10-8. 幽谷鳴斗と武蔵小金井潤一郎の時が止まる・1
[2019/6/7 0:45 茨城県東茨城郡大嵐町 大嵐駅周辺]
「どうすんだお前!!」
思わず潤一郎が鳴斗の胸ぐらを掴んだ。
「ラシーヌさんの覚悟が台無しじゃないか!!」
「いや悪かった、悪かったでも理由があるん……」
言いかけて。
「……あれ?」
鳴斗は違和感に気付いた。
手でブレていた光の筋がまっすぐこちらを照らして止まっている。
その光に照らされている、アウトレットから向かってくる連中の動きも止まっている。まるでパントマイムか何かのようである。だが微動だにしない。本当に、時間が停止したような。そんな感覚が――
「まさか」
そんな奇跡が起きるのか?訝しむ鳴斗に、それが起きた事を示す音声が鳴り響いた。
『ピロロロロロロン♪』
『お呼び出し、お呼び出し♪』
『誰かが貴方を呼んでいる♪』
それを聞いて急いでスマホを取り出す。
そこには『移動』のボタンが表示されていた。
「なんだ今の音は?」
潤一郎が状況を理解出来ず、辺りをキョロキョロと見回しながら尋ねる。
「今何が起きている?まるで時間が止まったようだ」
「ご明察」
「は?」
「時間が止まったんだ。私が以前作った仕組みのお陰で」
「仕組み?時間?止まった?」
未だ呑み込めない。幾ら非日常的現象に慣れつつ合った潤一郎でも、時間の停止までは「はいそうですか」「なるほど」などと素直に受け入れる事が出来ずにいた。
「詳しい話は後だ。今はこの機会を利用するしかない。掴まってくれ」
鳴斗の言葉に渋々従い、潤一郎は彼の肩を掴む。
それを確認して鳴斗はスマホに表示された『移動』のボタンをタップする。
二人の姿は、照らし出すライトから瞬時に消え去った。




