェックに移る。


「忙しそうですね」


 静かな運転手が同情の色を浮かべながら言った。


「ええ、なかなかやりがいのある仕事です」


 潤一郎は苦笑いで答えつつ、そのメールを開く。安芸からのものであった。


「ああ!?」


 その文面を見て、思わず声が上がった。


「……大丈夫ですか?」


「……あ、あー……うん、はい。……あの、上野原に目的地変更して貰っていいですか」


「わ、わかりました」


 運転手は理由を聞かず指示に従う。


「はぁ」


 潤一郎は溜息を吐いてそのメールを改めて見る。


『古宿駅の監視カメラに赤坂とモザイクの男が映っていました。二人は鷹崎行きの電車に乗ったようです。鷹崎駅にも問い合わせたところ、降りた様子も確認されました。以後駅にその姿はありませんので、恐らく彼女らは鷹崎に居るものと思われます。現時点で重要参考人として手配する事は上の許可が出ていませんので、鷹崎の警察と連携するか、あるいは直接向かうか、そうした対応が必要と考えます』


 殺人。

 魔法陣。

 モザイクの男。

 赤坂唯という女。


 全てがまるで連動しているかのようである。


 偶然か、それとも。


 潤一郎には全く分からなくなっていたが、赤坂を追えば何かが掴めるかもしれないということだけは分かった。


 ではどうするのか。鷹崎の警察とは千夏も既に連携をしている。誰かが現地に居た方が話しも通りやすかろう。


 彼は、鷹崎に向かうことを決めた。

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