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3-7. 赤坂唯は迷う・1

[2019/6/5 12:00 東京都砺波区 城場地区の歩道]


 不思議な男性、幽谷鳴斗と別れた赤坂鳴は、一人城場地区を歩いていた。


 彼には「警察に頼れ」と言われたが、果たして本当にそうすべきか、彼女は決めあぐねていた。


 栃木は伊都宮での出来事が足を引っ張っていた。本当に警察は信用出来るのか?出来ないのではないか?彼女は自問自答する。


 だが結局、結論は出ない。そもそも自分が何故狙われているのか全く理解出来なかったからである。


 何故(Why)。

  誰に(Who)。

   何時(When)。

    何処で(Where)。

     なにを(What)。

      どのように(How)。


 5W1Hの全てが理解出来ないのだから、ではどうするかという点について考えが纏まろうも無い。


 いや、一つだけ分かっている。なにを狙っているか(What)が私である事だけは。


 彼女は諦めて、鳴斗の、あの不思議な男性の助言に従う事にした。今の状況下で唯一頼れるのが彼であった。勿論、彼が自分を狙っていて、今は油断させるために信頼を勝ち得ようとしている可能性は排除出来ない。しかし、かといってその可能性を考慮したとしても、今の自分は彼以外に頼る事は出来そうになかった。


 ふぅ、と溜息と共に彼女は観念した。信頼出来る人間を増やすという意味でも、まずは警察署に相談しに行く、それがベターであろう。彼女は彼から奢ってもらったコーヒーを飲み干してゴミ箱に入れると、意を決して強く足を踏み込んだ。


 そう、彼はコーピーを奢ってくれた上に、無償で防犯ブザーまでくれて、守ってくれるという約束までしてくれた。無償で。まずは信ずるに値するだろう。


 彼女は無償が大好きだった。それ以上に金が好きでもあった。


 金を使うでも無く貯めていき、通帳の金額が日々増していくのを見るのが好きだった。それ以外はあまり好きでは無かった。


 人付き合いに関しては特にそうだった。奢り、最低限割り勘でなければ飲み会にも参加しない程で、そのせいで彼女の交友関係は極めて狭い。頼れる相手が居なかった。職場に行こうと思ったのはそれでも頼れそうなのが職場の人間くらいだったからである。


 しかし彼は、そんな自分にも手を焼いてくれている。それは――自分が命を狙われているらしいという事は一旦置いておいて――嬉しい事のように思えた。


 何より彼は金をやけに持っている。


 利用ししゃぶり尽くせば、自分の貯金もガンガン増えていく事が期待出来るだろう。


 思わず唯は笑顔を浮かべた。


 世の中金だ。金こそ全て、Money is God. ああ金よ我が元へと集え。


「うふ、ふふふふふふふふふふ」


 手を広げてくるくる回りながら、彼女はとりあえず城場臨海警察署へと向かった。金を持っていて信頼出来そうな彼が薦めるのだからそれに従うべきだ。自分では道が分からないのだから。


「ママーなにあれー」


「人生の迷子よ、見ちゃいけません」


 通りかかった子連れが奇異の目で見ながら何やら聞き捨てならない暴言を吐いてきたような気がしたが、彼女はひとまず無視を決め込んだ。

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