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10-9. 幽谷鳴斗と武蔵小金井潤一郎の時が止まる・2

[2019/6/7 0:45  茨城県東茨城郡大嵐町周辺 ハルワダットの胃の中]


「よくやってくれた!!」


 鳴斗はそう叫びながらその空間へとやってきた。


「誰だこのボタンを押してくれたのは!!最高だ!!最高のタイミングだ!!御礼に私が大好きな駅弁を十個くらいまとめてプレゼントしたいくらいだ!!」


 鳴斗は喜びの雄叫び的なセリフを叫ぶ。ただ誰も気付いていない。気付く方法が無い。


「一体何が……くっさ、くっさいなここ!!」


 潤一郎は鳴斗の肩を離すと鼻を摘んだ。


「なんか凄くぶにょぶにょして……なんだここ、洞窟?でもこの匂いは胃液みたいだな」


「ご明察。ここは胃の中だ」


「は?」


 潤一郎は思わず聞き返した。無理も無い、鳴斗は思う。


「ここが例のハルワダットの胃の中だ。そして……ああ、彼女のこれ」


 そう言って彼は人魚――上半身が魚で下半身が人の半魚人――の防犯ブザーを指さした。


「これを彼女が押したお陰で時間が停止したんだ」


「か、彼女……?」


 潤一郎はその半魚人の姿を見て男女の区別がつかないようで、鳴斗は改めて彼女の姿を見る。確かに胸元は少し盛り上がっているが、しかし顔は、パッと見てただの魚のソレを十倍程凶悪にしたものにしか見えず、そこから男女の区別を付ける事は、人魚というものを知らない、或いは上半身が人間で下半身が魚の人魚しか知らない者からすると難しいのだろうと鳴斗は納得した。自分も、前世の記憶がうっすら残っていないと判断つかなかっただろう。


 だがそこは重要ではない。


 鳴斗は防犯ブザーのボタンを押した。


 すると時間が動き出す。胃液が波打ち、ボタンを押した人魚がいきなり現れた自分達に「ひぇっ!?」と驚いて腰を抜かしている。


 彼は自分の深謀遠慮――実際にはただの気紛れ――に感謝した。彼は魔力の節約を考え、もう一度ボタンを二度押して解除するという機能を付けていた。その機能がなければ、自分達は時間の止まった空間に取り残されたままになってしまっていただろう。


「何より!!君があそこでボタンを押してくれなかったら私達はどうなっていたことか!!奇跡だ!!感謝だ!!」


 防犯ブザーをひったくった後、ヌメヌメとした彼女の手を握ってぶんぶんと振るう。鳴斗は今奇跡の如き展開にハイになっていた。


「落ち着け、彼女……?が全く理解出来ていないぞ」


 困惑の表情を浮かべている潤一郎であったが、それ以上に困惑の色を隠せていない彼女を見て、鳴斗を諌めた。


「ああ失礼」


 鳴斗は手を離した。


「あ、あー。え、……人間……さっき、デュラハンと立ち回ってた?」


「ああ、気付いていたか。先程ちょっと用があって来た人間、幽谷鳴斗と言う。君は?」


「れ、レナ・サフ」


「レナ君。君はよくやってくれた。ここから全くもって、ここから上手いことこう、なんか上手くいったら、美味いものを食べさせてあげよう」


 興奮で語彙が無くなっていた。


「あ、ありがとう、ございます。……ところであんた達はなんでここに?あと……あんた、魔王……様みたいな気配がありますけど、気の所為ですか?」


「当たりだ。転生体だ」


「ひぃっ、失礼致しました!!」


 レナはそれを聞いて咄嗟に土下座する。


「いいんだ気にするな。所詮は前世の話だ。我々が此処に来た理由は話せば長くなるが、端的に言えば君の押したボタンのせいだ。そして我々はここに、ハルワダッドに用が有る」


「ハルワダッドに?」


『なんか呼んだかね』


 胃の中に声が響いた。

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