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第081話 さようなら借金……こうして悪は解き放たれた


 私はベッドで寝ころびながらせんべいを食べている。


 前方にあるテレビでは、ゾンビがその辺に溢れているというディストピアな状況だというのに、若い男女がイチャコラチュッチュと子作りに励んでいた。

 そして、私の後ろには、私を後ろから抱きしめ、私の髪をくんくんと嗅いでいるサマンサがいた。


「ウィズー、楽しい?」


 私はテレビの前に座っているウィズに見ている映画の感想を聞いてみる。


「まあ、待て。もうすぐでこやつらもゾンビの餌となる」


 こいつら、主人公とヒロインでしょ。

 そういう映画ではないと思うな。


 私はウィズがゾンビ映画を見たいと言うので、レンタルショップから適当な映画を借りてきた。

 そして、見始めたのだが、そのゾンビ映画も3本目になる。


 別にゾンビ映画は嫌いではないが、さすがに3本連続はきつい。

 最初はキャーキャー言っていたサマンサも完全に飽きており、さっきから私にちょっかいをかけ始めていた。


「…………はるるん様、見てください。すごーくえっちなことしてますね?」


 サマンサが映画の感想を耳元でいやらしく言ってくる。


「そうだね。昨日のサマンサの方がエッチだったけどね」

「…………もう! そういうことを言ったらダメですよー」


 サマンサが耳元でクスクスと笑った。


「おぬしらって、すぐにそっちに繋げるんじゃな……」


 ウィズが映画を見ながらつぶやく。


「いや、さすがに映画も飽きない?」

「というか、微妙じゃなー。やっぱB級はサメの方が良かったかのう?」


 B級の時点で微妙でしょ。

 だからB級なんだし。


「あんた、感動ものとか見ないの?」

「微妙…………銃とか爆弾でドカーンがいいなー」

「じゃあ、一緒に借りてきたベトナム帰りのマッチョが街をボコボコにする映画にしたら? そっちの方が面白いと思うわよ」


 名作だし、戦いが大好きな魔族はそっちの方がいいでしょ。


「そうするか……」


 ウィズは猫のくせに器用にDVDを入れ替え、違う映画に変える。


「…………はるるん様、触ってー……」


 後ろにいる変態は完全にスイッチが入ってるな…………


「触るだけでいいの?」

「…………いじわるー」


 仕方がないので、私はサマンサの頭をポンポンと触った。


「はい。触った」

「…………ひどい」

「触ったじゃん。どこを触ってほしいのよ?」

「えー……恥ずかしいですー」


 サマンサはそう言うが、私の身体をまさぐり始める。


「じゃあ、いいね」

「お…………です」

「聞こえなーい」

「…………いじわるしないでよ、お姉ちゃん」


 …………ふむ、仕方がないなー。


 私はマッチョの叫び声が部屋に響く中、ドMな妹をイジメてあげた。




 ◆◇◆




 時刻も夕方を過ぎ、辺りが暗くなってきた。

 今はもう10月の中盤である。

 日は短くなり、夜は冷える。


 ウィズは尻尾を振りながらマッチョの無双を楽しんでいる。

 私はベッドの上でサマンサと一緒に携帯を見ていた。


「これが温泉だよ」

「へー……公衆浴場ですかー……男女は別ですよね?」


 サマンサがいた国は水が豊富な国なため、お風呂の習慣はあるが、公衆浴場はないらしい。

 そのため、温泉がどういうものかを教えてあげているのだ。


「混浴もあるけど、基本は別だね」

「なるほどー……外で入るみたいですけど、大丈夫です?」

「ちゃんとしてるから大丈夫だって」

「ふーん」

「人に見られるのが恥ずかしいの?」


 変態のくせに。


「そういうわけではないのですが、抵抗はありますね。肌は他人に見せるものじゃありませんし」


 そういえば、アンジュもだが、サマンサは人前では夏だろうが、長そでだし、肌を露出しない格好が多かった。

 王侯貴族はそういう文化なのかもしれない。


「でも、部屋に温泉がついているやつもあるよ、ほら」


 私は携帯を操作し、露天風呂付き客室がある旅館のサイトを見せる。


「すごいですねー。こういうのもあるんですか…………」

「ここなら大丈夫でしょ」

「ですねー」


 うんうん。


「ただいまー!!」


 ふいにリビングの扉が開かれた。

 そこにはドヤ顔でモデル立ちを決めているキミドリちゃんが立っていた。


「お、おかえり」

「うるさいのう……」

「おかえりなさい」


 キミドリちゃんは肩に担いでいた買い物袋をテーブルの上に置くと、ウィズの所に行き、持ち上げる。


「こら、今、良いところなんじゃ! 邪魔するでない! って、ぐえー……!」


 キミドリちゃんは抗議するウィズを無視し、思い切り、抱きしめた。

 そして、すぐにウィズをポイっと放り投げる。


 ウィズは猫らしく、きれいに着地し、尻尾でキミドリちゃんの足をバシッと叩くと、キミドリちゃんを無視し、映画の続きを見始めた。


 キミドリちゃんは今度は私とサマンサがいるベッドに歩いてくる。


「何してんの?」

「ウィズ様が可哀想ですよー」


 私達が苦言を呈するが、キミドリちゃんは笑顔のまま何も答えずに私達を見下ろす。


 そして、私達よりおっきいキミドリちゃんは急にジャンプすると、私達にダイブしてきた。


「ひえー!」

「キャー!」


 キミドリちゃんのボディプレスだー!!


「「ぐえっ!!」」


「おい、ロリ共! なーにを素っ裸でイチャイチャしてんだ!」


 キミドリちゃんは私達の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「重いですー」

「重いからどいてー」


 私達はなされるがまま抗議するが、止まらない。


「おい、ロリ共!」


 キミドリちゃんが私とサマンサの首に腕を回した。


「なーに? うざいと思う人はキミドリちゃんだよ」

「なんですかー? 今、デ〇ノートに名前を書きたい人はキミドリさんです」

「そんなことを聞きたいわけではない!」


 でしょうね。

 ってか、マジでどいてくれないかな?


「今朝出かけた私と今の私は大きく違う。それが何かわかるか?」


 借金を返し終えたんでしょ。

 素直にそう言えよ。


「朝は寝てたから見てないし」

「髪でも切りました? 似合ってますよ」

「ちがーう!! 私は今日から真人間になったのよ!!」


 真人間?

 真人間はロリにボディプレスなんかしねーよ!


「借金を返し終えたの?」

「そうです!! よくわかりましたねー」


 そら、昨日の夜にお金を受け取りに行ってきますって言ってたし、わかるよ……


 キミドリちゃんは魔導書で儲けよう計画が見事にハマり、大金を得たのだ。

 そして、今日、そのお金の受け取りがあった。

 と言っても、大金の大半は借金返済に消えてしまった。

 だが、数ヶ月前に1億もあったキミドリちゃんの借金は無事に返し終えたのだ。


 キミドリちゃんはそれが嬉しいのだろう。

 だから、こうして嬉しいアピールをして、私達にちょっかいをかけているのだ。


「おめでと」

「良かったですねー」

「うっうっう……長い戦いだった。不当に借金漬けにされた私だったけど、愛と友情と努力でこの危機を乗り越えました。映画化決定、カミングスーン!」


 ツッコミどころしかない…………


「ダークヒーローですねー」

「おいこら、ヤンデレの皮を被ったド変態ロリ! 何を言うんだ?」

「あなたが何を言う!? 横領しての借金じゃないですか!」

「サマンサさんは幼いからわからないでしょうが、大人はこういう汚いものなんですよ」


 サマンサも王族だし、十分に汚いよー。


「いいからどいてくださいよー」

「サマンサさんの血を吸っちゃうぞー」

「ひえっ! 離れてー!」


 もう完全に酔っ払いだ。


「キミドリちゃん、嬉しいのはわかったからどいてよ。話はお酒でも飲みながら聞くから」

「それもそうですねー。サマンサさんがガチで嫌がってますし」


 そら、うぜーもん。

 いつもよりも100倍うぜーもん。


 キミドリちゃんは私達の上からどき、テーブルに行くと、買い物袋からご飯とお酒を取り出し、鼻歌を歌いながら並べていく。


「ご機嫌ですねー」

「まあ、1億も返したんだからね」


 私達は落ちている服を着ながらキミドリちゃんを見ている。


「おー、素っ裸なロリ2人が乱れた服を着ている光景は犯罪臭というか、背徳感がヤバいです」


 いい加減、黙んないかな……

 テンションが高すぎるわ……


「あの人、殴っていいですか? リンガイアパンチを食らわしてもいいですか?」


 なんだそのリンガイアパンチって?

 リンガ王家に伝わるいにしえのブローか?

 弱そう……


「やめなよ。捕まって、血を吸われてチョコの味って言われるよ……」


 めんどくさい子だよ、ホント……

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[一言] この人らは個人用のお風呂で何をしでかそうとしてるのか……
[良い点] 良かったねキミドリちゃん、良かった良かったw [気になる点] もう私の携帯だと簡単に『キミドリちゃん』と『き』を入力すると出るようになってしまった…w [一言] キミドリちゃんの……映画化…
[良い点] 枷が外れるとウザさが増すのか・・・。
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