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精霊魔力の暴走

〈こ、こ、これは……っ〉


昼食時の混雑が少し収まった王宮内の食堂の一画で

アミシュ=ル=コルベールは固まっていた。


今日も今日とて昼食を食べるハルトを覗き見していたのだが、彼が食べ終わったトレイを返却口に置いた直後に、アミシュは引き寄せられるようにその場所へと行った。


トレイの上には……ハルトが使用した後の使い捨てのカトラリーが……!


そういえばオークションでは美男子文官の使用済み

カトラリーで壮絶な競りが繰り広げられていた。


その時は使用済みのカトラリーだなんて……

と思っていたのだが……


〈相手がハルトの物となると欲しいかもっ……!

い、いやでもダメでしょっ人としてどうなの?

自分だったらイヤじゃない?使った後の物を持たれるなんて〉


アミシュの手がふらふらと彷徨っている。


ダメよ、ダメダメ!


しかし心とは裏腹にアミシュの手が確実に

カトラリーの方へと伸びてゆく。


ダメっ!やめて!やめるのよ、アミシュ!

アミシュ!


「アミシュっ!!」

「ごめんなさーーーいっ!!って、え?アレ?

マクシム?」


唐突に大声で名を呼ばれて、

アミシュは思わず謝った。

しかし声の主が同僚のマクシムだと気付く。


「もー、驚かせないでよ。でも助かった、

もう少しで道を踏み外すとこだったわ……」


アミシュが心から礼を言うとマクシムはさもワケがわからないといった顔をした。

そりゃそうだ。


「相変わらず変なヤツだな、それより班長が呼んでる、緊急招集だ」


「何かあったの?」


「なんかとんでもない事が起きたらしいぞ」


「えー……イヤだなぁ……」


「とにかく急ごうぜ」


「わかった」


魔術師団の詰め所へと急ぎ歩き出すマクシムの後を、アミシュも続いた。


その時、アミシュはふと精霊の気配のような不思議な感覚を覚えた。


〈……?今の、何?一体どこから……?〉


「アミシュ!早く!」


立ち止まって、今感じた気配を探ろうとしたアミシュをマクシムが急かす。


「う、うん……」


〈気のせいかな……?〉




詰め所に戻ると班長がアミシュ達に告げた。


「宝物庫で魔力暴走が起きている。封印してあった古代種の精霊の力の暴走だ」


「ど、どうしてそんな事が!?」


ポピーが問うと、

班長のゲランが険しい顔で答える。


「王女殿下が精霊の石を壊してしまい、

中に封じ込められていた古代種の精霊の力を解放してしまったそうだ。突発的に解放された事により、力の安定を保てなくなった精霊力が暴走したらしい」


「こ、古代種……」


アミシュは眩暈を起こしそうになった。


なんて厄介なものを解放してくれたんだ。


マクシムがアミシュに尋ねた。


「古代種の精霊?そんな者がいるのか?」


「……もう絶滅した精霊だからね、知らなくても当然。でもその精霊の魔力を封じ込めた大昔の魔道具が現存するのよ。大陸中でも三つしか残っていないと聞いたけど……」


「そのうちの一つが我が国の宝物庫にあったというわけだ」


副班長のバルデがアミシュ達に指示を伝えた。


「ウチの班とあともう一班、精霊魔術師のいる班が事態の収拾に当たる事となった。最優先事項は王女殿下の救出だ、現場では精霊魔術師の指示に従うように。頼めるな?コルベール」


「精霊魔術師として尽力します」


アミシュが胸に手を当て言った。


そうしてアミシュ達は現場となっている宝物庫を

目指した。




◇◇◇◇◇




その頃、王太子宮も既に騒然としていた。


王太子シルヴァンの執務室にハルトを含めた数名の騎士が呼ばれる。


眉間に深いシワを刻んだシルヴァンが

端的に告げた。


「レティシアが仕出かした」


その言葉を受け、

年長の騎士がシルヴァンに問う。


「王女殿下が如何なさいました?」


「宝物庫にある王家の至宝の一つ、

“精霊の石”を持ち出そうとして壊した」


「……!!」


ハルトの目が大きく見開かれる。


ハルトのその反応を見て

シルヴァンが言った。


「コルベールはやはり精霊の石を知っていたか」


「……はい、遠い昔に先祖が王家に献上したと聞かされておりますので」


「そうか、そうだな。他の者にも詳しく説明してやりたいが、事態は一刻を争う。既に精霊魔術師を含めた魔術師が対応しているが、コルベール、お前も行ってくれ。他の者はコルベールのサポートだ」


「承知致しました」


「殿下、最優先事項は王女殿下の救出でよろしいですね?」


騎士の一人が問うと、

シルヴァンはため息を吐きながら言った。


「それぞれ思うところもあるだろうが、そうしてくれ。

レティシアにはこの件について必ず罰は受けさせる。父上にも文句は言わせん。皆、頼んだぞ」


「「「御意」」」



こうしてハルトも数名の騎士と共に宝物庫へと

向かう。



〈“精霊の石”か……アレの扱いはル=コルベール家の方が向いているのだが……〉


ここにアミシュが居たら、どう対処したのだろう。


やはり()()()()だろうな……


同じコルベールの血筋だ。


成功するかは賭けだが、やれるだけやってみよう。



まさかその宝物庫にアミシュがいるなどとは

思いも寄らないハルトであった。

















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