第084話 大浴場~満喫すれば~いとおかし~心も身体も~デトックスやで~♪
部屋でしばらく休憩していると、5時を過ぎたので、私とキミドリちゃんはお風呂に行くために着替えを用意し始める。
「サマンサは本当に行かないの?」
私は着替えの浴衣を持って立ち上がると、サマンサにも声をかけた。
「ええ。申し訳ございませんが、私はこの部屋についているお風呂をいただきます」
うーん、まあ、強要するものでもないし、仕方がないか……
「じゃあ、行ってくるー」
「行ってきます!」
よっしゃ少女を探すぜ!
「いってらっしゃーい」
「うむ。誰とは言わんが、よその客に迷惑をかけるなよ」
「うん。見るだけにするー」
家族連れぐらいはいるといいなー。
私とキミドリちゃんは2階にある大浴場に向かうと、大浴場の脱衣所に入った。
「…………誰もいなくない?」
「そりゃ、平日の5時ですもん」
マジかい……
私はちょっと落ち込んだが、切り替えて、服をぱっぱと脱ぐと、タオルを持って、大浴場に向かった。
そして、簡単に身体を流すと、露天風呂の方に向かう。
「せーの!」
私は誰もいないので、ジャンプし、湯船に入った。
すると、お湯がばしゃーんと音を出し、大きく波打つ。
「静かに入ってくださいよー」
キミドリちゃんがブツブツと言いながら入ってきた。
「いや、せっかくだし」
「気持ちはわかりますけどね。誰もいないし、貸切ですよ」
これならサマンサも来ればよかったかなー。
「温かいねー」
「ですねー。でも、まだ明るいですね」
最近はだいぶ日が短くなってきたが、まだ5時は明るい。
「あとでまた来ようよ。星空が見えるかも!」
ついでにロリもいるかも!
「1回だけとは決まってませんしねー。部屋にも露天があるし、入りまくりますか」
「だねー。デトックスだよ」
体内の毒を抜こう!
そして、心も洗おう!
「あはは。ハルカさん、消えちゃいますよ!」
「あはは。キミドリちゃんも消滅だよ!」
キミドリちゃんから悪いところを取ったら気遣いができて、掃除が得意なスタイルの良い美人じゃん…………って、すげー!
料理はできないけど、ハイスペックだ!
「キミドリちゃんって、マジで残念な人なんだねー」
「あなたも悪いところを取ったら、かわいい合法ロリになれますよ」
「…………キミドリちゃんさー、何を食べたらそんな体になれんの?」
何気にキミドリちゃんの裸を初めて見たが、本当にきれいだ。
特に足がすごい。
なっげ!
「別に普通の食生活です。小さい方が可愛げがあるし、いいと思いますけどね。っていうか、私、言うほど高くないですよ? 165センチですし」
「145センチしかない私からしたら十分にでかいよ」
サマンサは140センチくらい。
ウィズは30センチくらいかな?
尻尾を入れたらもっとあるかも。
「小さい頃は男子にからかわれて嫌だったなー。でも、剣道では有利だったから良かったってのもありますね」
「ふーん。アンジュもでかいんだよなー。サクラちゃんは普通だけど」
「あー……アンジュさんは私より高いですね。170センチはあると思います。猫背だから小さく見えますけど」
アンジュもせめて小さかったらなー。
あのめんどくささも愛せるんだけど……
「キミドリちゃん、小さくなる予定はない?」
「あったらヤバいでしょ」
まあねー。
「キミドリちゃんが小さかったらちゅーしてあげるのに……」
「性欲オバケですね。そら、アンジュさんも変態種族とか言うわ…………ほら、園児、こっちに来なさい。私が抱きしめてあげますよ」
キミドリちゃんはそう言いながら私の腕を引っ張り、抱きついてくる。
「うわーん。襲われるー」
キミドリちゃんはそのまま私の肩に噛みつくと、吸血を始める。
「おー、温かい! この時期は燗の方がいいですねー」
私を日本酒みたいに言うな!
◆◇◆
私の血を満喫していたキミドリちゃんだったが、他のお客さんが来たので私を解放した。
そして、私達はしばらくお湯に浸かっていたが、6時が近づいてきたのでお風呂をから上がり、着替え、部屋に戻った。
部屋に戻ると、浴衣姿のサマンサがウィズと待っていた。
「ただいまです」
「いいお湯だったよーん」
私達は部屋に戻ると、背もたれにもたれながらだらける。
「ご飯は何です?」
キミドリちゃんが夕食について聞いてきた。
キミドリちゃんは車で悩んでいたので詳細を知らないのだ。
「海の幸とお子様ランチ」
「は?」
キミドリちゃんが変な声をあげる。
「ワガママ王女様は魚が嫌なんだって」
「舌が子供で止まったのかな?」
多分、そう。
お菓子ばっかり食べてるし。
「よく生魚なんて食べますよね。私は無理です。あと、青魚も嫌です」
前半は文化の違いだろう。
後半はガキだろう。
「それでお子様ランチですか……まあ、お子さん連れもいるだろうし、対応はしてくれますかね……」
「ウィズは生魚食べるよね?」
「猫だからか? いや、妾はなんでも食べるし。玉ねぎも食べるぞ」
でしょうねー。
「サマンサさん、生卵を食べられます?」
キミドリちゃんが禁断の質問をする。
「は?」
「美味しいですよ?」
「なんでこの国は何でも生で食べようとするんですか? ちょっと理解できないです」
「うーん、なんだったかな? ビタミンがどうちゃらこうちゃら? まあ、美味しいからいいじゃないですか」
サマンサはものすごく嫌な顔をしている。
「今度、こいつにホヤを食べさせてみようか」
「かわいそうだからくさやにしましょうよー」
私達はニヤニヤと笑う。
「絶対に不味いやつでしょ! ひどい!」
サマンサは私達の表情を見て、察しがついたらしい。
「不味くはないよー。食べたことないけど」
「臭くはないですよー。嗅いだことないですけど」
「キミドリさんはもう答えを言ってるじゃないですか!」
そういえば、私もくさやを食べたことはない。
「…………おぬしらのカレーよりかはマシじゃろ」
ウィズがポツリとつぶやく。
「ウィズ、お魚好きだよね?」
「缶詰も好きですよね?」
お魚×缶詰!
「…………妾をなめるな! そのくらい知っておるわ。動物虐待で訴えるぞ!」
チッ!
さすがにネット界の住人は知っていたか!
「他に何かあったっけ?」
「納豆? 芋虫を食べるところもありませんでしたっけ?」
「それは逆にアトレイアでは普通だね。街ではあんま見かけなかったけど、村に行けば、普通に主食として食べてるよ」
昔、村に立ち寄った時に歓迎されて芋虫のソテーを出された。
嫌がらせかと思ったが、村長さんにそんな意図はなく、栄養が豊富な芋虫は普通のメニューだったようだ。
なお、その後、女不足解消の道具にされかけたので速攻で逃げた。
死ねばいいのにね。
200年近く前の話だからもう死んでるだろうけど……
「うえー……アトレイアに旅行するのはやめときます」
「絶対にやめたほうがいいよ。キミドリちゃんはたくましいから大丈夫かもだけど……」
というか、どうやって行くんだよって話なんだけどね。
「いや、おぬしら、ゲテモノをサマンサに食べさせるのは可哀想じゃろ」
ウィズが呆れて首を横に振る。
「あのー……いい人ぶって、庇っていますけど、私一人に押し付けてますよね? 私、食べませんからね」
お、ホントだ!
ウィズってずるーい。
「ウチの飼い猫にシュールストレミングを嗅がせてみたって、動画でバズりますかね? もしくは、ロリに無理やりゲテモノを食べさせてみた」
キミドリちゃんが名案を思い付いたようにポンと手を叩いた。
「嫌じゃ。今度こそ大炎上して垢BANになるわ……」
「自分でやってくださいよ。ヨゴレのくせに……」
サマンサ……
辛辣だな……
「ヨゴレ…………」
あ、キミドリちゃんがダメージを負った。
やっぱ自覚あるんだ!
――トントン。
キミドリちゃんがへこんでいると、部屋にノックの音が響いた。
「ウィズ、隠れてー」
「ほい」
ウィズが私の影に隠れると、キミドリちゃんが立ちあがる。
「はーい」
「お夕食をお持ちしましたー」
仲居さんはそう言うと、夕食を持って、部屋に入ってくる。
「どうもー」
仲居さんは3人分の食事をテーブルに置くと、最後にお子様ランチを持ってきた。
そして、私とサマンサを見比べる。
「あ、適当に置いといてください」
キミドリちゃんがそう言うと、仲居さんはテーブルにお子様ランチを置き、部屋を退室していった。
「ぷぷ。悩んでましたね」
キミドリちゃんが私を見て笑う。
「サマンサの方が幼いのになー。金髪のせいかな?」
「いや、髪とか関係なく、どっちもどっちですよ」
キミドリちゃんがまたもや笑う。
「ママー」
「それ、ギルドでは絶対に言わないでくださいね」
私だって嫌だわ。
私達は夕食を食べることにし、豪華な食事に舌鼓を打っていった。
私とキミドリちゃんとウィズがお魚を中心としたメニューを食べ、サマンサは旗のついたオムライスを美味しそうに食べている。
「あんた、お米が嫌いって言ってなかった?」
私はオムライスをパクパクと食べているサマンサに聞く。
「これはケチャップライスですし…………甘くない白米が嫌なんです」
「ふーん」
「サマンサさんって、ナポリタンとか好きそうですね」
好きそう。
あれもケチャップだし。
「騙されませんよ。どうせ激マズなんでしょ」
サマンサが人間不信になってるし……