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最終話 バカは死んでも治らない


 アイリちゃんは私達にお礼を言うと、そのまま帰ってしまった。


 私達は車で送ると言ったのだが、買い物してから帰ると言い、断られた。

 多分、1人になりたいのだと思う。

 兄は消え、思うところがあるのだろう。


「これでおしまい?」


 私はベリアルに聞く。


「元凶は潰したな。だが、まだ天使共が残っている。それを潰さんとな……」


 べリアルがそう言った瞬間、再び、性悪姉弟が押し付け合いを始めた。


「また海外に行くの?」

「いや、こっちでの仕事があってな……」


 忙しいんだろうなー。


「頑張ってー」

「まあ、目標は見えてきた。あとは少しずつやるさ…………」


 ベリアルはそう言い、アンジュを見た。


「な、なんだよ! やる気か? この大公級天使アズラー様を舐めるなよぅ」


 アンジュはパリティを盾にしながら威勢のいいことを言っている。


「僕はやんないからね。死ぬなら一人で死んでよ。ってか、いい加減、放してよ!」

「私達は一蓮托生だろ!」

「勝手に決めるな! アンジュが死んでもサクラお姉ちゃんのことは任せておいて。だからベリアルに殺されろ」

「ふざけんな! ベリアル、こいつは殺した方がいいと思うぞ! 私は清廉潔白だから大丈夫!」


 ホント、醜いし、性悪共だわ……


「こいつらは無視しましょう」

「…………まあ、君に任せる」


 ベリアルは処分したいんだろうなー。


「帰るかなー」

「ですねー。そろそろサマンサさんを迎えに行かないと拗ねますし」


 ………………忘れてた。

 あの子、外だと存在感がないから完全に忘れてたわ。


「ベリアル、私らは帰るわ」

「うむ。気を付けてな」


 それは運転するキミドリちゃんに言って。


「アンジュは歩いて帰る?」

「いや、乗せろよ。私、めっちゃ働いたじゃん」

「僕はいいや。遊んでから帰る。いいものが見れて楽しかったよ。ばいばーい」


 パリティはそう言うと、姿が消えた。


 いいものって、勇者君のことかな?

 本当にそれだけのために来たのか……


 私達はこの場で解散となった。

 ベリアルと別れた私達は近くのファミレスでサマンサを回収し、アンジュをサクラちゃん家まで送っていった。

 そして、家に帰ると、パソコンを起動させ、小さくなったレッドドラゴンをパソコンの上に置く。


「どう?」

『振動と音がうるさいなー』


 レッドドラゴンはそう言いながらも丸まって、眠る。


「面倒じゃし、妾も気になるからヒーターでも買って、巣を作ってやったらどうじゃ?」


 まあ、パソコンの前にいるのは基本的にウィズだし、ウィズが邪魔だと思うなら場所を変えたほうがいい。

 ヒーターぐらいは買ってやるか。


 その後、私はキミドリちゃんと共に電気屋に行き、電気ヒーターを買い、ペットショップで適当な毛布と牧草を購入した。


 家に戻ると、部屋の隅っこに毛布と牧草を敷き、ヒーターをセットする。

 そして、パソコンの上で寝ていたレッドドラゴンを掴み、牧草の上に乗せた。


「これでいい?」

『うむ。素晴らしいな。これはいいものだと………………』


 レッドドラゴンは満足したのか、しゃべっている途中で寝てしまった。


「こいつ、もう寝やがった……」

「本当に置き物ですねー……」


 私とキミドリちゃんはさすがに呆れてしまった。


「いいや、このトカゲは放っておいて、飲もう」

「ですねー。アイリさんの今後の人生に幸があることを願って飲みましょう」


 キミドリちゃんは理由を考えるのが得意だなー。


 私達はまだ昼間だが、お酒を飲み始めた。

 この日の宴会は深夜を越えても続き、いつものように楽しいものだった。




 ◆◇◆




 あれから1ヶ月が過ぎ、11月となった。

 外はかなり寒くなったため、部屋には暖房がついた。


 レッドドラゴンはほぼ起きてこない。

 たまに私達が宴会をしていると、のそのそとやってきて、ポテチを数枚食べ、寝床に戻って寝るくらいだ。


 しかし、こいつは迷惑なことをすることがある。


 それはドラゴンの習性である。

 こいつは私やキミドリちゃんのアクセサリーだったり、ウィズの持っているよくわからないパソコンのパーツを自分の寝床に集めるのだ。


 いつ起きているかわからないが、キラキラするものをやたらと蒐集する。

 見た目はトカゲだが、こいつは立派なドラゴンなのだ。


「あれー、ここに置いておいたゲームソフトがないなー」


 キミドリちゃんがテレビの前でごそごそしている。

 私とサマンサはこの前買ったコタツに並びながら座ってそれを見ていた。


「どうせドラゴンが盗ったんじゃない? CDだし、裏面はキラキラしてんじゃん」

「もう……! あのトカゲはすぐに人様の物を盗るんだから!」


 キミドリちゃんは文句を言いながら立ち上がり、ドラゴンの巣に向かう。


「あ、ホントにあったし。まったく……」


 キミドリちゃんはゲームソフトを取ると、再び、テレビの前でごそごそしだした。


「何をするの?」

「ゾンビゲームです」

「好きだねー」


 キミドリちゃんはゲームをセットし終えると、先まで座っていた場所に座る。

 そして、目の前にある飲みかけのビールをぐびぐびと飲み始めた。


「昼間からコタツでお酒を飲み、ゲームをする。日本人に生まれてよかったー」


 日本人への熱い風評被害だね。


「借金返せてよかったねー」

「…………ですねー」


 ん?

 歯切れが悪いな。


「暖房とコタツは暑くないですかね?」


 隣にいるサマンサが聞いてくる。


「まあ、ウィズはパソコンの前だからねー」


 猫なんだからコタツで丸くなればいいのに。


「それもそうですねー…………ずっとコタツにいるから汗をかきそうです」


 ほうほう。


「どれどれ」


 私はコタツに手を突っ込む。


「…………やめてください。そこは違いますぅ……」


 サマンサが小声でつぶやく。


「汗をかいてるねー。サマンサは水分を取りすぎだよ」

「だってぇ…………」


 サマンサが甘い声を出す。


「あ、弾がない……」


 キミドリちゃんは私らを完全に無視して、ゲームを続けている。


「あ、はるるん様、おしっこに行きたいです……」

「お姉ちゃん」

「お姉ちゃん、おしっこ行きたい…………」

「じゃあ、お風呂行こっか。汗かいたし、お風呂に入ろう」

「なんでぇ!? お風呂じゃなくて、おトイレ…………」

「我慢しなさい」


 私は嫌がるサマンサの手を引き、お風呂に向かう。


「変態2人と同居は疲れるなー…………」


 後ろからキミドリちゃんの声が聞こえたが、聞こえないことにし、かいた汗を流すためにお風呂へと向かった。



 翌日、昼前に起き、朝食兼昼食を食べている。

 キミドリちゃんはいつもののり弁を食べ、私はカップラーメンだ。

 なお、サマンサとウィズとレッドドラゴンはまだ寝ている。


「ねえ、ハルカさん、昼からダンジョンに行きません?」


 キミドリちゃんがのり弁を食べながら聞いてきた。


「いいけど、また行くの? 先週はずっと行ってたじゃん」


 この1ヶ月は結構、ダンジョンに行って、お金を貯めている。

 理由は冬に外に出たくないから今のうちに行っておこうと思ったからである。

 おかげで私達もBランクになることができた。


「もうちょっとお金を貯めたほうがいいと思うんですよね。それにBランク上位に入って年末のイベントに参加しましょうよ」


 正直、この前、品川のダンジョンに行ったし、もういいかなーっと思ってるんだけどな。

 でも、ウィズは乗り気だし、目指してもいいかもしれない。


「うーん、わかった。じゃあ、2人を起こすよ」

「すみませんねー。ホント…………」


 キミドリちゃんがそっと目を逸らした。


 こいつ、昨日からなんか変だな…………


 私はキミドリちゃんの様子が気になったが、ひとまずはウィズとサマンサを起こし、ご飯を食べさせた。

 そして、準備を行い、北千住のギルドに向けて出発することにした。


 私達は部屋を出ると、エレベーターを使い、地下の駐車場に降りた。


「ささ、今日も私が運転しますので、乗ってください」


 私達はキミドリちゃんに促され、乗ったこともなければ、見たこともないきれいな車に乗り込む。

 そして、無言でシートベルトをかけた。


「この車はなんですか…………?」


 サマンサがボソッとつぶやく。


「新品の匂いがするのう…………」


 ウィズもつぶやく。


「ってかさ、外車じゃん」


 このボケ、本当に車を買いやがった!

 しかも、めっちゃ高そうな外車だ!


「この子は初めてでしたね。かわいい子なんですよー」


 キミドリちゃんはハンドルに頬ずりをした。


 どうりでダンジョンに行きたがるし、挙動が変なわけだわ。


「また借金?」

「ローンです!」


 一緒だわ!!


「ウィズ、シートにおしっこしていいよ」

「だから嫌じゃい! 妾はサマンサと違って、人前で小水せんわ!」

「私も外ではしませんけど! 昨日ははるるん様がしろって言うから!!」


 興奮してたくせに…………


「あのー、お風呂でもやめてもらえませんかね? 私も入るんですよ?」

「どうでもいいけど、これいくらなの?」

「2000万円ちょっとですよ。皆で頑張って返しましょー!!」


 この車バカ、マジで頭が狂ってるわ。


「ハァ…………馬鹿女と変態女と借金女かー。屋敷はいつになったら建てられるのかのう…………」


 おだまり、インターネッコ!!


「もう仕方がないからさっさと返そうね。あ、キミドリちゃんの通帳とカードは没収ね」


 これ以上、車を買われたらたまらんわ。


「えー、ひどいなー」


 ひどいのは絶対にお前だ!

 やはり、この中で私が一番まともだろうな…………

 私がしっかりとこの憐れなヤツらを導いてやらねば!!


 冬は自堕落に生きようと思っていたが、それはバカのせいでできそうにはない。


 私が自堕落な生活を送る日は来るのだろうか…………



「んー? あそこでアンジュさんが歩きタバコしてますよ」

「轢け」


 そして、事故車になれ!


 ~Fin~

これにて完結となります。

これまでブックマークや評価して頂き、ありがとうございました。

執筆中、大変、励みになり、ここまで書くことできました。

拙い文章で誤字脱字等も多くありましたが、これまで支えてくださって、本当に感謝しております。


現在、新作も投稿しておりますので、他作品も含めて読んで頂けると幸いです。(↓にリンク)

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