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わたしの婚約者なんですけどね!  作者: キムラましゅろう


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16/16

エピローグ わたしの旦那さまなんですけどね!

「う~アミシュぅぅ……!寂しいよぅ……

ホントに今日で辞めちゃうの?」


魔術師団の同期で友人のポピーが涙ぐみながら

アミシュに抱きついた。


「うん……ごめんねポピー……今のわたしに魔物の討伐は無理だから……」


「そうよね、お腹の赤ちゃんに何かあったら大変だもんね……寂しいけど我慢する、でも絶対ちょくちょく会いに行くからね!」


「うん、待ってる!」


「でもアミシュがお母さんになるのかぁ……

楽しみだね、男の子かな?女の子かな?」


「ふふ、どちらでもいいわ、元気に生まれてくれるなら」


「そうだね」


アミシュとポピーは互いに微笑み合った。


そんな二人にマクシムのひと言が水を差す。


「……アレ?でもお前たちの結婚式って確か半月前

だったよな?ん?計算が合わなくないか?」


それを聞き、アミシュがピシャリと言い放つ。


「マクシム、お黙り」


「……はい」



二人で故郷であるコルベール領に帰ってからすぐ

ハルトとアミシュは寮を出て、一緒に暮らし始めた。


半月前に結婚式も無事に終わり、

その次の日から休暇を取って新婚旅行に行こうとした矢先にアミシュが吐き気を催した。

それを見たハルトが慌てて王宮の医務室に連れて行くと、なんと妊娠が発覚したのだった。


決してマクシムのように指を折って計算してはならない。


どうせ遅かれ早かれ()()()()だけの事なのだから。


当然妊婦が魔物の討伐などとんでもない話なので、

アミシュはこれを機に魔術師団を退団する事となった。


今日が団員としての最終日である。



「でもアミシュ、これからは王宮での旦那さま

ウォッチングが出来なくなるから寂しいでしょ?」


ポピーがニヤリとしながらアミシュに言った。


アミシュは深くため息を吐いて答える。


「そうなのよ……それだけが残念でならないわ……

ハルトは結婚してますます人気らしいし、心配で……」


「なんでだよ、旦那なんだから家で見放題じゃん」


ポピーが呆れてマクシムを見る。


「わかってないわねぇ、働く夫にときめきたい

妻ゴコロが。そして旦那に悪い虫が(たか)らないように見張りたい気持ちが……」


「わかるような、わからないような……」


難しい顔をするマクシムを他所に、

アミシュは悪巧みをするような笑みを浮かべて言った。


「でも届け物とかなんとか理由を付けて王宮に来てはこっそり覗いて見守るつもり」


「それ、ナイスアイデア」


「でしょ?」


「それってストーカーというより監視……


「「マクシム、お黙り」」


「……はい」


そんな気の置けない仲間との時間を名残惜しく

感じながら、アミシュは魔術師団の詰め所を後にした。


既に団長や班長と副班長には挨拶は済ませていた。


アミシュの足が自然と王太子宮へと向かう。


この時間なら昼休憩中のハルトに会えるかもしれない。


アミシュが王太子宮へと続く道を歩いていると、

道沿いのベンチの前に立つハルトの姿を見つけた。


〈ハルト……!って、アラ?〉


よく見るとハルトは一人ではなかった。


侍女を一人連れた令嬢と一緒だった。


令嬢は頬を赤めウットリとした表情でハルトを見上げている。


〈ちょっ……!?何!?〉


もう少し近づくと令嬢の声が聞こえて来た。


「コルベール様、一度お話をしたいと常々思って

おりましたのよ、こうして偶然お会い出来たのは

何かの運命かもしれませんわね」


「運命?」


「そう、本当に結ばれるべき正しい相手との運命」


〈な、な、何言ってるのこの人!?

本当に結ばれるべき相手って何!?運命って何!?ハルトはわたしの旦那さまなんですけどね!?〉


アミシュは離れた場所で一人憤慨していた。


ムカムカと腹を立てた所為で

気分もムカムカしてきた……悪阻(つわり)の所為だろう。


次第に吐き気が込み上げて来て、道の往来で吐くわけにもいかず、アミシュは魔術師団の詰め所へと引き返した。


そして詰め所のトイレへと駆け込む。


ダメだ……ハルトに会いたかったし、さっきの令嬢とどうなったのか死ぬほど気になるが、とてもじゃないけど戻れない。


心配だけどこのまま帰ろうとトイレを出た。


しかし扉を開けた瞬間、眩暈がして立位姿勢を

保っていられなくなる。


このままでは床に体を打ち付ける……!

せめてお腹だけは守らねばとアミシュは咄嗟に腹部に手をやった。


衝撃を覚悟する。

でも思った衝撃は訪れなかった。

代わりに優しく包み込まれる感覚がした。

そして見知った大好きな香り。


「……ハルト?」


アミシュはハッキリしない頭のままその名を呼ぶ。

そして見上げるとやはりそこには愛しの旦那さまの顔があった。


「大丈夫か!?アミシュっ……」


「……どうしてここに?」


さっきの令嬢とはどうなったの?と聞きたいが、

それを口にすると吐き気が戻って来そうだったので

やめておいた。


心配な気持ちは消えないが、ハルトが自分を想ってくれてるのは本当だと信じているから。


「そろそろ詰め所から出てくるだろうと迎えに行こうとしたら変な令嬢に声をかけられて、思いの(ほか)時間を取られてしまった。それで急いで詰め所に来たらキミがトイレに駆け込んだのを目撃した魔術師が教えてくれたんだ」


「そうだったの……」


それにしても


「変な令嬢って……」


アミシュが呟くと、ハルトが苦虫を噛み潰したような表情で言った。


「ああ、ただ偶然道で行き交っただけなのに運命だとか気持ち悪い事を言う変な女だった。不気味だったから、二度と近づくなとキツめに脅したら半泣きになりながら去って行ったよ。ホントに一体なんだったんだ……」


あまりに腹立たしげに言うハルトを見て、

アミシュは思わず吹き出した。


「それは確かに……不気味よね」


「まったくだ。それよりアミシュ、もう帰ろう」


「仕事はいいの?」


「今日はもともと午前勤務だったんだ」


そう言ってハルトはアミシュを抱き上げて歩き出した。


〈あぁ…落ち着く。やっぱりハルトの側は安心出来るなぁ〉




側にいるだけで幸せを感じられる人。


そんな人と出会い、結ばれる事が出来て本当に幸せだと思う。


一時はこの想いを諦めようとしたけれど、


きっと結局は忘れられずに一生ハルトだけを想い

続けていたんだろうな。


アミシュはそうならなかった事に心から感謝をした。


「ハルト……

あの日、屋上から叫んでくれてありがとうね」


「なんだ?どうしたいきなり」


「ふふ、だってハルトが人前で必死になって叫ぶなんて」


「俺だってやる時はやる」


「ふふふ」


アミシュはハルトの頬にキスをした。




その後アミシュは玉のように可愛い女の子を

出産した。


アシュリと名付けたその子は、

ハルト譲りのグレイベージュの色とアミシュ譲りの

ふわふわなクセっ毛をしたパパ大好きっ子に

成長した。


アミシュは一児の母になっても、

相変わらずたまに王宮に通っては大好きなハルトを覗き見していた。


ただ変わったのは父親が大好きな娘のアシュリと

共にウォッチングをしているという事だ。


ハルトも最初は親子では止めろと言っていたようだが、あまりにも妻と娘が楽しそうにしているのでそれ以上は何も言えず、諦めたそうだ。


ハルトは今では王位を継いで国王となった

シルヴァンの護衛騎士の隊長を務めている。


国王からの信も厚く、いずれ近衛騎士の最年少団長になるのではないかと囁かれているほどだ。


なのでハルト一家がコルベール領で暮らす事はなさそうだ。


それでもいい。

ハルトと子ども達と共に楽しく暮らせるのなら、

どこに住んでも幸せだとアミシュは思う。



「あ、ママ!パパがこっちに向かって歩いて来るよ!パパー!」


アシュリがハルトに向かって駆け寄って行った。


ハルトが4歳になった娘を抱き上げて

こめかみにキスをする。


「アシュリ、今日もママと一緒に王宮に来ていたのか?」


「うん!でもきょうはパパうぉっちんぐはしてないよ?パパをむかえにきたの」


「そうか、ママは?」


「あそこ!」


アシュリが小さな指を突き出して母親のいる方を

指し示す。


そこには最愛の妻が立っていた。


「アミシュ」


名を呼ばれ、昔と変わらない愛情を込めた眼差しで微笑んでいる。


ハルトはアミシュの元へと向かう。


アミシュがハルトに声かけた。


「お仕事ご苦労様。今日はお天気がいいし、いち早くハルトに報告したい事があって迎えに来たの」


「報告?」


アミシュはハルトの耳元に顔を寄せ、

そっと耳打ちをした。


「……ホントか!?」


ハルトが一瞬驚いた顔をしてアミシュを見た。


その表情に喜びが滲んでいるのを感じ取った

アミシュが満面の笑みを浮かべる。


そして自身の腹部に手を当てながら頷いた。



それから数ヶ月後、


精霊使いの血筋コルベール家に

アミシュそっくりな赤毛の男の子が生まれた。


アルトと名付けられたその男の子が

大陸一の精霊使いと謳われるようになるのは

これより19年後の事で、

今はまだふくふくの乳飲み子だ。


母であるアミシュの腕の中ですやすやと眠っている。



その様子をアミシュはハルトと共に


いつまでも飽きる事なく見つめていた。





            終わり








これにて完結です。


やはり短編はあまり内容を詰め込まないのでさくさく終わりますね。


読者さま皆さま、最後までお付き合いくださりありがとうございました。


さて最後に出てきた息子のアルトですが、

作者が大昔に考えた物語の第二主人公でございます。

いつか彼と彼の大切な人のお話も書ければなぁと思っておりますが、書けるかな?


話は逸れましたが

今回も沢山の読者さまに応援して頂き、本当に嬉しかったです。

最後まで突っ走れるのも読者さまあっての事。

つくづく有り難いと、どの方向に住んでおられる読者さまにも手を合わせられるよう回転しながら感謝しております。


本当にありがとうございました!



もう一度、皆さまに心から感謝をこめて。




        キムラましゅろう

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さんの元気で一途で突き進むヒロインが大好きです ヒーローも一途 文章も軽快でダイの名前見るたびワクワクします [一言] これからも楽しい作品を読める幸せをお待ちしています
[良い点] 主人公達が一貫していたところが良かったです。 [気になる点] 最後の令嬢は何物でしょうか?
[一言] ほっこり温かな気持ちでいっぱいになる、素敵なお話をありがとうございました! いつかアルトくんの物語が読めるよう祈りを込めて、シリーズものを格納しているカテゴリーに、ブックマークを追加いたし…
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