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9-5. 幽谷鳴斗も逃げ続ける・3

『緊急、緊急』


 無線が入った。


『逃亡している銃撃事件”と思われる”犯人”らしき”人物が奪った”とされる”車両について、ナンバーの特定が完了した、以下の番号の車を発見し次第拘束すること、と伊都宮署長は仰っているが、現場の判断に任せる』


 無線越しに、後ろから藤助の怒鳴り声が聞こえてくる。内容に不満げなご様子である。


 そこから読み上げられるナンバー。聞いて潤一郎の顔が更に曇り始めた。


「……一致してる気がするがどうだろう」


 潤一郎が尋ねる。


「ふらふらで見たので不安だが、多分、一致している」


 鳴斗が答える。


「急ぎましょう」


「勿論」


 ラシーヌの言葉に答えるように、アクセルを強く踏み込んだらしく、ブォンという音と共に速度のメーターの針が右側へと振れていく。



 もう走る車も極めて少なくなった夜の道を、真っ黒なパトカーがその素性を隠して走り抜けていく。



 唯は大丈夫だろうか。


 資料に目を通しながら、ちらと窓に映る景色を見る度、鳴斗は思う。


 今は自分の身の方を考えるべきだ、そこまで気にする義理があるのか?と自分でも思わなくもない。


 だがそれでも、街道の明かりが流れていくのを目にして、真っ先に浮かぶのは彼女の事であった。


 何故かは、彼もよく、わからない。

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