3-6. 武蔵小金井潤一郎は相変わらず困り果てる・3
ピコン。
考え中、潤一郎のスマホが鳴った。
「すまん、……部下からかもしれん、ちょっと見ていいか」
「もちろんです」
スマホを取り出してメールの差出人を確認する。千夏であった。今度は何だと開いてみると、写真が添付されていた。
「……開けたくねぇなあ」
セキュリティの教育を嫌というほど請けている彼としては、メールに何かファイルが添付されているというだけで開く事を躊躇う。だが、それとは別にショートメールで「すぐ開いて下さい」という連絡まで来ていたので、止む無く開ける事にした。
それは死体の写真であった。
腕だけが写された写真が二枚。
一瞬、「なんだ、そういう趣味でもあるのか」と半ば本気で考えたりもしたが、すぐに送ってきた意図は理解出来た。
腕に何かの紋様が描かれていた。
大きな円の中に丸と線と文字が幾つも入り組んで描かれている。文字は日本語でも英語でもなく、潤一郎が知る限りどの言語のそれとも一致しないように見えた。自分が無知なだけだろうか。
千夏のメールには、「轢き逃げ事件の被害者の腕にこのようなものが刻まれていました」と書かれている。文字については「誰も解読出来ていません。似たような文字も無いようです。現在本庁含め問い合わせ中です」との事。どうやら無知なのは自分だけではないらしい。
「しかし、これが被害者に……ねぇ」
「どれですか?……ん?その紋様……」
安芸がスマホの画面を覗き込みながら、顎を手で擦った。
「何か心当たりが?」
「いや、ただ魔法陣っぽいな、と」
「確かに、たまに創作物とかで扱われる魔術のそれには似ている。だがしかしな……」
「ですよね、現実にそんなものが」
ドォン!!
安芸の言葉は轟音に遮られた。
「今度はなんだ!?」
突然下の方から爆発音が響いた。同時に床がグラグラと揺れ、バタンとパソコンが机から落ちた。
「何事です!?」
異変を察知して安芸も立ち上がり、そして揺れで転んだ。
「いてっ、地震でしょうか!?」
「いや、揺れはもう収まった。それより外が煩い。もしかして……」
潤一郎が最悪の事態を口にしようとした時、安芸のスマホが鳴った。
「ここの刑事からです。もしもし?」
安芸がスマホを取ると、
「は?」
すぐに間の抜けた声を上げた。
「どうした。まさか、さっきのは爆破テロだった、とか言わないよな?漫画とかドラマじゃないんだぞ?」
「……そのまさかです」
潤一郎は頭を抱えながら、「見てくる!!」と叫んで会議室の外に出て、恐らく音源であろう階下の玄関へと向かった。




