10-4. 幽谷鳴斗は資料を読む・2
「唯様のそれとは異なりますので分からないのです」
「いや、そこではなくて、何、魔法陣にも波長というのがあるのか?」
「刻まれた魔法陣にも魔力が使われている以上、魔力の波長というのは存在する。私を追跡してくれた時のように、魔力に敏感なラシーヌのようなデュラハン族ならそういった痕跡を嗅ぎ分けられる」
「なら、……言いたくはないが、犠牲者の腕を調べれば?」
「同様の痕跡を追跡する事は可能かもしれませぬ」
「……ああ、くそっ」
そこまで聞いて潤一郎は悪態をついた。自分に対して。
「もっと早く聞くべきだった、その話」
この話を、追放直前に聞いていれば、手掛かりが得られたかもしれないのに。
「お話するのが遅れて申し訳ありません。しかし、鳴斗殿が魔法を使えるように戻れば、署への潜入も容易となり、その犠牲となった方の痕跡を得る事も可能となりましょう」
「食事は用意して欲しいが」
捜査資料を片手に、途中で寄ったコンビニで買ったおにぎりにぱくつきながら、鳴斗が言った。
「どの道署があの調子では何も進まなかったろう。自分を責めても仕方ない。……責めたいのは私の方だ」
一通り食べ終えて、ふぅ、と鳴斗が息を吐いた。
「私があの時、勇者を完全に殺していれば。そうすれば……こんな事にはならなかったかもしれない。或いは、私がもっと記憶を持っていれば。自分ではどうにも出来ない事だと分かってはいるが、どうにか出来なかったのかと思うと悔しくて仕方がない」
「言葉を返すよ。自分を責めるな。今すべきは次の犠牲を止める事、最悪の場合を阻止することだ」
潤一郎が言う。
鳴斗は頷くと、今度は彼のスマホを覗く。その時点までの捜査状況がまとまっているメールが幾つか届いている。流石に魔法について知識の無い状態で行われている捜査、あまり目新しい情報は無い。あくまで"思考の整理には使える"という程度だろうか。
「ん?」
だが、一つだけ。
彼はとあるメールを見て違和感を覚えた。正確には、その――




