11-1. 烏山景は罪深き者を探す・1
[2019/6/7 0:55 茨城県東茨城郡大嵐町 大嵐駅周辺]
「奴ら、何処へ消えた!!」
『新たなる運命』に属し、上からの指示を受けてこの地の海竜、そしてその海竜の秘宝を探していた男、烏山景は、突然消えてしまった不審な男達の姿を探していた。
恐らくあれは、上の、かの『魔法使い』の言っていた、『訪れるかもしれない罪深き者達』かもしれない。
景が属する『新たなる運命』は、「信じる者はより良い世界への転生が約束される」「ある儀式を起こせば生きたまま新しい世界へと行く事が出来る」という二つの教義が柱となっている新興宗教である。表立った活動は殆どしていないが、草の根的に広がっている。
各地方に支部があるが、全体を指揮するのは一人の『魔法使い』と呼ばれる人物であり、教義を訴え広めていくのもその『魔法使い』が基本的には実行している。それが男か女か、若いのか年寄りなのか、それすら分からない。
恐らく外から見て、率直に言ってしまえば怪しさしか無いだろう。
景も最初に『新たなる運命』の勧誘を受けた時は信じるつもりは無かった。
信じるようになったのは、『魔法使い』が”実践”した事に尽きる。
あの方は目の前で奇跡のような出来事を起こした。それが何であるかは、ああ、今考える事も出来ない。
そして言った。「私を信じていればこのような事は簡単に出来るようになる世界を作る事が出来る。仮に死んだとしても、このような事が出来る世界へと転生する事が出来る。私がその証明である」と。
まるで”その時の奇跡”を目の当たりにしているようだ。
だがそんなはずは無い。『罪深き者達』が奇跡を起こせるはずがない。
つまり、探せば見つかるはずなのである。
景は率いてきた他の『新たなる運命』に、辺りをくまなく探すよう指示する。
「もし『罪深き者達』が訪れたならば、彼らが秘宝を持っているやもしれん。必ず捕まえろ」
それが『魔法使い』からの指示であった。
軽い坂の下にあるアウトレットからは、上でパトカーがサイレンの光を照らしているのが分かる。下手に動けば連中に見つかるかもしれないが、今は『魔法使い』の言う事を実行するべきだ。いざとなれば連中を巻き込んで死ねばいい。そうすれば転生出来るのだから。




