11-2. 烏山景は罪深き者を探す・2
ザバァン。
港を背にして探していると、突然その港、海の方から、大きな波の音が聞こえた。
一瞬津波か何かかと身構えるが、そういうわけではないらしく、特に水が押し寄せてくる気配は無かった。
念のためそちらに光を向ける。水に呑まれて死んでも転生は出来るだろうが、しかし『魔法使い』様にもっと貢献する形で死にたい。
波は港の縁にあたり、音を立てて引いていっていた。そこは気配の通り。
だが予想していないものがそこに居た。
「貴様、さっきの」
坂の中腹辺りで不審な声を上げた男達、その内の一人――パッと見た第一印象では刑事か何かのように見える――が、ずぶ濡れの状態で立っていた。
「誰だ!!何時此処に来た!!ここは閉鎖中だ!!」
そう言ってライトを男の顔に当てる。
「まぶしっ。いや、その、ちょっと色々あってさっきデカい海蛇に吐き出されてね」
その言葉を聞いて、他の信者と目を合わせる。
海蛇。『魔法使い』様が仰っしゃられていた怪物の事か?
「ええと……、き、君達、あれだろ、剣を探しているんだろう?海竜族の」
「………………」
何と答えるべきだろうか。景は迷う。確かに『魔法使い』様は仰っしゃられていた、海竜の剣を奪え、と。
「何故知ってる」
隣に居た男が迂闊にも口を滑らせた。
「おい、黙ってろ」
景が咎めると、その男は不要な情報を提示してしまった事に漸く気付いたのか、バツの悪そうな顔をして口を手で塞いだ。
出てしまった言葉は今更取り消しようがない。景は舌打ちした。
「……ああ、そうだ。それがどうした」
取り繕う事も出来ない。景は認めた上で、『魔法使い』様から渡された銃をポケットの中で握った。いざとなれば。
「ああ待て待て、君達と諍うつもりは無い。私は君達に会いに来たんだ」
「どういうことだ」
「諸事情あって、君達の教義を昨日になって知る事になってね。いや、実に魅力的だと思ったんだ」
「……」
嘘くさい。
「何を企んでいる」
「企むなんてそんな。私はただ君達にその、協力というか、君達の組織に入れてほしいと思っただけなんだ」
「……」
凄く胡散臭い。
「まぁその、ね、こんな深夜、こんな港でそんな話をしても疑われるだろう。率直に、かつ真摯に言おう。私はかつて君達の儀式を止めようとしていた」
なるほど『罪深き者達』という意味が理解出来た。やはり『魔法使い』様は正しい。
「そうか、それは死にたいという意味でいいな」
景は銃を抜いた。
「待て待て待て待て、”していた”だ、分かるか?過去形だ。私はね、もうこの世界に心底うんざりしてしまったんだ」
「ほう?」
「それで追うのを止めた。儀式もどんどんやってほしい。協力したいんだ」
「どう協力してくれるのかな?」
ただの人柱になるというなら要らない。人は足りている。こんな怪しい人間を入れる事は、『魔法使い』様が許しても自分が許さな――
「海竜の秘宝。あれの場所を知っている」
時が止まったような感覚。
話題に出した時点でもしやとは思っていたが、まさか本当にその単語を口にするとは。
しばし沈黙が場に流れた。
「ほう?何処だ」
「それなんだが。実は困った事になっていてね。魔法――分かるだろう?」
景は思わず息を呑んだ。当然知っている。それがある世界を求めて『魔法使い』様に協力しているのだから。
「魔法が使えないと取れない領域にある。だが私は魔法を使えない。使える人間ならばそこに案内出来るのだが」
「何がいいたい」
「君達の指導者に会わせてほしい。その剣の場所を教える事で、代わりに私を、組織に入れてほしい。転生したいんだ」
――武蔵小金井潤一郎は、ライトに照らされながら、必死な顔でそう訴えた。




